278 名前:SS「贈り物はなんですか?」 1/3[sage] 投稿日:2011/01/17(月) 22:14:01 ID:hhixTnYIP [1/5]
※注意
 これは黒猫告白がおきていないことが前提となっておりますのでご容赦を。





「ふぅ、今日もお勤めごくろうさんっと」

夏が過ぎてだんだんと涼しくなり過ごし易くなってきた今日この頃。
俺がさあ部屋でのんびりするかと自室の扉を開けるとそこには

「あ、おふぁえりあにふぃ」

俺のベッドの上で寝そべってお菓子を頬張りながら、ノーパソにむかう妹様の姿がありましたとさ。





               『贈り物はなんですか?』




「またいやがりましたよこの妹様は…」

ベッドの上でくつろぎながらカチカチとマウスをいじる姿は、既にそれが慣れ親しんだものだということを物語っている。


桐乃が起こした『偽彼氏』騒動後、こいつは何故か俺のいない間に部屋に侵入するようになりやがった。
それが発覚したのは、俺の部屋のベッドでスヤスヤと気持ちよさそうに寝ているこいつを発見した時である。
それを見た時の俺の心情を察して欲しい。
あの妹が!俺のベッドで!!俺はそのとき別次元の狭間にでも迷い込んだかと思ったね。マジで。
そうやって俺が固まっている間に桐乃が目を覚ましてしまったのだが

「あれ、あにき?……え!嘘!?あ、あたしもしかして寝ちゃってた!?
 こ、これは違うから!!別にクンカクンカしてたら気持ちよくなって寝ちゃったとかそんなことは絶対にないんだかんね!?」

俺は何も言ってないのに意味のわからない言い訳をかます桐乃は、更にギャーギャーと何かしら言った後

「あ、あたし部屋戻るからっ!」

そういい残して部屋に戻っていった。
それからというもの、何故か同じような姿を何度も目撃しているうちに

「い、妹なんだから別に兄貴のベッドで寝たって何も問題ないでしょ!?」

などと実に理不尽な理由で開き直りやがったのである。
だっておかしくね?仮に俺が同じような理由でお前のベッドで寝てたらどうすんのお前?
いや、なんとなくその後の展開は予想できるんだけどね?想像するに恐ろしいことになるに決まってる。
そろそろ本気で部屋に鍵を付けることを親父に相談したほうがいいかもしれんと切実に思った瞬間だった。


280 名前:SS「贈り物はなんですか?」 2/3[sage] 投稿日:2011/01/17(月) 22:15:05 ID:hhixTnYIP [2/5]
とまぁ、このような経緯もあり今に至るわけである。
ついでに言うならば、それ以降寝るに限らず桐乃が俺の部屋に侵入することが増えた。
俺にはもうプライベートという言葉ないらしい。俺の平穏を返しやがれチクショウ!
既に悪びれすらしない妹に戦慄を覚えないでもないのだが、こうなってしまった以上手遅れだと諦めている。
人間諦めが大事だと思うんだがどう思うよ?

「あむっ。何よ、アンタ挨拶もできないの?それとあんまりジロジロ見ないでくんない?キモイんですケド」

誰もお前のことなんか見てねぇっつの。つかスカート姿で足パタパタさせてんじゃねえ。見えても知らねぇぞ。
まあ、お帰りと言ってくれた以上返さないのも収まりがわるいか。

「……ただいま。つかさ、もう今更勝手に部屋に入ることについては何も言う気はねえけどベッドの上でお菓子食うのはやめろ。
 食べかす落ちたら掃除が面倒だろうが」
「あたしがそんなへまするわけないじゃん。あんたじゃないんだし。つーかそれぐらいでいちいち目くじら立てないでよ。
 心が狭いわねあんたも」
「はいはい、そーかよ。」

もう勝手にしてくれ。そう投げやり気味に言葉をかえす。いつかこのヒエラルキーを逆転することは出来るのかねえ?
多分無理なんだろうなあ。
そう泣きそうになるのをこらえて鞄を机に放り投げるように置き、て空を仰ぐように窓に目をむけた。

「あ?なんだこれ?」

窓際に見慣れない鉢植えが置いてあった。何だこれ?俺こんなもん買った覚えないぞ。
小ぶりで、花の外周がフリルのようにちぢれている色とりどりの花。
へえー、綺麗だな。何の花だこれ?しげしげとそれを見つめていると桐乃から声が上がる

「あ、それ?綺麗でしょ。セントポーリアっていうんだって。
 帰りに商店街寄ったらいい花屋が出来ててさ、そこで売ってたんだ。
 ほら、あんたの部屋って殺風景でしょ?だから少しぐらい華が出るようにって買ってきてあげたの。
 話を聞いてみたら世話もそんなに難しいわけじゃないみたいだし。ちゃんと世話すれば年中花咲かせてくれるらしいよ?
 わざわざアンタのために買ってきてあげたんだから感謝しなさいよね」

余計なお世話だ!なんていい返してやろうとも思ったがそんなことをすればまた面倒なことになるので自重する。
決して口では勝てないからとかそんな理由ではないとだけ言っておく。
殺風景というか、特にこれといったものがないのは確かなんだが。

281 名前:SS「贈り物はなんですか?」 3/3[sage] 投稿日:2011/01/17(月) 22:16:17 ID:hhixTnYIP [3/5]
「それと、それ枯らしたら殺すから」
「また物騒なこというなあお前!?」

思わずそういってしまった俺は何も悪くあるまい。
枯らすつもりは毛頭ないがそこまで言わなくてもいいじゃん。俺どこまで信用ないんだよ。

「ちゃんと世話してるか毎日見に来るかんね。してなかったら……」
「し、してなかったら?」

ゴクリと喉が鳴る。毎日来るならお前が世話すればいいじゃん!なんて突っ込みは言えない。

「アンタのコレクション全部焼却処分するから」

な、なんだってえええぇぇぇぇーーーーー!!?
ば、バカな。俺の秘蔵のコレクションは以前の反省を生かしてそう簡単に見つからない場所に移したのに!
ダミーまで用意しているのに既にばれているとでも言うのか!?
っていうか毎日のようにこいつ俺の部屋に勝手に入ってるんだからばれてる可能性に気付けよ俺!
妹にコレクションの在り処把握されるってどんな羞恥プレイだよ!?

「ま、そういうことだから。ちゃんと世話しなさいよ」
「……わかりました」

既にorzな状態の俺を放置して桐乃は立ち上がった。

「部屋戻るのか?」
「うん。今日はそれが言いたかっただけだから」
「そうかい…」

精神的に大ダメージを受けた俺にはそう返すのが精一杯だった。
ドアをくぐる直前に桐乃がこっちを振り返った

「……大事にしてよね」
「……わかったよ」

そう俺が返すと桐乃は満足そうに顔を少しだけ綻ばして部屋へと戻っていった。


今日も俺の部屋には小さな、それでも綺麗に咲く花が窓際を賑わわせている。




       セントポーリア
       イワタバコ科セントポーリア属の非耐寒性多年草
       別名アフリカスミレ
       

        花言葉   『小さな愛』



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最終更新:2011年01月20日 02:21