948 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/02/22(火) 18:04:14.86 ID:karj1yhz0 [4/4]

SS『妹は大天使』



「赤城、改めて質問なんだが、おまえにとっての妹ってなんだ?」


俺の前にいるやつは、高坂京介。俺のダチだ。
元から結構仲良かったんだが、エロゲの深夜販売の件や、俺の天使の件で結構世話になっている。
で、今日もアキバに繰り出し、メイドカフェで戦果を確認してたとこだったんだけどよ………

とりあえず、俺は周りを確認してから―――この前酷い目にあったんだよ!―――
こう、答えてやった。


「前も言ったろ?天使。」

「そうか………あんな腐女子でも、おまえにとっては天使なんだよな。」

「そうだ。で、おまえは確か違うんだったよな?」

「ああ。たぶんな………」

「おい、どうしたんだよ高坂?調子悪いのかよ。」

「いや、そういうわけじゃなくてな………」


高坂のやつ、妙に歯切れが悪りいんだよなあ?
それに突然、俺の天使の事―――ま、まさかっ!?


「お、おまえっ!おまえなんぞに瀬菜ちゃんは渡さねーからなっ!?」

「ち、ちげーよっ!?ありえねーしっ!」

「そ、そうか、とりあえず安心したぞ。」

「つか、なんで俺がおまえの妹のこと好きになんなきゃならねーわけ?」

「そりゃ………天使だからだ。」

「おいおい、説明になってねーぞ?」

「瀬菜ちゃんは天使だろ?周りの男共がほっとくわけねーよ」


高坂は、妙に気だるそうにしながら口を開く。


「それ、どこまで心配してんだよ。」

「前も言ったろ?瀬菜ちゃんは俺の妹だけど、彼氏ができたらぜってー殴るって。」

「そうだったな………仮に………いや………」

「………高坂。おまえ、どうしたんだ?この前の雰囲気とぜんぜんちげーぞ?」

「気の、せいだろ?」

「まさかと思うが、おまえの妹に彼氏がでk―――」

「いねーよっ!!!」


突然テーブルを叩き大声を上げる高坂に、周りの人が驚いてしまってる。
なんだ?何をそんな必死になってんだ?


「とりあえず、落ち着け。」

「………ああ、済まねえ。」


これからかける言葉を間違うと、また激発させちまうな。
俺は慎重に言葉を選ぶ。


「おまえの妹に、なにか問題でもあんのか?」

「………ああ………いや、桐乃の問題じゃない………」


高坂の表情は、さっきまでと違い、蒼白だ。
今の反応を考える限り、妹自身には問題が無いって事になる。
彼氏に問題があるのか?
いや、今の言い方、高坂に問題があるってのか?

だが、どうする?
聞いてしまっていいのか?
確かに、俺達は親友だと思っちゃいるが………


「それじゃあ、おまえに何か問題があるのか?………特に、妹に関することで。」

「………………………ああ。」


高坂は、一言そう答えると、押し黙ってしまう。

よく考えろ、俺。高坂は、さっきまで何を聞いてきた?
俺にとっての妹?後………彼氏?
妹に彼氏が出来て、彼氏自身はいいやつだが、自分が認められねーって事か?

いや、だがそりゃおかしい。俺はそうだって言ったばかりだし、同じ気持ちなら同意くらいするだろ?

………………………まさかな
だが、どう聞き出す?
いくらなんでも、直接は―――!


「高坂、俺な、妹だけど瀬菜ちゃんのこと良いと思うんだ。」

「あっ!ああ?」


………………………すげー反応だな。
って!………………………もうやけだ。


「マジでそうだろ?瀬菜ちゃん顔も良いし、何よりあのおっぱい。
 あんな良いカラダしてたら、俺だってドキドキしちまう」

「そんなこと言っていいのかよ?仮にもその………妹、なんだぜ?」

「妹だって、女だろ?おまえにとっての妹はどーなんだよ。」

「………………………すっげー、可愛いと思う。」

「そんだけか?俺の天使なんて、おまえの妹なんざ比較にならんくらい性格もいいぞ?
 それに人望もあるし、頭もいい。まさに世界一の天使だぜ」

「ぁあ!?んなわけねーだろ!
 そもそも、だ。桐乃はな、読者モデルにもなるくらい、美人なんだよっ!
 顔立ちも端正で、あのくりっとして輝いてる目なんて、世界一綺麗に決まってんだろ?
 頬ももちっとしてすべすべで、正直ずっと吸い付いていてーくらいなんだよっ!
 それに、あのけしからんおっぱい!おまえの妹みてーにただでかいだけじゃねえ。形がベストなんだよ!
 尻だって、むしゃぶりつきたくなるような柔らかさだし、ウエストだって絞れてる!
 すっぴんですらこのレベルだぞ?普段化粧してるときなんざ、相手になる女がいるわけねーだろ!」


