664 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/14(金) 05:10:07 ID:Ht7aUzzj0 [2/3]
俺妹8巻妄想ネタ
※注意このSSには、京介フィルターと、胃がきりりんが含まれています。
4章仕立てのうち、3章まではフィルター全開。胃がきりりんも殆ど最後まで続きます。
用法・用量を正しく守ってご覧ください。
なお、作者は桐乃スキーのため、桐乃ファン以外の方には、胃がきりりんの効果が逆転する可能性もあります。くれぐれもご注意ください。




1章

俺に恋人が出来て三日たった―――。

俺の恋人の名は、五更瑠璃―――通称・黒猫―――。
黒髪ロングで色白、和美人という言葉の似合う、可愛い俺の後輩だ。
妹のオフ会で会って、妹と友達になって、妹の付き添いで何度も会って、一週間前に告白されて―――。
そして、それに答えたのが三日前。

そんな可愛い後輩に、何故こんなにも返事が遅れたかといえば・・・
実は、何故かは判らないが、どうしても、答える事ができなかったというわけだ。
それじゃ何で付き合うことになったかって?
さっきから、何度か話に出てきたと思うが、俺には妹がいる。
黒猫と違って、生意気で、暴力的。顔立ちや体つきは良いが、見た目も今時の―――茶髪にピアス、服やアクセもばっちり決めた―――
全く可愛くない、俺の妹が。

この妹―――桐乃が、突然問い詰めてきた。
「あんた、あの黒いのに告白されたって本当?」
「あ、ああ・・・」
何でそんな事知ってる。俺は釈然としないものを感じつつも肯定した。
「それで・・・付き合うことになったの・・・?」
「いや・・・まだ・・・悩んでるんだ。」
「どうしてよ?あの黒いのはあんたの事好きだし、あ、あんたも・・・好き・・・なんでしょ?」
「たぶん・・・そう、思う。」
「はっきりしなさいよっ!・・・もう、いい。あたしが伝える。あんたが・・・付き合うことに決めたって。」
そう言うと、桐乃は俺の前で電話をかけ始めた。
「ま、待て・・・」
「何よ?あれからもう四日でしょ?そんなに待たせておく方が・・・
ってアンタ?兄貴がアンタと付き合いたいって言うけど、恥ずかしがってるから、あたしから電話したわ。」
「き、桐乃っ!」
「そう、それじゃ代わるわね。おしあわせにっ!・・・はい、兄貴・・・」
そう言って、携帯を押し付けてくる。
「・・・そ、その・・・黒猫・・・か?」
「え、ええ・・・あ、あのっ。私っ・・・」
「その、なんて言ったら良いのか・・・実はまだ悩んでて・・・」
「・・・・・・」
「何言ってんのあんた!?さっさとつきあえば!いいじゃないっ!」
「・・・・・・先輩?」
「あ、ああ、すまん、もうちょっと・・・時間を・・・」
「・・・先輩。それなら、お試し・・・」
「えっ?」
「その、お試しで・・・私と付き合ってもらえませんか・・・?」
「お試しって、そんな。」
「この前・・・先輩が・・・妹さんと・・・デートしていた感じで・・・」
「あ・・・ああ。わかった・・・。」
必死で、泣きそうな黒猫の声に、俺は、とてもこの提案を拒否することは出来なかった。
そして、なぜだか桐乃との『デート』を否定する気にはならなかった。もっとも、黒猫だってわかってるだろう。どうせ何か裏があるって。
その後も話が続き、電話が終わったのは一時間後だった。―――桐乃はもう、いなかった。

