905 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/30(火) 16:11:58.98 ID:ahTdjWSM0
プロ野球千葉ロッテの本拠地QVCマリンフィールドで、こんなイベントがあるそうな

 千葉ロッテは、9月3日の楽天戦の始球式で、プロポーズができる権利を1組のカップルにプレゼントすると発表した。
 当日は男性がマウンドに上がり、ロッテの選手が打席に入る。
 男性が「プロ野球選手からストライクが取れたら結婚してください」と隣にいる女性に宣言し、投球に入るという。
 球界初の試みに、営業担当者は「空は夕暮れで、ロマンチックな時間になるのではないか」と笑顔を浮かべていた。

地元の千葉市にある球場だし、京介がきりりんにプロポーズしたりとかはアリなのだろうか
ってか、ロッテ何やってるんだw

931 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/30(火) 19:49:49.90 ID:VJVTGfdy0 [2/3]
【SS】プロポーズ始球式

9月3日。俺は千葉マリンフィールドのマウンド上に立っていた。

どよめく観客。カメラが隣に立つ桐乃をオーロラビジョンに捉えたらしい。
「う、うわ、あんなにおっきく映っちゃってる……」
桐乃は緊張の為か、プロモデルと思えないほどぎこちない愛想笑いを浮かべている。

と思ったら、俺の元へ走り寄るとユニフォームの裾をきゅっとつまんで俯いてしまった。

「おい、投げるのは俺なんだから、おまえが緊張してどうする。それに、勝手に応募したのはおまえだぞ?」
「スタジアムってこんな凄いと思わなくて……あ、あんたは、何で平気そうなの?」

はっ。事を知ってから、俺がどれだけ死に物狂いで投球練習したと思ってるんだ。
「俺はこれからプロのバッターからストライクを奪わなきゃいけないんだぜ?観客の声なんてそれに比べりゃ屁でもねぇ」

「プロからって……始球式ってのは相手が勝手に振っ――」
ワアアアアアアアアアアア!!!
「始まるみたいだ。桐乃、見ててくれ」

俺は全身の気を奮い起こすような感覚で、精神を研ぎ澄ませる。
いよいよ、一世一代の大勝負だ。絶対に失敗はできない。

『それでは、高坂京介さん、どうぞー!!』

来た!持ちうる全ての声量で、その名を叫ぶ!
「桐乃おおおおおぉぉぉおおおおお!」
「ひゃあっ、きょ、京介?」
「プロ野球選手からストライクが取れたら結婚してください!!!」
「――は、はいっ!します!結婚します!!」
ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

桐乃、打ち合わせの科白と全然違うじゃねーか。緊張しまくって色々飛んでしまってるようだ。
本当は今すぐベンチ裏の静かな場所に連れて行ってやりたいが、俺にはまだ仕事が残ってる。
宣言した以上、絶対ストライク取らないとなぁ!

胸いっぱいに息を吸い込む。大きく天高く振りかぶり、モーションを開始する。
グアッ!
右足が身体を押し出し、左足が地面へ深く突き刺さる。
膝、太もも、腰、背筋、肩、腕、指先へと、自分の体重の何倍にも思える荷重を伝えていく!
ビッ!!

シュォォォオオオオ バシイッ!!!

球はど真ん中、キャッチャーミットへ吸い込まれた。
バッターは微動だにしていない。
や……やった、やったのか!?

「硬球を啼かせるとは、なかなかやるな、京介」

んな!?こ、この声は……!?
バッターの巨きな身体が、のしりとこちらを向く。

「だが、桐乃が結婚は早すぎる!ワシが何としても阻止してやるわ!!」
「親父ぃぃぃぃ!? 何で親父がバッターやってんの!?」
「ええっ!? お、お父さん!?」

親父はその体躯のせいで小さく見えるバットを俺に突きつけ、叫んだ。

「プロといえど、一球勝負ではビギナーズラックがあるやも知れぬ。
 だからワシが代わりだ! ワシはプロではない!1球ストライク取ったくらいで桐乃は嫁にやらんわああああああ!!」
ワアアアアアアアアアアアア!!

