サーバリックスは危険なのか? > サーバリックスを接種すると流産する危険があるって聞いたけど?

「流産になるリスクが高くなる」という噂はこの論文が発祥です。
Risk of miscarriage with bivalent vaccine against human papillomavirus (HPV) types 16 and 18
日本語では「ヒトパピローマウイルス(HPV-16/18)に対する2価ワクチンによる流産のリスク」という論文です。

この論文のAbstract(要約)部分の結論には次のように書かれています。

Conclusion There is no evidence overall for an association between HPV vaccination and risk of miscarriage.

日本語訳
結論
全体的にみてHPVワクチン接種と流産のリスクとの間に連想されうるいかなる証拠も存在しない。

しかしながら、これだけではどうなのか?という疑問も残るかと思いますので、論文の内容をもう少し詳しく紹介します。
この論文では、15歳~25歳の女性、26130人が対象とされ、HPVワクチン接種群と比較群(正確にはA型肝炎ワクチン接種群)とを比較しました。この実験の参加者26130人のうち、妊娠した3599人を対象にデータをまとめました。その結果は以下の通りです。


 出産状態       HPVワクチン摂取群   比較群 
無事出産したもの   1401(78.4)  1449(79.9)
中絶したもの      127( 7.1)  128( 7.1)
死産であったもの     15( 0.8)   13( 0.7)
流産したもの      197(11.0)  176( 9.7)

このデータを見て、流産が多いのか少ないのか?という判断はどうすればよいのでしょうか。

流産 - Wikipedia には、次のように書かれています。
全妊娠の8 - 15%に生じる。

他にも「流産」「確率」で検索してみると、一般的な流産確率を調べることができます。
この論文で示された流産の確率が高いのか低いのか、ご自身で判断なさって下さい。

次に、この論文ではワクチン接種時期と流産の割合との関係も調査しています。(流産数は累計)

  接種時期       HPVワクチン摂取群   比較群 
妊娠前1ヶ月以内計      8(10.3)    7( 9.9)
妊娠前2ヶ月以内累計    32(14.3)   18( 9.3)
妊娠前3ヶ月以内累計    50(14.7)   28( 9.3)

  接種時期       HPVワクチン摂取群   比較群 
妊娠直後1ヶ月以内     24(16.6)   11( 8.9)
妊娠後1~2ヶ月      18(15.4)   10( 9.4)
妊娠後2~3ヶ月      16(13.9)   13(10.9)
妊娠後3ヶ月以降     130(11.3)  147(11.0)
妊娠後6ヶ月以降      95(10.8)   95(10.5)


そしてその比較結果は次のようにまとめられています。

Results The estimated rate of miscarriage was 11.5% in pregnancies in women in the HPV arm and 10.2% in the control arm. The one sided P value for the primary analysis was 0.16; thus, overall, there was no significant increase in miscarriage among women assigned to the HPV vaccine arm. In secondary descriptive analyses, miscarriage rates were 14.7% in the HPV vaccine arm and 9.1% in the control arm in pregnancies that began within three months after nearest vaccination.

日本語訳
結果
流産の推測値は、HPVワクチン接種群の妊娠女性では11.5%であり比較群では10.2%であった。一次的解析に対する一方のP値は0.16だった。従って、全体的にみて、HPVワクチン接種群の女性の中に流産の有意な増加はみられなかった。二次的な叙述的分析では、最も近いワクチン接種後3ヶ月以内に始まった妊娠においての流産の確率は、HPVワクチン接種群で14.7%、比較群では9.1%であった。


これらのデータ・結論から判断すると、妊娠前後3ヶ月においては、流産のリスクが比較群より高いと考えられます。
よって、妊娠を計画されている方がワクチン接種を希望する場合、3ヶ月以上前に接種を終えておく方が望ましいと言えます。
また、妊娠中の方は、出産を終え、授乳期間終了後までワクチンの接種を延期されることが望ましいと言えます。
原則、担当の産科婦人科医の先生とよくご相談下さい。

なお日本国内では、そもそも妊娠中の投薬は、利益が副作用を上回る場合のみ投与されるため、ワクチン接種は行わないのが通例です。

タグ:

流産 妊娠
最終更新:2011年02月28日 03:03
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。