こんな事があったのが、もう三日前。
その後、学校では部活でしか会う機会がなく―――明日は、『恋人』になって、初めてのデートになる。
デートプランも完全に準備して、後は明日を待つだけだ。桐乃は・・・家で大人しくしてるだろう。
「あんた、明日はドコいくつもりよ。」
「な、なんでおまえに言わないといけないんだ?」
「どうせあんたの計画じゃ、また酷いトコ行くつもりなんでしょ?あたしが多少はマシにしてあげるから、話して。」
クッ・・・相変わらず、可愛くねー。だが確かに、同じくらいの年だし、参考になるだろう。
「ま、まず、成田山新勝寺―――」
「ださっ!!!・・・あんた、本気の本気で考えてソレ!?」
「だ、だってよ?『るるぶ.com』でも一番人気の名所って―――」
「あんたバカ!?そりゃあ、連れてくのが地味子みたいなヤツならともかくさ?普通の女子高生連れてくのに寺とか、おかしいとか思わない?普通。」
「とりあえず、地味子って言うな。それと、それならどこが良いっていうんだよ。」
「はあ?多少は自分で考えたら!?」
マジ可愛くねー。なんでそんなに必死なわけ?
「・・・あんた、あの黒いのの性格や趣味くらい知ってるでしょ?だったら自然に考えられないっ!?」
まあ、確かにそうだ。おまえの性格や趣味に比べれば、だいぶ把握しやすいしな。
大人しく、人見知りも強い黒猫の事だ、桐乃と違って渋谷とか原宿なんてのは合わないだろう。
それに、所謂『普通』というものも、そんなに好きではない、まあ、これは桐乃も同じだが。ならば、『るるぶ』に載っているような所も合わないだろう。
それなら―――
「ありがとな、桐乃。なんとか、考えていけそうだ。・・・桐乃・・・?」
「・・・えっ、何?」
「いや、なんとかなりそうだ。ありがとうな。」
「うん・・・」
どうしてだろう、ずっと昔にもこんな事があったような―――
ピンポーン
「ん、ちょっと出てくるな。」

「桐乃ー。おまえあての荷物だったぞ。」
「えっ?やっときたーーー!?」
さっきまでの表情が嘘のように、桐乃はダンボール箱を開け始める。それが来なくて寂しかったのか・・・?
「桐乃。念のために聞いておくが、そのダンボールの中身はなんだ・・・?」
「エロゲ〜♪」
やっぱりか・・・心配して損しちまったぜ。だいたい、こいつにとっての重要度は『俺<<<(超えられない壁)<<<エロゲー』だろうしなっ!
どうせ、さっきの不安そうな顔だって、親が出かけてる間に届くかな、と心配してたに違いないさ。
「それにしたって・・・この量は半端ないな?」
「うんっ♪新作・旧作合わせて24本っ!・・・そうだ、あんた、さっき相談に乗ってあげたでしょ?これ全部、あたしの部屋に運んで。」
「相談したんじゃなく、おまえに無理やり―――」
「何か言った?」
「失礼しましたっ」
まあ確かに、桐乃のおかげで黒猫に楽しんでもらえるプランも用意出来そうだしな。

ダンボールを運び終わった所で、ふと気の迷いから、こう、問いかけてた。
「おまえ、相変わらず、妹モノのエロゲーやってんの?」
「う・・・うん。」
おい、急にどうしたんだよ・・・
「ど、どういったタイトルのエロゲーなんだ・・・?」
「ん・・・『うちの妹のばあい(通常版)』とか、『家族奴隷化計画』とか、『君が望む永遠』とか、『DUEL SAVIOR』とか―――」
「ちょ・・・!?それってNTRとか、陵辱とか、鬱ゲーとか、挙句の果てにキモウトゲーとかじゃありませんでしたっけ!?」
「ふ〜ん。そんな事まで知ってるなんて、あんた本当にエロゲーマーの鏡ね。」
どっちがだよっ!―――俺は賢明にも、その言葉を飲み込んだ。
「もう用は済んだから、さっさと出て行ってくんない?」

