276 名前:【SS】【1巻4章 桐乃視点1/2】[sage] 投稿日:2011/01/25(火) 08:34:36 ID:CnI26fZr0 [1/2]

お父さんに私の趣味がバレた。もう最悪、そう京介に見つかった時とは全然違う絶望感。
「化粧品だの、派手な服だの、バックだのには文句は言わん、お前が稼いで買ったものだからな、だが、これは別だ。おまえがくだらん
趣味にうつつを抜かしているのならダメになる前に道を正してやらねばならん。」
京介との体験があったせいで、ほんの少しだけ期待してしまった答えとは真逆の言葉をお父さんから浴びせられた。
京介は認めてくれた、馬鹿にしないって誓ってくれたのに…。
なのにっ、何でっ、お父さんは分ってくれないのっ!!

それで、何も反論できずに家を飛び出したあたしは、汗だくになった京介に見つかって、懇願するもんだから、しょーがなく帰路につい
たワケ。
「桐乃、俺に任せろ!」
あんなセリフを吐いていたけどサ、マジ切れのお父さんに超ビビッて「すいまえんでした」なんて撤退してきたらマジぶっ殺しよ!
でも、大丈夫、きっと上手くいく、あの時の京介は私の『兄貴』だったから。京介は最低の屑でも、『兄貴』は妹にとって絶対の守護者
ッて、何考えてんのよ、あたしは!
今、思い浮かべたエロゲーのテンプレの超かっこいい『兄貴』であって、京介とは全然関係ないから!!
そんな非常にウザい事を考えて悶々としていたら、いつの間にか自宅前に着いていたワケ。

「………。」
恐る恐る玄関の扉を開けて、あたしは音を立てないように忍び足で自室を目指した。
あっ、リビングが騒がしい。まさか本当に!?
「超大好きだ、愛しているといってもいいね。こいつを捨てられたら俺は俺じゃ無くなっちまうんだよ。エロゲーは俺の魂なんだよ、分
かったかぁぁぁぁぁぁーーー!」
バチコーン、ドッカーン、ガッシャーン、そんな効果音が扉越しに聞こえたきがした。
「俺はもう知らん!」
続けてお父さんの怒鳴る声と、地響きがする位に強く床を踏みつける音。
その音が近づいてきたらか、あたしは慌てて玄関まで戻り身をひそめた。
ガチャーンと乱暴にリビングの扉が開いて、その後、別の場所から同じように乱暴に扉を開閉する音が聞こえた。


277 名前:【SS】【1巻4章 桐乃視点2/2】[sage] 投稿日:2011/01/25(火) 08:38:45 ID:CnI26fZr0 [2/2]
その後、恐る恐るリビングに入ると、無様に仰向けに倒れ鼻血を出して完全に意識を失っている京介がいた。
あたしの大切なものを守るために、こんな姿になっちゃたワケ?
信じらんない、何でそこまでやれんの?まるでサ、あ…。
「あらあら、ずいぶん派手にやったみたいね」
「お母さん!?」
突然の声にびっくりして振り返ると、お母さんがいて、手に持つ買い物袋にはお酒とツマミらしきものが入っていた。
「買い物に行ってたんだ?」
「ええ、荒れると思ってね」
「桐乃、ちょっと手伝って」
あたしとお母さんで腕を片方ずつ掴んで、リビングのソファーまで京介を引き摺って何とか寝かせる。
このまま、自室に戻るのも気が引けたから、仕方なくお母さん主導でコイツの介抱をしてやった。
本当は気持ち悪くて触りたくもないんだケド、今回だけは特別。
感謝しなさい、超カワユイこのあたしが治療してやってるんだからサ。
「お母さん、お願い、兄貴の介抱はお母さんだけがしたことにして。」
「はいはい、あんたは本当にお父さんにそっくりね。」
「ちょ、それって…。」
「それじゃ、もうあんたは寝なさい。母さんは、これからもう一人の負傷者を介抱しにいくから。」
お母さんがあたしの返答を遮り、リビングを出た。
あたしのせいで…、てか私のせいじゃないよね!アイツが勝手に暴走して自爆しただけじゃん!!
でもさ、あたし、キッカケは、さ…。
ウザ、何でこいつの為に後ろめたい気持ちになってんの。
別にイイじゃん。ずっとあたしを無視してきた報いじゃん、
…ちょ!だから違う、全然違う、それとこれとは全く!!
「あ“あ“あ“、ウザ、キモッ、もうエロゲして寝よ。」
あたしは自分のなかに渦巻く、とても気持ち悪くて、懐かしくて、辛いものが出てくるのを必死で抑えながら、
そう自分に無理やり言い聞かせて3時過ぎにようやく眠れた。

「おっ…、おう。」
翌朝、あんまり眠れずに不機嫌だった私は一睨みしてやった。
アンタのせいであたしは超寝不足なんですケド。
「…。」
キモッ、アイツ、私の態度が全く変わってなくて挙動不審になってる。
まさか、『お兄ちゃん、大好き』なんてエロゲのテンプレ妹になるとでも思ってんの?
ホント、バカ、マジ変態!!
たった1回私を助けただけで、今までのアンタの罪が解消されると思ってんの?
まぁ、でもね、アイツへ初めに伝える言葉は決まってるんだけどサ。
でも、今はダメ、お父さんとお母さんがいるし、それに少しくらい焦らしてやんないと。
そうだ、今日は部活を早く切り上げよう。
仕事もないし、アイツより早く家に帰って待っていてやろうカナ。

END



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最終更新:2011年01月28日 20:43