681 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/14(金) 13:43:52 ID:f23A8Tck0 [2/5]
「ん・・・・・・?」
エロゲを返しに来たついでに招き入れた兄貴が、
あたしの部屋の床のある一点を見つめる。
またもの拾いの発作が始まったのか、と高をくくっていると、
兄貴がそのブツを拾い上げた。
「手紙・・・?」
その単語を聞くや否や、あたしの体は強張りついた。
饒舌に妹エロゲのすごさを語っていたあたしの口はパクパク空を切った。
 
「何々・・・・・・?いつか、あたしの、おもいが、とどきますように・・・? To 京介?」
デリカシーのカケラも無く読みやがった!
「読まな・・・・・・あ・・・・・・」
顔が火照って死にそう!お父さん、お母さんやあやせたちだとごまかしが利いたのに、
よりにもよって本人に朗読されるとは・・・・・・。
「お前・・・・・・」
兄貴が口を開く。もうどうにでもなれ・・・・・・。
 
「俺と同じ名前の奴が好きなのか」
は?こいつの発言はあたしの予想の斜め上以上を行っていた。
「まあ、その、なんだ・・・・・・。好きになった奴に罪はない。好きになったお前にも罪は無い。
だけど、少し、紛らわしい、と俺は思う」
何言ってるのこいつ。
そう思ってるとなんか無性にイライラしてきて――
 
「この"京介"はあんたの名前だアアアアアアアアア!」
何故か叫んでいた。
叫んだあと、自分の失態をすぐに理解し、紅くなっていたあたしの顔はさらに熱を帯びて、鼻血が出てきて・・・・・・。
 
 
「おい、大丈夫か?」
目を開けると天井と兄貴の顔が。
「あれ・・・・・・?あたし・・・・・・?」
「お前・・・・・・いきなり叫んだと思ったら鼻血出していきなりぶっ倒れて、俺も訳わかんねぇよ」
 
「おかしいと思う・・・・・・?」
「何がだ?」
「あたし、これ以外にももっと手紙書いてるの」
「そ、そうなのか?」
「うん。いつになるかなぁと思ってたんだけどね。今日、"文(ふみ)重ねた言葉"があんたに通じてよかった」
まだ頭がのぼせてるのか知らないけど、このときのあたしはあたしじゃなかった。
いや、あたしなのはあたしなんだけど、なんと言うか・・・・・・プライドが無いというか・・・・・・。
「しかし、俺はこの手紙しか読んでいない。だからお前の他の手紙に何を書いてるか俺は知らない」
そう・・・・・・だよね・・・・・・。まだまだ恥ずかしいけど他の手紙も出してこなきゃ・・・・・・伝わらないよね。
そう諦めていた。
 
「だが、今まで"積み重ねてきた言葉"で、なんとなくだが、他の手紙に書いてる内容も・・・・・・本当になんとなくだがわかる気がする」
「兄貴・・・・・・。」
二人してひと時を見つめ合う。
 
そして二人して視線を外すためにドアの方をゆっくり見ると、
 
お母さんが立っていた。



-------------

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年01月14日 22:37