―――結局、さっきのは、あまりにアレなゲームで恥ずかしかったから、涙目になっていただけなんだろうな。




2章

翌日―――
俺と黒猫・・・いや、瑠璃は秋葉原に来ていた。
「それにても、その妹さんとの会話で秋葉原になんて、一体どういうセンスをしているのかしら?」
「だ、だってなぁ、お、おまっ・・・る、瑠璃の趣味って言ったら、マスケラとか、その道のものだろ?最初に桐乃と会ったのも、アキバだったよね?」
「私のような闇の眷属の者だって、時には・・・普通の女の子のように過ごしたい時もあるわ・・・。」
「す、すまん・・・。そういや確かに、桐乃も『普通の女子高生』の行きたがる場所を、みたいなこと言ってたな・・・」
「まあ、いいわ。先輩がちゃんと考えてくれた事は嬉しいから・・・。それと―――」
「な、何かな?」
「慣れないんでしょう?『おまえ』のままでいいわ。」
「す、すまない。」
「先輩、さっきから謝ってばかりね。それに・・・いえ、なんでもないわ。」
ん?・・・何かミスったか・・・?
「まあ、来てしまったものは仕方ないわね。虎Bにでもいきましょう?」
「ああ。それと・・・『瑠璃』」
「何かしら?」
「そ、そのっ、手をっ、握ってもっ。」
「〜〜〜っ」
顔を真っ赤にしながらも、黒猫は、俺の手を恐る恐るつかんでくる。
「そっ、それじゃあ、いくぞ?」
「はっ・・・はい。」
すぐそばで俺たちのやりとりを聞いているやつがいたら、思わず赤面間違いなしの会話だった。
できたてカップルの初々しい姿にしか見えないはずだ。

そしてそこに沙織が通りかかった。

いかにもなオタクファッションにぐるぐる眼鏡をかけて、虎の穴B館から現れたのは、槇島沙織。
俺と桐乃それに黒猫の、共通の友人だ。沙織は俺たちのわきを何事もなく通り過ぎ―――前にも同じような―――
「おおっ!これは京介氏!黒猫氏!」
がばあっと振り返った。
「なっ!?」「!!」
俺たち二人は仰天して飛び上がった。沙織だけが余裕の態度を崩さない。
「今日はどうなされましたかな?おふた方。まるで―――そう、デートでござるなっ!」
「デ、デデ、デ、デートですって!?」
「お、落ち着け、黒猫。」
「おや、違っていたのですかな?なにしろ、手をつないでまるで出来たてホヤホヤのカップ―――ー」
「き、今日は、特別っ!特別なのよっ!・・・そう、わ、私の新作小説に、デ、デートシーンが出てくるのよっ!そのっ、取材っ・・・!」
黒猫の仕草があまりにも初々しく、ついにやにやとしてしまう。
「ふむ。まあ、黒猫氏がそうおっしゃるのなら、そうなのでしょうな。」
「沙織。あんまりいじめないでくれよ。」
「京介氏にそう言われては仕方が無いでござるな。それでは拙者、これから後10件はショップを回らねばならぬゆえ、これにてっ。ニンッ!」

「・・・死ぬかと・・・思ったわ。」
俺たちは買い物もそこそこに、アキバの道を歩いていた。
「まさか、ここで沙織に会うなんてな・・・」
「うかつだったわ。ここは、あの女のホームグラウンドみたいなものじゃない・・・。」
「確かに、そうだったな。」
「それで、次は・・・どこに行くのかしら?」
「映画館とか、行ってみるか?」
「そうね。少し、休憩したかったからちょうどよかったわ。見たい映画はあるのかしら?」
「そうだな。アニメ映画も良いだろうけど、今日はちょっと移動して、普通の恋愛映画でも見にいかないか?」
「え、ええ・・・意外ね。先輩の事だから、すぐにアニメにするかと思ったのだけど。」
「ああ、一瞬そう思ったんだが、ちょっと思い出してな。・・・せっかくのデートなのにもったいないだろ?」
「・・・そう・・・ね。」
うん・・・?またこの感じ。どうしたっていうんだ?
「それじゃあ、上野まで移動するか。」
「え、ええ。」

