435 名前:恵方巻【SS】[sage] 投稿日:2011/01/26(水) 23:55:58 ID:T8y3F17aO
「桐乃、買ってきたぞ」
そう言って兄貴が部屋に入ってきた。
「ったく、一昔前の漫画のネタじゃあるまいし、焼き芋くらい恥ずかしがらずに自分で買えっての」
「・・・ああ、焼き芋はやっぱりウマー」
「人の話を聞けよ。それはそうと、これも食うか?」
兄貴はコンビニ袋から、のり巻きみたいなものを出してきた。
「何これ?」
「恵方巻だよ。テレビで宣伝してんだろ。
今日食べると縁起がいいって奴」
「へえ、アンタにしては気がきいてんじゃん」


目の前には2種類の恵方巻
(どっちにしようかな・・・)
「あの、桐乃さん。いい加減、どちらを食べるかお決めになっては?」
「うっさいなあ、どっちがおいしそうか真剣に選んでるところなの」
「へいへい・・・」
ようやく決まったところで
『ぱくっ』『ぱくっ』

(うーん、イマイチな気が。やっぱり兄貴の食べてるほうがおいしいのかも)
とその時
『ピンポーン』
「・・・」
「分かったよ、出ればいいんだろ」
兄貴は食べかけの恵方巻を残して玄関に向かう。

(・・・)
『ぱくっ』


「回覧板だった。さてと、ん?何か俺の恵方巻が小さくなってるような?」
「言いたいことがあるならはっきり言えばいいじゃん!」
「何逆ギレしてんだよ。俺のを食べたなら食べたって言えばいいだろ」
「・・・アンタにもあたしの恵方巻あげるから食べなさいよ。これでチャラでしょ!」
「何だその展開は」
「うるさい、アンタに借りを作りたくないの!それだけ!」
「もう無茶苦茶だな。分かったよ、貰う」

『ぱくっ』

「確かに、俺が最初に食べてたほうが美味しいかも」
「でしょ。だから次からはちゃんと一人二本用意しなさいよね」
「やれやれ・・・」


「ところで、兄貴に聞くけど、今年の恵方はどっちだったの?」
「えっ、そう言えば、どっちだっけ」
「肝心な方角を知らずに食べてるとか、超ウケルんですけど」
「お前だっておんなじだろ!」
「あたしはいいの、ちゃんと恵方を向いて食べてたから」
「そうか?・・・なんだ袋に書いてあるじゃん。
今年は南々東だってさ、桐乃も全然違うほう向いてたよなw」
兄貴はニヤニヤ笑い出した。
「うっさい黙れシスコン!あたしが恵方と言ったら恵方なの!!」


(あたしにとって、兄貴のいる方角が恵方なんじゃん
言わせないでよ恥ずかしい・・・)



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最終更新:2011年01月28日 20:54