「なんっ、だと、お……!?」
さらにヒートアップする観客。電光掲示板にはストライクの黄色電灯が1つ灯った。
「野球ルールで1打席、勝負だ京介!!」

「ンのヤロォ……面白いじゃねぇか」
「ちょ、京介、受ける気なわけ!?」
「大丈夫だ、見ていてくれ、桐乃。土下座で鍛えた俺のバネを見せてやるぜ」

とは言ったが最初の1球だって紛うことなく入魂だったんだ。
遊び球はなし、残り2球でケリをつける。

「いくぜ親父! 娘!さんを! 俺に!くださあああああああああああああいッ!!」
ドゲザアッ!!!!!
「やらんわああああああああああああ!!」
グァラガキイイイン!!

ワアアアアア!!ザワザワザワ
レフトポールすぐ左に突き刺さる大ファールに、観客がどよめく。
だが直後、さらに大きな歓声が上がった。

「ちょ、電光掲示板! 123km/hって、あ、あんた素人じゃなかったっけ?」

桐乃さんよ、兄貴は妹の為ならいつでも火事場力を引き出せるんだぜ。
と格好つけて笑い返したはいいものの、今のは腕が抜けるかと思ったぜ。
それを引っ張ってあわやホームランの大ファールって、親父……。

改めてバッターボックスを見やる。そこには――
鬼がいた。

全身から妖気……と言うと殴られそうなのでオーラ、という名の湯気を出し
筋肉を溢れんばかりに膨張させ、全身がその激しい血流で赤黒く見える。

「京介、おまえを見くびっていた。次は容赦せん」

見た目と裏腹に静かな言葉は、しかし腹の底をゆすられるような低い響きをもって威圧してくる。
俺は今――親父の本気と対峙している――!

「きょ、京介!ヤバイって!コレ殺されるって!!」
「桐乃、大丈夫だ。次の1球で決める」
「やれるものならやってみろ。来い、京介!」

親父がバットを構える。
その姿はまさに無双震撃斬を放つ直前の壬無月斬紅郎。

鬼か。だがな、例え鬼相手でも、俺は負けるわけにはいかねぇ!
振りかぶる。とその時、桐乃の叫びが耳に届いた。

「がんばれ京介……っ! 負けるなぁ――ッ!」

ドクン!心臓が跳ねる。同じく、身体の全ての筋肉が、骨が、まるで新品に生まれ変わったかのように躍動する!

「あたしはファザコンじゃないっ! シスコンでもないっ! ブラコンだからあぁぁ――――ッ!
 勝てえぇぇぇぇぇッ! 京介えぇえぇぇェェエェェェッ!」

全身が火にでもつつまれたかの様に熱い。全身がフルボトムのバネになったかのように力強く、速く、弾ける!

「あたしをお嫁さんにして!!!!!!!!!!」
「おおおぉぉおぉおぉぉおおおおおお!!!!!」

ジズゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!
放たれた呻りは
ブァラゴォォンッ!!!
盛大な音を立てて
キャッチャーミットへ収まった。


か、勝った…………またも親父を倒したぞ……!

ん……あ、あれ、緊張が抜けて……。
というか、桐乃にプロポーズ始球式に当選しちまったって旨を聞いてからずっと張り詰めていたモノが抜けちゃったような……。

ん?……え、待て、俺、あの時からずっとテンパりモードだったのか?
地獄の投球土下座特訓から今の今まで、数日間ずっと本気モード継続し続けてた?
理由は……
桐乃が、プロポーズを受けなきゃならないとか言い出したからで……そんなん俺がやってやると言って……。
え…………俺、何か凄いこといっぱい言ったような……?

「京介ぇ!!!!!」
「ぐは!! ちょ、桐乃、強い、力入れすぎだって!!」
「京介!京介京介京介っ!! あたし、あたし嬉しいよ!!!」

熱暴走から醒めたばかりで色んなことを整理できてない俺。だが桐乃は余裕なんてくれなかった。

「京介!!約束通り、結婚しよ!!!!!!!」
満面の笑みの桐乃が、その潤んだ瞳を閉じ、顔を近づける。
マウンドの上で俺たちは、強く深く、お互いを確かめ合う。

あぁもう、細かいことはなんでもいいや。俺今、最高の気分だ。

千葉マリンフィールド満杯の観客が、一斉に今日一番の歓声を上げる。
\ ウヘェ~~~ッ!!! /

happy end.




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最終更新:2011年09月03日 06:09