映画を見終わった俺たちは、帰りの電車の中にいた。
「それにしても、さっきの映画。感動的だったよな?」
「そうね・・・」
「ラストシーンの『倫理?道徳?法律?そんなものはクソくらえだっ!俺はお前を愛してるっ!』ってセリフなんて、マジ魂入っててすげーとか思ったよ。」
「まあ・・・よかったわ。」
さっきから。いや、映画館に行く辺りから、どうも黒猫の様子がおかしい。
「気分が悪いのか?」と聞いても、「大丈夫。」と答えるし、「つまらないか?」と聞いても、慌てて「そんな事無いわ、私は楽しんでいるわ」とすぐに否定する。
いや、むしろ、心ここにあらず・・・といった有様だ。
「黒猫・・・最後に、帰る前にちょっとお茶して帰らないか?勿論、俺のおごりだ。」
「えっ?そんな・・・いいのかしら?」
ようやく、ちょっとは魂が戻ってきてくれたか。
「ああ、駅のすぐ近くにおいしいケーキショップがあるんだ。―――と、ちょうど駅に着いたな。行こうか?」
「ええ、ご馳走になるわ。」

俺たちが入ったのは、この前桐乃と入ったケーキショップだった。
この前と同じく女の子向けの可愛らしい雰囲気で、とても一人では入れそうに無い。
俺たちは店員さんに誘導してもらい、窓際の席に向かい合って座る。
「わりと良い雰囲気のお店ね。先輩にしてはなかなかのものね。」
「そ、そうか、なんか照れるな・・・。」
桐乃のお勧めだけあって、黒猫にも好評なようだ。
「さて―――なに頼む?」
黒猫にも見えるように、テーブルの上でメニューを開くと―――
「せ、先輩っ!こ、こっ、まさか、これを頼むつもりじゃないわね?」
すっかり忘れてたぜ。ここはこういった・・・カップル御用達のお店だったな。
「い、いやっ、さすがにこれは・・・恥ずかしいだろ・・・?」
「そ、そうですわよね。」
黒猫・・・言葉がおかしくなってるぞ?そう思ったその時―――

「あれっ?お兄さんじゃないですか?」

こっ、この声は・・・
「どうしたんですかー?こんな所に珍しいですね。」
振り向くと・・・マイエンジェル、あやせたんがいた。
「や、やあ、あやせ・・・」
「お兄さんと・・・こちらの方は?」
「黒猫よ・・・。」
「黒・・・猫・・・?」
「あー、あれだ、あだ名だ。本名は五更瑠璃。今は、その・・・デート中なんだ。」
だからとりあえず、この場を去ってくれ、あやせたん。この前の加奈子&ブリジットの二の舞は避けたい。
「デート・・・?お兄・・・さん・・・?先月は確か・・・桐乃と・・・デートしてましたよね!?」
あやせの目から光彩が消えうせる。・・・やっべー・・・俺、今日最大のミスをやった?
「デートって嘘、嘘ですよね?本当ですか?もしそうなら二股ですよねっ!!!」
「ちょ、ま、あやせさん、おちつ―――」
「これが落ち着いていられるわけないじゃないですかっ!!」
「黙りなさい・・・クソビッチ」
「クソ?・・・ビッチ?・・・」
黒猫さん、火に油を注がないでください。
「ま、まず、あやせっ、お前は大きな誤解をしているっ!」
「とりあえず、聞きましょう。」
怒りの矛先がそれたのか・・・。な、なんとか助かった・・・。
「先月、桐乃と出歩いていた件は、デートじゃ・・・ない。」
「どういう・・・ことですか・・・?」
「あれは、事務所の社長を騙すための芝居・・・デートの・・・ふりだ。」
なぜかわからないが、不快な気分だ。
「う、嘘です。だって、私、聞きましたもん、桐乃から、デートに行ったって。」
あ、あいつ、余計な事言いやがって!?
「ホントは・・・どういうことなんですか・・・?」
桐乃、すまん、俺はここまでかもしれない・・・
「先輩は大嘘つきね。」
「えっ?」「!?」
「先輩は、私を傷つけないように『デート』と嘘をついたのでしょう?ええ、私と先輩はデートなんてしてないわ。
 私の・・・小説のための取材に付き合ってるだけよ。」
「そ、そうだったんですか?お兄さん?」
「あ、ああ。そうだ。勘違いさせて・・・すまなかった。」
こう言うしか・・・なかったよな・・・。俺は、二人の目を見て言う事が出来なかった。
「そっか、それじゃあ、まあ、良いです。でも、桐乃を傷つけるような事したら、本当に殺しますからね♪」
「そ、それじゃあな。」

