872 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/09(日) 21:57:34 ID:bUKL1RGe0 [5/8]
「桐乃ちゃん、最近どう?」
幼馴染は、自分を散々コケにした、いわゆる敵のような存在の安否を俺に問うた。
「お前、あんだけ言われてまだあいつのことを気にする余裕なんてあるのか」
「それとこれとは話が別だよぉ」
まったく、こいつは本当に根っからのお人よしなんだな。
「まずまずだ」
俺はそう応える。それしか応えようが無い。

「嘘ね」
何の抑揚も無い声が俺たちの右方向から聞こえてきた。
「うおぅ!お前、いたんならいたって返事しやがれ!」
「そんな面倒なことわざわざする必要は無いわ」

俺たちのやりとりを見ていた麻奈実は2つの質問の間で悩んでいたが、
最優先すべき質問を黒猫に訊いた。
「嘘って・・・?」

静かに、激しく黒猫は応えた。
「・・・先輩がいない時間帯に私達三人が集合すると決まって先輩の悪口を言ってるわ」
「うおぅ、ひでぇ!」
「きょうちゃん、悪口言われるようなことしてるからだよー」
「ベルフェ・・・田村先輩の悪口も耳が痛くなるほど聞いたわ」

「ずーん、ショック~・・・」
他人が感じる効果音をわざわざ口に出しながら落ち込んでいる幼馴染を尻目に、
さらに俺は黒猫に訊ねた。
「まあ悪口ぐらいは俺でも予想はつく。他に何かないか?」
黒猫は少し言い渋るそぶりをしながら
「・・・・・・ほんのささいなことなんだけど」
「・・・何だ?怒らないから言ってみろ」
俺は常套句を使い、黒猫の発言を促した。
「・・・・・・怒るでしょ」
「どこの親だ俺は!」
弱気になったあいつに面くらいつつも俺は的確な突っ込みを入れる。

「・・・・・・時計を気にしてるみたい。私が気づいた場面だけでも相当のものよ」
なるほど、あいつはお前らといる時間がもったいないと薄々感じてるのか。
「お前らといる時間が長く続けばいい、とか思ってるんじゃねーの?あいつも素直になりゃいいのによ」
今ここにいないあいつに少しばかりの復讐を試みる。

「・・・さすがね、あなたも」
ああ、俺の頭脳にかかれば、話題のオリエント急行殺人事件の犯人も一発だぜ!
「あー、それって乗客全員が犯人ってあれ?」
今までおとなしかった幼馴染がいきなり核爆弾を落としやがった。
「お前ッ!謎解き小説のタブーを堂々と実践しやがって!」
「ふぇぇー、ごめんきょうちゃんー」
幼馴染は眉毛をハの字にしてなみだ目で俺に何度も謝った。


「・・・・・・あなたもあの女も・・・・・・相当ニブいわ」
黒猫がそう呟いたが、俺の耳はその呟きを取り入れることをしなかった。



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最終更新:2011年01月10日 21:06