308 名前:-1-[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:38:09 ID:Kdruemo50 [2/7]

Title:『プレゼント』

「……来たんだ」
「来てもこなくてもいいって言われたって来ないわけにはいかねえだろ。人の返事も聞かずに一方的に誘いやがって」
「ハ? なに、その言い方。来たくなかったみたいに聞こえるんですケド」
「俺にだって今日は、色々、予定あったんだよ!」
「だ、だから言ったでしょ!? 来るも来ないも自由だって。フン!」
「──ったく。友達とこのクリスマスパーティに出るんじゃねえのか?」
「……つ、都合が悪くなったの! 急にドタキャンになって……だ、だから仕方なく」
「なんだよそりゃ……俺がこなかったらどうするつもりだったんだよ」
「え? そ、そんなのあたしの勝手じゃん……。何? 本当に来たくなかったってんなら帰っていいよ」
「ふん。……来たくなかったんなら最初から来ねえよ」
「じゃ、じゃあ、最初から素直にそう言えばいいじゃん。シスコンのくせに何気取ってんの?」
「あん? ……ったく。いいよ。そんな事言うなら帰るわ」
「ちょ……! い、今更、何言ってるワケ? もう来ちゃったんだから、帰っても仕方ないでしょ!?」
「だって、おまえ来て欲しくなかったみてぇじゃねえか」
「ハァ? だ、誰もそんな事言ってないじゃん!」
「じゃあ来て欲しかったのかよ?」
「ええっ!? ……だ、だから……」
「だから?」
「だから…………その…………………………どっちでもいいって……言ったじゃん……」
「──そうかよ。どっちでもいいなら帰る」
「あっ……」
「………………」
「………………」
「……引止めねえのか?」
「…………っ」
「……」
「~~~っ」

312 名前:-2-[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:39:12 ID:Kdruemo50 [3/7]

「……ちっ。わかったよ。どうせ俺はシスコンだからな。おまえを置いてなんて帰れねえよ」
「な、なにそれ! あ、あたしを試したワケ?」
「だって癪じゃねえか。いっつも俺ばっかりよ。たまにはその……」
「たまには……なによ」
「──なんでもねえよ。行こうぜ」
「な、なにを何事も無かったように進めてんのっ!? ひ、ひとを試すような事しておいてすんなり行くワケないでしょ!?」
「ぐ……」
「う~~~っ」
「……ああ、もう! 悪かったよ! このとおり謝るからよ。せっかくのクリスマス・イブなんだから喧嘩はやめようぜ?」
「そ、そこまで、謝るなら……今日のとこだけは、許すけど……さ」

「──でもどうすんだよ。俺、何の予定も立ててないし、店の予約もしてねえぞ」
「い、いいよ。あたしがちゃんと予約しといたし……」
「え? 急に決めたんじゃねえのか?」
「……ちゃ、ちゃんと知識があれば、当日だってどうにでもなるの! それくらい!」
「ふうん。そういうもんなのか」
「ほら、お店、こっちだから」

………………
…………
……

314 名前:-3-[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:40:18 ID:Kdruemo50 [4/7]

「ね、ねえ。ところで……さ……」
「なんだ?」
「さっきの事だけど……」
「さっき?」
「……ほ、…………………の」
「? なんて言った?」
「……ほ、ホントは……ウソだ……って……言ったの………………」
「え?」
「だ、だから! ……さっき言ったの、ウソなの……」
「ウソ? じゃあ、店、予約できてないのか?」
「は? ……ち、違う! そっちじゃなくって!」
「?」
「だ、だから……さっきの話」
「さっき?」
「何、ループしてるワケ!? も、もう……! こ、これ!」
「は? な、なんだよ、これ」
「……ク、クリスマスプレゼントに決まってるでしょ!」
「お、俺にか?」
「バ、バカじゃん!? ほ、ほかに誰がいるわけっ!?」
「そ、そうか」
「そ……そうかじゃないでしょ……。は、早く受け取ってってば!」
「わ、悪い。はは……おまえからプレゼントなんて……に、二度目だな」
「……か、回数なんてどうでもいいじゃん……」
「そうだな。その……あ、有難うな、桐乃。……う、嬉しいよ」
「べ、別に……たいしたもんじゃないしィ……」
「あ、俺の、その……実はプレゼント──」
「い、いい! こ、これは違うから!」
「違う?」

315 名前:-4-[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:42:02 ID:Kdruemo50 [5/7]

「そ、そう。これは……その…ほら、これ……去年もらったこれの分だから……」
「あ、それって──」
「…………うん。それは、このピアスの分のお返しだから……だから、別に……いい」
「で、でも、おまえ、それは取材だからノーカンだって言ってたじゃねえか」
「や、やめたの」
「やめ?」
「そ、そう。ノーカンにするの、やめたの。……だから…………お返し」
「…………」
「……変……かな?」
「い、いや……そう……だな」
「…………」
「なあ、桐乃……。やっぱり去年のそれ……ノーカンにしないか?」
「え……?」
「そ、そんな顔すんなって! ち、違うんだよ。その……ほら!」
「あ……」
「実は……一応、もう買ってあるんだよ。その……今年の分のプレゼント」
「そのラッピング──」
「去年、買ってやれなかった店のリングとアクセサリのセットだ。ただ、同じデザインの無かったから勝手に選んだ」
「え? あんたが?」
「ああ。だから、センスには責任もてねえぞ?」
「…………」
「な、なんだよ、そんな心配そうな顔しなくても、店員さんとちゃんと相談したよ!」
「(ふるふる)」
「え……やっぱ、自分で選んだ奴じゃないとダメか? それなら今から行って──」
「ち、違う! ……いい、それでいいから」
「そ、そっか。じゃあ、ほら……」
「…………ゎ……」
「メリー、クリスマス、な」
「うん。……メリークリスマス。それと……その……さ、兄貴──」


「──こ、今夜は来てくれて、ありがと」


~fin~


316 名前:-5-[sage] 投稿日:2010/12/24(金) 00:43:15 ID:Kdruemo50 [6/7]


………………
…………
……


「……あ、でもやっぱりこのピアスもノーカンじゃない方がいいかな。結構、気に入ってるんだよね」
「そ、そりゃ。おまえがいいなら、俺はかまわねえけどさ」
「じゃあ、やっぱ、この分のお返しもしないと……だよね」
「い、いいよ。別に」
「あ、あたしがするって言ってんだから、あんたはだまって受け取りゃいいの!」
「そ、そっか。まあ、安いものでいいぞ?」
「ど、どうかな。値段はつけられないと思うけど……安くはないと思う」
「?」
「だって、この世にひとつしか無いものだしね──」

(おしまい)



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最終更新:2010年12月30日 21:02