647 名前:複雑な2月14日の事情[sage] 投稿日:2011/02/14(月) 15:39:24 ID:tTtDMDJo0 [1/2]

2月14日バレンタインデー

 あたしにとっていろいろ複雑な日である
 記憶にある小さい頃のあたしは"あいつ”にチョコをあげていた。
 今考えると超ありえない事にナケナシのお小遣いを溜めて買った、
 でっかいハートに"だ…"、ごほん、とある文字がでかでかと書いてある
 超恥ずかしいシロモノをだ。
 あんなの良く渡せてたと思う。

 それが6年前までのコノ日のささいな行事だった。
 家族に異性がいる女の子ならばわかると思うケド、普通でありきたりな日常のひとコマでしょ。
 特別な意味なんてあるはずないじゃん
 ………

 
 それから一年たった小学3年生のコノ日、あたしにとってとある事件が起こった
 思い出すだけで何故か切なくて悲しくなってくる
 
 「はぁ、はぁ…」
 あたしは前の年と同じくお店で買ったアレを当時早くも無い足で”あいつ”に
 渡すために急いでいた。学校では禁止されていたので"あいつ"もまだ貰ってないハズで
 その…一番に渡すためだ。
 というか、朝わたせばよかったじゃん!あたしよ。でも両親のいる目の前でアレを渡すのは
 何故か当時から抵抗があったんだよね。
 
 それはともかく、当時、"あいつ"はしんじられないくらい鈍いから気がついてないけど、
 学校の女子には学年問わず人気あった。さすがにあたしと同じ血を引いてるだけあって
 見た目はその、それなりに良い…し…、凄く面倒見がよくて、その、優しくて…
 ごほん、
 それなりにその、認めたくないけど、イイ男だったわけ。
 ホント、"あいつ"の事学校とかで友達とか年上の女の子にしょっちゅう聞かれてたんだよね

 わかるっての。



 ああもう"あいつ"だと文字数多いから、ココではその、きょ、"京介"ってよぶことにする

 ええっと、それで、認めたくは無いけど何故か京介にアレを一番にあげたいと思っていた
 当時の超かわいいあたしは急いでいたワケ。


 
 「はぁ、はぁ…」
 学校から走って帰ってきたあたしは、机の中からアレを取り出し、これから帰ってくるで
 あろう京介を探していた。探していたといっても学校へ向かって走っていくだけ。
 学校から帰ってくるんだからそれが一番でしょ。

 あ、いた。
 なんか顔が熱くなってきて頬が緩むのがわかる。「おにぃ…」
 声をかけようとしたら、"あの子"と京介の二人が一緒に帰ってくるところだった。
 口に出しかけた言葉をあわてて引っ込めて思わず物陰に隠れてしまった。
 本能である。

 
 話し声が聞こえてくる
 「ねぇ、きょうちゃん、ちょこれーともらった?」
 「ああ!もらってねーぜ!」

 京介は力強く断言した。ほっ まだあの子にも貰ってないのね良かった…
 会話が続く

 「………ぐす」
 「あは、そうなんだ。きょうちゃんおんなのこにもてるから、たくさんもらったかとおもったよ」
 「かぁ、なぐさめの言葉はいらねぇ…!俺がモテるってありえねえだろ!傷口に塩をすりこむような真似はよしてくれ…」
 「えー?なんで?もてるよね?」
 「あのな、俺と目が合うとさ、キャーとかいって顔真っ赤にして怒りながら逃げていくんだぜ…」
 「こんなのでモテてるよねとか、言われたって…説得力がなさすぎる!」
 「ちょーへこむぜ」
 「きっとはずかしいんだよ〜きょうちゃん、かっこいいから」
 「バ、馬鹿じゃねぇの!お前、はずかしいな!」
 「えー?」
 「はぁ、わかったわかったわかったから、もうその、やめてください麻奈実さん」
 「えー?」
 「えーじゃねぇ!」
 「ふふ、でも桐乃ちゃんからはもらえるんでしょ?」
 「え?あーまぁたぶんな。毎年くれるし」
 「よかったねぇきょうちゃん」
 「べ、べつに妹から貰ったって嬉しくなんてねーよ!」
  
  …え?

 「ほんとはとってもうれしいくせに」
 「ば、馬鹿いえ、チョコなんてもらったって気持ちわるいだけじゃん。い、いらねーっての!」

  …え?

