波動農法

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波動農法

波動とは、何ですか?

科学を扱う上での「波動」という言葉の本来の意味は、wikipediaの「波動」の項目にも示されていますが、
何らかの物理量の周期的変化が空間方向に伝播する現象
というのが基本です。この定義による波動は、水面波、地震波、音波、電磁波(光波、電波)、重力波、津波等があります。
しかし、波動農法における「波動」とは、波動農法研究会を主宰する有限会社 エムエスケイによれば、
人間が微弱電流を持っているのはご存じですよね。その微弱電流を“波動”とも言い、例えば病気にかかったりするとそれが弱くなります。波動農法で作ったものを食べると、波動の測定値が上がるという検査結果が出ているんですよ。
と説明されています。
また、波動農法により生産されたとして紹介されている商品には、「波動水」を用いて生産しました、と説明しているものがいくつかあります。
この「波動水」とは何か、と思って検索したところ、有限会社実験工房というサイトがヒットしました。そのサイトによる波動の説明は、下記のようなものであり、さらに科学の領域からはかけ離れているようです。
波動
 波動とは、宇宙を統合している物質以前の微弱エネルギーで、サトルエネルギーとも云います。
 両手を肘の位置で曲げて、身体に肘をつけて、手の平を開いて、左右の間隔を10~15cm開くと、身体の中に電気が流れているのがお分かりいただけると思います。
気の回りをよくする
 よく「気の回りをよくする」といわれる、この気も波動です。病気の細胞の部分があると、この気の周りが停滞して、体調が悪くなります。
 人間は栄養を十分に取ると同時に、この気の回りをよくするよう、身体の部分を+エネルギーにしておかないと、健康を保つことができません。
21世紀に脚光
 波動は目でみることができないので、理解しにくい面があります。 しかし、21世紀に入って、いくつかの波動学会も設立され、波動測定器の開発で数値であらわすことができるようになって、最近では人間生活の各部に浸透していく情報部門となってきました。
 量子物理学者の川又審一郎氏がいわれる「宇宙の発生の根源は創造エネルギーであった」といわれる言葉からも、われわれの健康管理の根本的配慮に、この波動を無視できないと考えられます。
即ち、波動農法で言うところの「波動」とは、科学における波動ではない、ということになります。

検証1:波動=微弱電流orエネルギー?

波動農法或いは波動水でいうところの「波動」とは、微弱電流或いは何らかの「エネルギー」であるというのが、かの方々の説明です。
そして、電流或いはエネルギーであれば、何らかの方法によって測定が可能ということになります。
しかし、「波動」を測定することが出来るのは「波動測定器」だけであり、その測定器によって示される値は一般的に「-21」から「+21」までの間しかないようです。
さらに、一般的な波動測定器は人体に接触させて何らかの数値を示すそうですが、有限会社実験工房によれば、波動は「毛髪を郵送してもらえば、その毛髪で測定できるとのことですから、生体電流を測定しているものではないようです。
では、波動測定器とはどのようなものかについては、ニセ科学入門のページ中ほど「5.波動」の項に示されていますが、
 波動測定器の仕組みはほぼ解明されていて、どうやら測定者自身の電気抵抗を測っているらしい。
要するに、嘘発見器である。実際、熟練した測定者でないと正しい数値が出ないと言われており、測定対象の性質を客観的に表わすものでないことは明らかである。
とのことですから、「測定者自身の電気抵抗を測っている」が正しければ、波動測定器によって示される「波動」の数値は意味を持たないということになります。
そもそも、測定すると称しているサンプルからはなんらの影響を受けませんから、生体でなくてもいいのは自明のことでしょう。

検証2:波動農法と「波動水を使った波動農法」

有限会社エムエスケイのサイトでは、エムエスケイの代表取締役畑壽一氏と(おそらくタレントの)三波豊和氏の対談が掲載されています。その冒頭では、
三波豊和:こちらで指導している波動農法とは、どういったものなんですか?
畑壽一:現在多く行われている化成肥料と農薬を使うやり方では、土がカチカチに硬くなってしまいます。私共では土壌菌を含んだ有機物を土に混ぜ込んで土造りをします。土が発酵微生物の働きによって活性化すると、ふかふかの状態になっていきます。そういった土壌で植物を育てる事で根の張りがぐんと良くなり、微量栄養素を充分に吸収出来るようになるんです。
三波:いわゆる有機栽培とは少し違う感じなんですね。

とのやりとりがあります。
この部分だけを切り出せば、技術として特にヘンなところは見受けられません。(三波氏の「有機栽培」に関する知識は怪しいですが…)
しかし、同じページの上部にある「波動農法とは…」のコラム中、『5.医食同源の農法です』の項にある、
使用資材は、ミネラル、微生物、アミノ酸、酵素、カルシウム、ヨモギ、どくだみ、ニンニク等人体に有益なものを使用しています。MRA(核磁気共鳴分析)や、LFTによって数値化してチェックしています。
との説明が謎です。
MRAとは、医療などで使われるMRI(磁気共鳴画像法)と語感が似ていますが、上記で示した「波動測定器」に他なりません。
また、LFTも同様に「波動測定器」の一種です。
数値化されても意味のない波動を「数値によりチェック」とは、何をチェックしていることになるのでしょうか?
一方で、「波動水を用いた波動農法」というのもあるそうですが(例えば「波動水」「波動米」でググるとトップに出てくる道新物産株式会社とか)、仮に波動水が有限会社実験工房で販売されている波動水のようなものだとしても、そもそも「波動水」と「そうでない水」の違いが何かが明らかにされていなかったり(波動測定器の数値の違いしか示されず、物性のデータがない)、実際に生産された農産物がどのような特性があるか不明だったりと、謎の部分が多いです。
ちなみに、有限会社実験工房が販売している「ガン予防波動水」は明らかに薬事法違反だと思いますが。

まとめと余談

エムエスケイがいうところの「波動農法」については、「波動を信じるかどうか」は別にして、少なくとも技術的に不当な内容が含まれない限り、それなりのものが出来るでしょう。
また「波動水を使う波動農法」についても、「(値段が)高い水を使っているな」という印象は受けますが、水自体に何か特別のもの(波動ではなく)が入っていない限り、こちらもそれなりのものが出来ると思います。
しかし、「波動」という概念のとらえ方については明らかに間違っていますから、具体的な効果を期待しないほうが賢明だと思います。
ちなみに、波動の非科学性については、上記の「ニセ科学入門」ほか、「水商売ウォッチング」の「波動」系水商売を斬るでも詳しくコメントされておりますので、参考にしていただきたいと思います。
なお、上記サイトで紹介されているように「水が何かを記憶する」という事実がないことは、素人でも明確にわかるのですが、なぜか「水に『ありがとう』という紙を貼るときれいな結晶が出来る(いわゆる「水伝」)」という話が、下火にならずに未だに盛り上がっているのは気になるところであります。
また、EM農法の説明にも「波動」が使われていますが、元ネタは同じ模様です。
EMフェスタの要旨等から)
最終更新:2010年12月07日 10:59
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