282 名前:職場体験【SS】[sage] 投稿日:2011/02/19(土) 02:41:36 ID:/t4qhkVfO [1/4]
桐乃の奴が、中学校の職場体験で近所の幼稚園に行くことになった。
茶髪少女が幼稚園の先生のまね事とか、思わず吹き出してしまいそうだが、
本人はいたって真面目に取り組むつもりで、お袋に小さい子供への接し方とかを聞いてるようだ。
桐乃の机の上には手作りのおもちゃらしき物の作りかけがあったりして、
俺はまた一つ、桐乃の意外な一面を知ったような気がした。


自分でも、どうしてだかわからないが、何故か桐乃の姿を見たくなって、
たまたま学校が入試の準備で早帰りになったこともあり、俺は桐乃のいる幼稚園に寄ることにした。
この幼稚園は、俺や桐乃がかつて通ってた場所でもある。
園長先生は俺のことを覚えててくれて、職員室に迎え入れてくれた。しばし懐かしい話に花が咲く。

「さて、桐乃ちゃんの様子を見に行きましょうか」
園長先生に促されて、俺は運動場に向かう。

「…まほうのくにから ちきゅうのために♪」
園児たちがメルルの歌をうたってるのが聞こえてきた。その輪の中には、やはり桐乃がいた。
リアル妹と言えるような小さい園児達に囲まれてるせいか、
桐乃はとても楽しそうに園児たちと触れ合っていた。
ここまでの笑顔は中々見られるものではない。
「最初はやはり緊張してたみたいだけど、流石は桐乃ちゃんね。
すぐに園児たちと打ち解けあって、あとはずっとあんな感じなのよ」
園長先生がにこにこしながら語る。
俺は桐乃に感心していた。
「あっ、えんちょうせんせいだ」
「せんせいもあそぼー」
こちらに気づいた園児たちが走ってくる。
桐乃は俺の姿を認めたのか、一瞬驚いたようだったが、
女の子たちに引っ張られる形でこっちにやってきた。
「あ、あんたどうしてここにいるのよ」
「まあ、ちょっとな。なかなか様になってるじゃないか」
「ねえ、えんちょうせんせい。このおとこのひとはだあれ?」
「この人はねえ、桐乃さんの…」

「わかった!きりのおねえちゃんのかれしだね♪」

「えっ?」「ええっ???」思わず二人は叫ぶ
しかしそんなことはお構い無しに園児たちの話は進んでいく。
「わあ、かっこいい」
「かれしのおにいちゃんもいっしょにあそんでよ」
「おねえちゃんをおむかえにきて、これからでーとするの?」
勝手に盛り上がってはしゃぎまくる園児達に
俺が桐乃の兄だと伝えるのは、容易なことではなかった……


「もう、あんたがいきなり来るもんだから、とんだ大騒ぎになっちゃったじゃないの」
一緒の帰り道、桐乃がこうつぶやく。
「でも、面白かったな」
「何ニヤニヤしてるの。これだからキモいシスコンは」
そう言いながら、桐乃もそこまで怒ってはいないようだ。園児たちも悪気はないわけだし。
「なあ、桐乃。お前、幼稚園の先生とか保母さんとか向いてるかもな」
「いきなり何言い出すのよ」
「だってな、あんなに生き生きとした桐乃の顔見たの初めてだからさ。
天職なんじゃね?」
「そりゃあ、小さい子供達との時間は楽しかったけど、
まだ将来の仕事を決めるまでじゃないし、それに」
「それに、なんだ?」
「…外で働かずにあんたんとこに永久就職するかもしれないじゃん」
「なんだって?小声で聞こえないぞ」
「なんでもないから!!」



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最終更新:2011年02月21日 00:21