414 名前:きりりんうさぎのねがいごと【SS】[sage] 投稿日:2011/01/18(火) 23:06:06 ID:wMCXPeksO [3/3]
「ねえあんた、今夜はゲームやるのは休みにして、流れ星を見に行くのに付き合いなさいよ」
「流れ星? ああ、テレビで言ってる流星群のことか。でも寒いしなあ」
「アンタ真夜中に女の子一人外に出歩かせる気なの?もう決まりだからね」
出かける直前になってもぶつくさ言ってる兄貴をせき立ててあたしは家を出る。

15分ほどして中央公園に到着。今日は天体観測会も行われて、係の人からアドバイスを受けながら公園内で観測ポジションを探す。
街灯から離れた場所にビニールシートを敷き、毛布を体にかけて、夜空を見上げる。
そうこうしてるうちに兄貴がひょいっと立ち上がると姿を消した。
「トイレかな?」と思ってたけど、中々戻ってこない。

目が闇になれたのか、あたしもいくつか流れ星を見ることができた。生で見られるのってやっぱすごい。感動する。
でも、兄貴が戻ってこないのが気になる。もう30分以上経つのに、まさか、一人で帰っちゃったりしてないよね・・・

「おう、戻ったぞ」
「どこ行ってたのよ?こんな長い時間人をほったらかしにしといて」
「なんだ心配してくれてたのか、悪かった」
「そ、そんなんじゃないから!勝手に帰ったんじゃないかって怒ってたの!」
「ほら、これ飲んで機嫌なおせよ」
そう言うと兄貴はホットココアの缶を差し出してきた。
「お前が好きな奴だろ。公園入口の自販機でこれだけ売り切れでな、他の自販機で買うのに手間取った」
(まさか、兄貴はこれ買う為に寒い中歩きまわってたの?)

「・・・バカじゃん。ホットなら別に何でもいいのに。体あっためる為に買い物行って体冷やしてたらバカじゃん。」
「まあ、確かにな・・・」
「ほら早く毛布被って。アンタ連れ出して風邪ひかせたら、あたしが怒られるんだから」
「へいへい」
「・・・あ、あと、ありがとう」

その後、あたしは例によって「シスコンキモい」とか兄貴に茶々を入れながらも、
流星群ウォッチを楽しむことができた。
帰る直前にかなり長い流れ星をみたときは、二人して歓声をあげていた。

帰り道、歩きながらあたしは兄貴に尋ねてみた。
「さっき、すごい流れ星があったでしょ。兄貴は何か願いごとをしたの?」
「そう言えば眺めるのに夢中で忘れてたわ。で、お前は何を願ったんだ?」
「あの、その、今年はうさぎ年でしょ・・・絵本を、兄貴が昔読んでくれた絵本に出て来るうさぎの願いごとを思いだしたの。
あたしね、小さいときは自分がそのうさぎに成り切ってたの・・・
だからその時の願いごとをもう一度って」

「・・・わかったぞ。確かにお前らしいな。『亀にも負けないようにうんと早く走りたい』だろ。」
「・・・わかってないなあ・・・」
「あれっ?違うのか?」


兄貴は「うさぎとかめ」だと思ってたみたいだけど、あたしが言ってた絵本の名前は「しろいうさぎとくろいうさぎ」
いつもなかよしの二人のうさぎ。くろいうさぎがしろいうさぎに言った願いごとはね・・・

『いつも いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますように』

そんなことを思いだしてたら、兄貴がつぶやいた。
「まあ何にせよ、お前の願いが叶うといいな。願いって強く思うと叶うらしいぞ・・・って、どうしたんだ桐乃?」
「なんでもない、なんでもないからホント・・・」

兄貴は無意識のなかで絵本を覚えてたかもしれないと思うと、思わず涙が出そうになった。
くろいうさぎの願いごとを聞いたしろいうさぎはこう言ってたから・・・

『ねえ、そのこともっといっしょうけんめいねがってごらんなさいよ』って。

ふたりのうさぎはずっと一緒の約束をしてお話は終わる。
あたし達も、願いがかなってずっと一緒にいられるといいな・・・



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最終更新:2011年01月20日 02:22