ちょっ!?な、何かスイッチ入れちまった!?
つか、なんでそんな事まで知ってんだよ!?


「それにな、あいつは勉強でも県トップクラスだし、陸上に至っては世界の方からお呼びがかかるくれーだ!
 友達だって多いし、おまえの妹ほど変態じゃねーよっ!
 それになっ、あいつは俺にプレゼントをくれたりなっ!バレンタインチョコだってくれるし、
 俺にアクセサリーねだってきたり、彼氏になってっていってきたりな!
 とにかく、世界一可愛いんだよっ!」

「だ、だが、可愛い止まりなんだろ?」

「それもちげー!
 こんな可愛いんだぜ?そのうえ、あいつの体からはいつも良い匂いがしてくんだよっ!
 つか、あのボディライン反則だろ!?欲情しねー男とかいるわけねーだろっ!
 瀬菜がおまえの天使なら、あいつは俺の大天使なんだよっ!!!
 体も心も全部俺のものにしてーんだよっ!!!!!」

「………………………」

「………………………」


正直、ここまでたー思いもよらなかったぜ………
俺は、人生最大の地雷を踏みつけた気分だが
俺とは比較にならないレベルのシスコンを、すこし羨ましく、そして嬉しい気持ちで見る事ができた。


「高坂。そりゃー完全に、妹じゃなくって、一人の女の子として見てるぜ。」

「………そうなのか?」

「そうだろ?妹にまで欲情するとか、マジもんの変態だったぜっ!」

「わ、笑うなよ………」


ここまで自分の気持ちに鈍いヤツだったとはなー!
二重の意味でにやにやが止まらないっ!

しかし、妹って、生まれてからずっと、俺の腕の中で泣いている小さな生き物で、
ある日、巣立っていくもんだとばかり思っていたんだが………

そうだよな。
育ってきた小さな生き物は、本当は俺と同じ1個の人間で、対等な立場を築くことができるんだな。
そして、その人間に恋するって、他人に恋するのと、本来なにも違いが無かったんだな。

護ってやるだけじゃなくって、必要とすることだって、あったんだな。


俺はようやく収まってきた笑いを引っ込めて、袖で涙を拭いた。
この前のお返しだ。


「そうだ、高坂。言い忘れてたけど―――」

「あん?」

「おまえの大天使が、後ろにいるぞ」

「なにぃ!?」


高坂は血相を変えて背後を振り返った。
そこには、高坂の妹が真っ赤になって、恥じらいながら立っている。


「あ、兄貴………」

「き、き、桐乃っ!?いつからそこにっ!?」


高坂は、椅子からひっくり返りそうになった。高坂の妹はさっきより、もっと顔を赤くして


「『おまえにとっての妹はどーなんだよ』『すっげー可愛い』から………」

「ぬあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


高坂は羞恥のあまり頭を抱えて絶叫し、そのままテーブルに突っ伏した。


「あ、兄貴にとって、あたしって大天使で、体も心も全部独占したいんだね?」


恥ずかしそうに、でも嬉しそうにする高坂の妹。
その口調はたしかに、妹のそれではなく、恋する乙女のものっぽい。

まあ、偶然、俺みたいなのが恋のキューピッド役になっちまったようだが、
当人達も満足そうだし、気分のいいもんだ。


「それじゃ、高坂。これから積もる話もあるだろうし、また、学校でなっ!」

「あ、ああ………」


帰ったらさっそく俺の天使に、この顛末を教えてあげよう。
まあ、俺達がこんな関係になるとは思えねーが、
今までと違った新鮮な目で俺の天使を見る事ができそうだ!



End.



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最終更新:2011年02月23日 01:33