あやせが去った後、俺は先ず、黒猫に謝った。
「本当に、ゴメン・・・あんな事を言ってしまって。」
「まったく、先輩は本当にヘタレね。それだから、あんな女を付け上がらせるのよ。」
「すまない・・・。」
「あんまり謝らないで。そもそも、この選択は私がしたのよ?先輩に謝られると、落ち着かないわ。とりあえず、先輩。お茶にしましょう。」
「ああ、ありがとう。」




3章

俺たちは、ケーキショップを後にし、商店街を歩いていた。
「もう、結構良い時間になってきたな。」
「そうね。いろいろあったけど、人間にしては、よく私を満足させたわ。」
これは・・・喜んでくれたんだろう。
「後、一ヶ所くらいどこかによっていかないか?場所は―――おまかせする。」
「そうね・・・わ、私も・・・その・・・プリクラが、欲しいわ・・・」
「そっか。それじゃあいくか?」

ゲーセンに到着。プリクラコーナーのある、二階に向かう。
俺たちはプリクラの機械(重要な事だから言っておく、カップル専用のやつだ)に入り―――
2回目ともなると、勝手がわかってくる。まず、お金をいれて。
「フレームはどうする?」
「そっ、そのっ・・・ハートっ・・・」
まあ、桐乃と、ハートフレームで撮ったくらいだしな・・・
俺たちは名前をペンで書き―――
「そ、それじゃあ、撮るぞ?」
「え、ええ、いいわ」
ぱしゃっ。
「・・・な、なんか恥ずかしいな・・・?」
「・・・ええ、でも・・・やっぱり・・・」
なにか問題があったのか?
「もう一度、撮りなおすか?」
「いえ、いいわ。たぶん、何度撮っても、思い通りにはならないから。」
「そうか・・・?」
なんとなく、煮え切らない態度の黒猫に、俺はどうしていいかわからず―――
「そ、それじゃあ、出るか」
「ええ。」

そこで桐乃と遭遇した。

「・・・・・・え。」
シスカリをプレイしようとしてたのか、手に持っていた硬貨が床に落ち、明るかった顔がみるみる歪んでいき―――
桐乃の瞳から・・・涙があふれ出した・・・
「ごめんなさいっ!」
「なっ・・・桐乃っ、待てっ!」
俺の制止も聞かず、桐乃は駆け出していく。
「すまない、黒猫」
「・・・えっ?」
「また後で、連絡するっ」


途中の事は、殆ど覚えていない。
俺は、全く追いつかない桐乃の背中を追い続け・・・どうやら家に帰り着いていたようだ。
「桐乃っ!桐乃っ!部屋にいるんだろう・・・開けて・・・くれよ・・・。」
「・・・」
「話を、したいんだ・・・。開けてくれよ・・・」
「・・・」
部屋の中では、桐乃の嗚咽が低く響いている。
ちゃんと気づいてやるべきだった、以前の彼氏騒動で、俺が遮ってしまった。いや、遮った、桐乃の言葉。
『あんた・・・・・・が・・・・・・っ(・・・好きなのっ・・・)』
それなのに、俺は、『兄』としてしか接してやれず、桐乃も、『妹』として―――『兄』に『彼女』が出来る事を望む『妹』として、振舞おうとした・・・
でも、出来る事じゃなかったんだな。もう、我慢の限界だったんだな・・・。

