428 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/08(土) 03:42:06 ID:sK29zHYO0
桐乃が少しだけ膨らんだお腹をさすっている。
まるで、まだ見ぬ子を慈しむ母親のような顔で。
そのままこちらに流し目を送り、からかうような、それでいて優しげな声音で囁く。

「ね、名前なににしよっか?」

俺はごくりと唾を飲み込む。

「いや、お前、言ってる意味が……」
「あたしたちの子なんだから……ちゃんと話し合って決めたいじゃん?」

恥じらうように目を伏せる桐乃。

「二人の愛の結晶だもん。あたし頑張って元気な赤ちゃん産むから――」
「桐乃……」

俺はそんな桐乃に近付き、そのお腹へ手をやり――


桐乃がお腹に仕込んでいたクッションを引っ張り出した。


「あっ! ちょっと何すんのよ!」
「アホか! 冗談にしてもタチ悪いぞ!」

クッションを取り出した桐乃のお腹はキュッと引き締まっている。
当然妊娠なんぞしているわけもない。

「ふん、なによ心当たりあるくせに」
「あ、あのな。お前とその……ヤったのは、つい先月だろうが! 一ヶ月でそんなお腹にならねーよ!」
「でも出来てるかもしんないでしょ?」
「お前ちゃんと生理来たって言ってたろ!」

ったく。ありえないと分かっていても、一瞬ドキッとしちまったじゃねーかよ。

「とにかく、こういう冗談はだな……ん? どうした?」

見ると桐乃は目をそらしている。心なしか顔が引きつっているようにも見える。
一体なんだ? そう思った矢先――


「――京介、桐乃。お前たちに話がある」


後ろから、出掛けていたはずの親父の巌のような声が響いた。


……明日も生きられますように。


End



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最終更新:2011年01月09日 21:00