 「そ、そっかぁ、じゃあわたしのつくったのむだになっちゃったなぁ」
 「麻奈実」
 「ど、どうしたの?きゅうにしんけんなかおして」
 「食べ物を粗末にしてはいけない」
 「ここは俺が仕方なく処分してやる」
 「そっかよかったぁ、じゃあ今からうちにきてたべていってね」
 「がっこうは禁止されてるからいまはないんだぁ」
 「ああ!まかせろ!」

 それからの事はあまり覚えていない
 気がついたら家にいてアレをダンボールにつめて押入れに投げ込んだ事しか記憶にない
 その実、これも"記憶にある"として覚えてるのかと言えばあやしいのだ。
 たぶん、"例のダンボール箱"にアレが入ってるから"そういう事"なのだろう。
 

 そんな事があったのと、京介がその年に中学に進学してあたしと学校が離れ離れになったのが重なって
 よそよそしくなっていったっけ…

 次の年は前の年の事がトラウマになってて、でも、よそよそしくされるのが嫌で、また前みたいに………なりたくて
 アレを用意したはいいけど、あんな風に思われてると思うと、怖くて"家族用"として食卓に置いておくのがせいいっぱいだった。

 
 次の日に何故かドキドキしながら、数が減ってるのを確認して、お母さんにさりげなーく、それとなーく、味どうだったって聞くと
 「お兄ちゃんもおいしいって食べてたわよ」って言ってくれたのを聞いて何故かすごく安堵してたっけ
 …てか、今考えるとお母さん一言目がそれってどういうことなワケ?





 また次の年も同じく食卓の上にアレを"家族用"として置いてたんだけど、その頃から"ある事"があって
 自分に自信が持てるようになっていた。余裕が出てきたんだと思う。

 リビングでファッション誌(自分が超かわいく載ってるやつ)を読みながら京介がアレをどうするか
 確認してやる事にしたのだ。

 せっかくこうして可愛い妹がアレを用意してこうして待っててやってるんだから早く帰ってきなさいよ
 なんて思うわけないでしょ。キモ。あーキモ。想像してると馬鹿馬鹿しくなって熱くなってきちゃった
 そうこうするうちに京介が帰ってきた。
 
 「ただいま」

 ああたしは、べべつにああいつと会話するひつようもなないとおもっているのでききんちょうしてるわけでも
 ないし、あ、あれなんか汗がでてきたし今日はああついなぁとか考えてると

 京介は食卓の上のアレに気が付いたようだった。

 「お、チョコか、なあ桐乃」
 「……」
 「はぁ、無視するなよ」
 「……なに?」
 「これお前が用意したのか?なんか去年そうだったみたいだし」
 
 こ、こいつ、去年の事ちゃんと覚えててくれたんだ…
 何故かしらないけどどんどんあつくなってくる。
 なんだかしらないけど涙がでそうになってくるのを堪えていたら
 
 「これ、俺が食ってもいいのか」

 あいつはそう言った。
 心臓が飛び出るかと思うくらい動揺してしまった。
 思わず雑誌で顔を隠してしまう。
 あああ、なんかいわないと、なんかいわないと、ああああえええええと
 あんたの為に用意したんだから当たり前でしょっ!
 ああああたしなに考えてるのそんな事言えるわけないでしょ!
 あああもう!
 いろんな思いが頭に渦巻いて何も言えない

 すると京介はちょっと残念そうに

 「ふう、悪かった」

 と言って立ち去ろうとしてしまう
 ダメ!
 
 「……好きにすれば?」
 
 咄嗟にそう答えてしまった。
 バカバカ、そうじゃないでしょ!もっと違う言い方があるでしょうもう!
 ほんとあたしってばバカ!馬鹿馬鹿!と、ココロの中で後悔していると
 
 京介はあたしが用意したアレを一つつまんで口にほおりこみ
 
 「うん、うまい」
 「ありがとな、桐乃」
 
 そう言ってリビングから出て行った。



 それから三年、コノ日は京介と"たくさん話す日"になっていた。
 これがバレンタインデーがフクザツなワケよ。わかった?













 そして今日、あたしはアレを胸に抱いて京介の部屋の前にいる。
 あの時渡せなかったアレと今のあたしの気持ちを込めたコレ。
 あいつにはあいつがいるケド、それでも、ううん、関係ない。

 あたしがそうしたいんだ

 あたしは震える手でドアをノックする。
  
 この一瞬
 あたしは今までの人生で一番緊張している
 それがわかる
 逃げ出したくなる
 ーでも

 「うん?桐乃か?ノックなんてらしくないな入れよ」

 あたしはドアをあける
 伝えたいあたしの思いを

 「あのね…」


 
 
 
  
 
 

  
 





「いやあきりりん氏は乙女ですなぁ、さすがの拙者もこれには萌え狂ってしまいそうでござる」
「フ、あなた、実の兄に対して、いったい何をどうしようとして、どうなったのかしらね」
「知ってるけど。是非、あなたの口から聞かせて頂戴」

「キ、キャああああああああああああああああ!!!」




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最終更新:2011年02月18日 01:45