ごめん・・・ごめんな・・・。

俺は、どう考えてるんだろう・・・
桐乃はよく出来た妹だ。そして、確かに俺はシスコンだろう。
でも、それだけじゃない。
勉強も、運動も、万能だ。顔だって、体つきだって、匂いだって完璧に俺の好みだ。
一見生意気な性格だって、多くのことを好きになり、その全部に必死に正面から向かい合う過程で生まれたものだ。
何事にも一生懸命で、自分に妥協を許す事もなくて、それでいて、友達思いで、そのくせ、引っ込み思案な所や恥ずかしがりやな所もあって・・・
そんなの『妹』じゃねえ・・・妹のわけがない・・・ただの、一人の女の子なんだ・・・

そもそも俺は―――
さっき、黒猫を省みなかった・・・黒猫にも、本当に酷い事をしたな・・・
いや、本当は、この『デート』の前も途中も、ずっと桐乃の事ばかり考えていた。
そうだ、今まで考えてきた理由なんてどうでもいい。
だって、桐乃の事が・・・

「桐乃・・・開けてくれ・・・。おまえが・・・おまえのことが・・・好きなんだ・・・。」

いつのまにか、俺の目からも涙が零れ落ち・・・親父達が帰ってくるまで、止まることがなかった。




4章

あれから二日。桐乃は部屋に閉じこもり、未だに出てきてくれない。
親父とお袋が説得しても出てこないのだから、相当なものだ。
俺自身も、どうすれば良いか、わからないところがある。
桐乃に改めて、好きな事を伝えて、黒猫には・・・その、ことわって・・・。
でも、それで、それだけで済むとも思わない。
そう、悶々と、しているところに―――
ピピピッ
おっ、驚かせるな、電話か・・・沙織?
「もしもし、俺だ、京介だ。」
「京介氏、二日ぶりでござるな。」
「あ、ああ、それで、用件は・・・?」
「京介氏ー。拙者のようなかわいい女の子からの電話は、もうちょっと楽しそうに応対せねばなりませぬぞ?」
「ああ、すまない。おとといから色々あって・・・」
「うむ、黒猫氏から事の顛末はだいたい聞いております。」
「そ、そうだったのか・・・」
「それで、きりりん氏は、今どうしておられますか?」
「部屋に閉じこもってしまって・・・何度声を掛けても、出てきてくれないんだ・・・」
「ふむ、それなら、簡単でござるよ!」


「で・・・なぜ、俺の家に・・・?」
「そりゃあもう、これはサークルの危機ですからな。前も言いましたでござろう?
 問題がこじれて解散になったら、京介氏をサークルクラッシャーと呼ばせていただくと!」
「そ、そうだったな・・・。結局、あまりうまくできず・・・。」
「なんのっ!黒猫殿の話を聞くに、京介氏は最良の選択をされたかと思いますぞ?
 どこぞのアニメのように『俺の翼だ』などと言わず、ちゃんと選択したのではないですか。
 後は、他人の力を借りても良いと思われますぞ。」
「む・・・色々、突っ込みたい所はあるが・・・」
「いやん。京介氏のエッチ・・・」
ガタッ・・・
「それは突っ込み違うからっ!・・・それと・・・黒猫・・・。」
「勘違いしないで。私も言いたい事はあるけど、それは、貴方のお姫様をひっぱりだしてからにするわ。」
「すまない・・・」

