サーバリックスのHPVに対する有効性を考える前に、子宮頸がんの発症とHPVの型に関してみてみましょう。
サーバリックスの添付文書
の2ページ目 右下段に「薬効薬理」が載っています。そこには次のように書かれています。
癌原性HPVは子宮頸癌(扁平上皮細胞癌及び腺癌)の発症に関連しており、HPV-16及びHPV18が最も多い型で、世界的には次いでウイルスの型が近縁のHPV-45及びHPV-31が多い。HPV-16及びHPV-18が子宮頸癌の約70%、HPV-16,18,31及び45を合わせて子宮頸癌の78.5〜80.3%に関連している。
これらは勿論、根拠となる文献・著者などが一緒に記載されています。こうしてみるとサーバリックスが何故HPV-16/18型に特化しているのかが伺えます。
それではサーバリックスのHPV-16/18型に対する有効性を調べて見ます。サーバリックスの添付文書の2ページ目右中段から臨床成績が載っています。そこには『国内臨床試験』では「(6ヶ月定義の)持続感染に対する有効性」は100%、『海外臨床成績』では「組織病変に対する有効性」はCINグレード2以上で98.1%、CINグレード3以上で100%、「持続感染に対する有効性」は6ヶ月定義で94.3%、12ヶ月定義で91.4%。また、HPV-16/18型以外の有効性に関する「癌原性HPVに起因する持続感染及び組織病変に対する有効性」は下記に表として記載します。
HPV16に近縁の型 |
HPV31 |
HPV33 |
HPV35 |
HPV52 |
HPV58 |
92.0% |
51.9% |
83.3% |
14.3% |
64.5% |
HPV18に近縁の型 |
HPV39 |
HPV45 |
HPV59 |
HPV68 |
69.8% |
100% |
74.9% |
54.5% |
その他のHPV型 |
HPV51 |
HPV56 |
HPV66 |
62.9% |
59.9% |
60.0% |
有効性をみてみると、HPV-16/18に関しては90%以上の予防効果があり、その近縁の型に対しても型によって開きはあるが高い有効性が確認できます。
サーバリックスに関して、「100種類以上あるHPVの型に対して2種類にしか効かないのにそれを助成するのはおかしい」という意見を聞いたことがあります。しかし、それは近視眼的な考え方であり客観的事実を見逃しています。
第一に、100種類以上あるHPVのなかで、癌に関与すると確認されている高リスク型は、約18種類程度しかない、という点です。次に、ある病気に対して薬・ワクチンが有効かどうかというのは、その病気の型全般に対応する必要があるものではありません。その病気を特に引き起こす可能性が高い特定の型に対応できているのか、という点が問題になるのです。その点では、子宮頸がんにおいてHPV-16/18/31/45の割合が約80%であり、サーバリックスのそれらの型に対する予防効果が90%以上あるということを考えれば、他の型に対して有効ではないにしてもかなりの確率で子宮頸がんの予防効果があるといえるでしょう。
ワクチンの効果があるという場合、通常の抗体価(抗体の量と考えてほぼ良い)が10倍以上あることを意味します。
上記の論文のDATAを一部引用し、表にまとめました。
HPV16/18 L1 VLP vaccine (商品名サーバリックス)接種後12ヶ月後の抗体価
HPV16 |
HPV18 |
HPV31 |
HPV45 |
HPV52 |
HPV58 |
4028.9 |
3804.6 |
45.9 |
19.8 |
7.3 |
6.1 |
このように、HPV16/18に対しては高い抗体価を示しており、HPV31/45に対しても10倍を超えており、「ワクチンの効果がある」と言えます。
一方、HPV52/58に対しては、10倍を超えていないため効果があるとは言えないが、それぞれ通常の7倍、6倍の抗体価が得られたとは言えます。
しかし、サーバリックスは、HPV16/18の二価ワクチンとして承認されているので、その他のHPVの型に対する効果への認可は当然ありません。
いかなる薬にも副反応がありますが、それが必ずしもマイナスのものだけではなくプラスのものもある、という1つの例と考えて頂いても構いません。
最終更新:2011年02月25日 23:12