### あぷろだ 367.txt ###
「お袋ー、俺のパンツが1枚ないんだが知らな…げ」
お袋に用事があったのでリビングに下りてくるとそこには
ファッション誌を読みながらソファーでくつろぐ妹様がいた。
マル顔だが整った顔立ちは、相変わらず何をしていても様になる。
今もただなんとなしに雑誌を眺めているだけなのだが、その姿は―――
(…ん?)
そんな風にあいつをぼーっと見ていると、なんとなくいつもと雰囲気が違って見えた。
ライトブラウンに染められた髪も、ばっちり施されたメイクも
いつもと変わりないが、なんとなく、こう………
「………ウザ。なにじろじろみてんの、シスコン」
ガン見していていたのが気づかれた。
その筋の人間が向けられたらぞくぞくするような視線でこちらを睨み
(ちなみに俺にそんな趣味はない)、相変わらずの毒を吐いた。
「ああ、いや…そのだな…」
正面から妹の顔を見て、ふと違和感の正体に気づく。
ああ、なるほどと思い、俺は頭に浮かんだ言葉をかけた。
「なあ、桐乃おまえさ………
O.R.E.『美容院』
→ O.R.E.『兄パン』 SET!
………俺のパンツしらないか?」
「………………………………………………はぁ!?」
その目を限界までまん丸に見開いて、非常に驚いた顔をする桐乃。
安心しろ、言った俺もびっくりだ。
てか、妹の顔見てパンツとか何モンだよ、俺!?
内心で動揺しまくっている俺をよそに、みるみる不機嫌な表情になる桐乃。
「あんたさ、それ、どういう意味…?」
「う………その………」
「まさか、あたしのこと疑ってるわけ?」
「信じらんない…!キモッ!マジキモいんだけど!?」
「つーか、なんであたしがあんたの………その、ぱ、パンツなんか…!」
「ありえない………マジありえないんですけど、この変態!!シスコン!!!!今すぐ死ね!!!!!!」
「ま、待て!!そんなつもりは!?」
当然のように俺に怒りをぶつける桐乃。
い、いや、ホントにそんなこと考えてないッスよ!?
「じゃあ何………なんでそんなこといきなり聞くわけ!?」
確かに。こいつが俺のパンツの行方を知っているなど、ありえない。
………ありえない、よね?
「あんた、あたしにクンカ売ってるわけ!?そっちがそのつもりならマジかぐんですけど!?」
徐々にヒートアップし、臨戦態勢に入る桐乃。ま、まずい!?
「ち、違っ………!?と、とにかく、スマン、俺が悪かった!!じゃ、そういうことで!!」
ええい、これ以上ややこしくなる前にここは退散!
リビングからはまだ話は終わってないとばかりにわめく声が聞こえるが、
今はそんなものにかまっていられない。
ほとぼりがさめるまではしばらく部屋でおとなしくしていよう。
…鍵のない部屋じゃいつ突入されるかわかったもんじゃないが。
しかし、改めて自分のせりふを思い返すとよく考えなくても変態確定じゃねーか。
これじゃケンカ売ってると思われてもしかたが……………………………ん?
あれ、さっきの会話、なんかおかしいところがなかったか?
………おや???
なんとなくモヤモヤしたが、わからないということはたいしたことではないのだろう。
俺はそれ以上考えるのをやめ、自分の部屋に逃げ込んだ。
end
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最終更新:2011年02月22日 00:54