「さあ、そんなにしんみりせずっ!楽しくやりましょうぞっ!」
「な、何を言い出すの?この女は?」
「では、さっそく、黒猫氏に質問っ!京介氏を好きになった理由はっ!?」
ガタッ!―――うん?どこかで音が・・・?つか、沙織、声でかすぎねーか・・・?
「い、いきなり、核心に迫るような事を聞くのね。まあ、いいわ。」
い、いいのか?
「まず、優しい所ね。そして、一生懸命、助けてくれて。あ、あと、見た目も気に入ってるのよ?漆黒コスがあんなに似合う人、はじめて見たわ。」
ガタッガタッ―――どこかで工事でもしてるのか・・・?つか、そんなに、俺、そんなに良いヤツだっけ?
「でも・・・殆ど私の勘違いだってことが、先日の件でわかったわ。しかも、変態で、シスコン、エロゲーマーの鏡、カ○ビアンコム。さらに身勝手ということもね。」
一旦持ち上げて地の底まで落とすとか・・・どんだけ?
「なにしろ、私とデートしているときですら、他の女のことばかり考えていたわよね?」
ガタッ―――や、やっぱバレてたのか・・・そりゃ不機嫌になるよな・・・
「京介氏ー。それはいくらなんでも酷すぎでは?」
「お・・・おまえら・・・俺の心は張り裂けそうだよ・・・?」
「あら?マゾなのかしら?」
「ちげーよ!?痛めつけられすぎて死にそうなんだよ!?」
「まあまあ、では、次は京介氏が答える番ですぞ?」
「ああ・・・」
「それでは、私から。あなた。あんなクソビッチのどこに惚れたのかしら?」
ガチャッ!
「だ、誰がクソビッチなのよっ!」
「おお・・・」「あら・・・」

天の岩戸が開け放たれ・・・そこには、俺の・・・愛しい人がいた。

「桐乃・・・」
「な、何よ・・・」
「今の問いに答えるぞ。
 俺は、何事にも一生懸命だったり、絶対あきらめない頑固なとこだったり、友達思いだったり、
 生意気で、でも恥ずかしがりやで、俺に、楽しい事をたくさんくれたお前のことが大好きだっ!」
「なっ・・・!」
「でもな、そんな理由は本当は後付けみたいなもんだっ!
 俺はなっ!お前のことが好きだっ!
 だから、お前のことが大好きなんだっ!文句あっか!?」

「〜〜〜〜〜〜」
桐乃は耳まで真っ赤にして、俺のセリフを聞いてくれてる。
「わ、わかった。あんたみたいな変態、自由にしてたら、人に迷惑掛けるかもしれないしっ!。
 あ、あ、あたしが、あんたの、こ、恋人になってあげるっ!
 こんな可愛い子が、か、彼女になってあげるんだからっ・・・セキニン・・・一生だから・・・ねっ!」

人生最大の黒歴史になりそうな告白だったが・・・これで、いいんだ!
「京介氏、きりりん氏。まったく意味がわかりませんぞ?」
「まったく。こんなバカな告白。ワナビだって書かないわ。」
「それと、黒猫・・・」
「ちょうど良いから、先に言わせて貰うわ。あなたと付き合いたいと言ったのは取り消しね。
 こんな、シスコンでエロゲーマーの鏡で、鈍くさくて、変態な人間。夜の眷属たる私には釣り合わないのよ。」
「アンタ・・・」
「せいぜい、あなたの大切な大切な妹さんと、お幸せにね・・・」
「では、拙者も今日は帰らせていただくでござるよ。また、落ち着いたら連絡を下され。」
「あ、ああ・・・ここまでしてくれて・・・ありがとう。」
「なんの!拙者にとっても、黒猫氏にとっても、京介氏ときりりん氏は大切な友人でござる。また、いつでも拙者たちを頼るでござるよ。」
「ア、アンタたち・・・あり・・・がとう・・・・」


長い、長い、紆余曲折を経て、俺たちは恋人と呼ばれる関係になった。
まだまだ目の前には多くの壁がある・・・
それでも、二人で超えていこうと約束した。


End.






お付き合い頂き、ありがとうございます。

今後の俺妹を予想≒妄想して
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第1巻 「ファントム・妹(エロゲー・シスター)」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第2巻 「あやせたんの攻撃」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第3巻 「フェイトの復讐」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第4巻 「エロゲ・ウォーズ」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第5巻 「妹の帰還」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第6巻 「新たなる妹」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第7巻 「カモフラ大戦」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第8巻 「俺妹トリニティー」←いまここ?
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い  第9巻 「幼馴染の逆襲」
俺の妹がこんなに可愛いわけが無い 第10巻 「シス・婚」



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最終更新:2011年01月14日 22:36