17 名前:秋葉原の追憶 ちびきりりん編【SS】[sage] 投稿日:2011/01/23(日) 15:29:49 ID:hEP0mqlAO
歩行者天国が復活した秋葉原、今日のあたしはその喧騒に背を向けて歩いている。
中央通りを南に進み、JRの鉄橋をくぐると、右手には大きな工事現場があった。

ここには昔、鉄道オタクの聖地があった。その名前は「交通博物館」
『鉄子』でもないあたしがなんでこんな所に来ているかというとね、
昔一度だけ、兄貴とここに来たことがあるのを思い出したから・・・


※※※
兄貴が行くところにはどこへでも一緒にいきたかったあの頃。
兄貴が覚えてるかどうかはわからないけど、
小さなあたしは、兄貴に手を引かれながらここ、秋葉原にやってきた。
あたしがまだゲームやアニメに興味を持つ前の、そんな昔のお話。

博物館の入口には新幹線と蒸気機関車が飾ってあった。兄貴が興奮して写真を撮りまくってたのを覚えてる。
「かってにどこかへ行っちゃだめだぞ」そんなことを言われてた気はしてたけど、
もともとここに行きたがってた兄貴と、博物館自体には興味のなかったあたしは、
見学してるうちにいつの間にか離ればなれになっていた。

まあ、ぶっちゃけその時のあたしは兄貴がいないのに気づいても別に慌てることもなく、
館内をぶらぶらしたあとに屋上に行って、持ってきたお菓子を食べてることにした。
どれくらいの時間が経ったのだろう。好きなお菓子を食べながら満足げのあたしの前に、息を弾ませながら兄貴がやってきた。
兄貴の言い付けを守らなかったことでおこられるのかな、と思っていたら

兄貴はいきなり泣きだした。

どっちが迷子になったのかわからないくらい兄貴は泣きじゃくっていた。
その傍らで、なんで兄貴が泣いてるのかわからないあたしはキョトンとしていた。

帰り道、家に帰る電車に乗っても、まだ兄貴の目が濡れていたのを覚えている。


※※※
今なら、なんで兄貴が泣きじゃくってたのかが分かる気がする。
兄貴はそれこそ必死になってあたしを探してくれてたにちがいない。
自分だってまだ子供なのに、初めての場所で実は不安だっただろうに。
あたしが無事見つかって、思わずそれまで堪えてきたものが込み上げてきたのだろう。

兄貴はその時からちっとも変わってない。今でも、きっとあたしのことを思って、何度も動いてくれてたんだと思う。
ホント、どうしようもないくらいのシスコン兄貴・・・


そんな兄貴のことが、あたしは好き


変わらなければいけないのはあたし。
自分の気持ちに素直になって、想いをまっすぐに兄貴に伝えられるようにならないとね。

※※※
「桐乃、珍しく一人で秋葉原とか、いったい何してたんだ?」
「別に、なんだっていいじゃん。まあ、あえて言うなら今日は
『とあるシスコンへの追憶』を見に行ったって感じかな?」
「なんだそりゃ?それを言うなら飛空士だろ」
兄貴が部屋を出たあと、あたしはつぶやく。

「次回作はね、『とあるシスコンへの恋歌』になるから、兄貴も覚悟しといてね♪」



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最終更新:2011年01月28日 20:39