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エクストリーム自殺 アシュ様編 ◆xrS1C1q/DM



怒りに任せて拳を壁にぶつけた。
それだけで民家は崩れ落ち、跡には瓦礫の山が残る。

「やってくれるな……キース・ブラック!」

砕けかねないほどの力で歯を食いしばり、血がにじむほどの強さで拳を握る。
その躰は激情に震え、血走った双眸は景色とは別のものを見据えた。
何もかもが上手くいかない現状。なす事全てが失敗に終わる無念。

運命の歯車が狂いだしたのは何時からだったのだろうか。
宇宙の意志が彼に敵対した時か。
美神令子が復活した時か。
南極での敗戦か。
ゴーストスイーパーが立ちはだかってきた時か。
エネルギー結晶の発見が遅れた事か。
1000年前、メフィストの裏切りにあったことか。
魔族がカードの表になることを許されない現実を悟った時か。
消えることすら許されぬ強大な力を持ってしまったことか。

それとも――――生まれてきたことか?

「まだだ、まだ挽回の手立てはあったはずだ。
 あのガキに結晶を持っていかれたところで……」

彼が千年を賭して完成させた集大成、宇宙を思うがままに操ることが出来る宇宙処理装置。
それも今頃はこの会場に呼ばれなかった者達の手によって破壊、もしくは封印されているだろう。
生きて帰ったところで、二度目はあるまい。
神魔族の全てが彼の敵に回った今、再び計画を進めるのは不可能。
彼、アシュタロスは全てを喪った。

「これが宇宙の選択か!?」

天を見上げ、あらん限りの力で吠える。
瞬く星、輝く月、漆黒に染まった空、全てが忌まわしい。
自分の修正から抗いきった宇宙が憎い。
そして力なく頭を垂らし、小さく呟いた。

「勝ちが潰えた今、消えるしか無いのか」

彼は疲れていた。
茶番劇の悪役として君臨し続けることに。
永久に繰り返される神魔の戦いの中で、邪悪な存在として在り続けることに。
救いのないまま生きることに。

「いいや、無理だろうな」

そう言って自嘲気な笑みを浮かべる。
アシュタロス程の力を持った魔族は、己の意志で死ぬことが出来ない。
正確に言えば滅びることが許されないのだ。
神魔のバランス維持のため、死のうとも同じ存在として強制的に復活を遂げさせられる。
"世界”に死を認めされるための方法はある。しかし――――


「私は"成果”をあげることが出来なかった」


――――宇宙の改変計画は未遂に終わり、次が来ることはない。
己の死を認めさせるに足るかどうか考えると、彼自身も分からないのだ。


「どうする……?」

ハッキリと言ってしまえば、彼はこの殺し合いなど眼中にはない。
キース・ブラックが宇宙の意志を超える力を持っているとは思えない以上、願い事にも興味はない。
どうせ死んだとしても復活するのだからと、己の生死にすら無頓着となっている。
自分の計画にトドメを刺した人間の思惑に簡単に乗って殺し合いを促進するのも癪だ。
かと言って、他者と組んで殺し合いを破壊する気も起きない。
目的と呼べるのは一つだけ。
自身の計画を破綻に追いやった者達への復讐。

横島忠夫、美神令子、そしてキース・ブラック。

彼らを皆殺しにする。それだけが彼に残された目的。
だが、彼の見えない旅路はこの殺し合いの中だけでは終わらない。
ブラックを殺し、この殺し合いから脱出したところで果たして何が変わるのだろうか。
残っているのは神族たちに飼い殺しにされ、バランスを安定させるために生きる日々。
それが永遠に続くのだ。
あの魂の牢獄に囚われる地獄を脱出する術を彼は望む。

「いや、一つだけ手はある……」

アシュタロスの頭に浮かび上がるのは鉄色の巨人。
宇宙処理装置と並行して生み出した究極の魔体。
それを用いて全てを破壊尽くしてやろう、そんな考えが脳内を占めていく。
万全な状態ではない今、上位の神を全て滅ぼすには至らないのは彼自身が一番理解していた。
されども人魔、そして神に大打撃を与えることは可能だろう。
そして、そこまですれば天界も彼の死を認めるはずだ。

「私が死ぬためにどれだけの犠牲が出るのだろうな」

どこか寂しげな声で呟く。
彼の"自殺”には"成果”が必要だ。
踏みにじりたくはない。しかし、踏みにじざるを得ない。
あの日、親愛なる部下に告げたように、彼はどんなことをしてでも『魂の牢獄』から抜け出すと誓った。
だから彼は躊躇なく行動に移せる。
何千、何万、何億の命を消し去ることになろうとも、彼には迷いなど無い。

「……まずは80人か」

目的が決まってからの決断は早かった。
早速魔体へとコンタクトをはかるも、応答はない。
考えられる可能性は一つ。キース・ブラックによる何らかの妨害が行われている事。
ならば答えも一つ。
この殺し合いで優勝し、ブラックを殺し、盛大な心中を行う。
脱出に向けて動くのも悪くはないと思ったが、逃亡の可能性を考慮すればこちらの方が確実だ。
殺し合いに優勝さえすれば、なんらかの形でコンタクトは取ってくるだろう。
そこでゆっくりと相手をしてやればいい。
相手の思惑が何であれ、真正面からねじ伏せる。
それだけの力を持っていると彼は自負していた。
気に食わない部分もありはすれども、長年の目的からすればその程度の苛立ちは取るに足りぬ。
ただ、一つだけ心残りなのは。

「結局、私の負けで幕は降りるのか」

結局、彼は運命に勝利することは出来なかった。
辛うじて望みは果たせそうなものの、それは彼にとってのベストではない。
どこまでも悪役を演じるしか無いことを再認識させられ、気分が落ち込んだ。
生きようが、滅びようと抗おうが、自分は邪悪な存在として宇宙の意志のままに踊り続けなければならない。
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるも、それもここで終わりだと自分に言い聞かせ気分を落ち着けた。

「やられたよ。まさかここまで徹底して悪役にされるとは思わなかった」

僅かに苦笑を浮かべた後、表情を引き締める。

「すまんなベスパ」

もっとも忠実であった部下に対して謝罪の言葉を告げた。
この殺し合いの場において彼女が呼ばれなかった事に僅かに安堵する。
しかし、彼女がこの場に呼ばれていたとしても彼は彼女を迷いなく殺すだろう。
もはや彼の"自殺”は止まらない。


人類を、神を、魔族を、妖を。

全てを滅ぼさんと幕を開けたアシュタロス最後の舞台。

その前座が、プログラムの参加者を巻き込んでこれより始まる。

主演を務めるのは死にたがりの魔人。

どこまでも後ろ向きな目的/どこまでも前向きな目的。

目指すものの為、"世界”の道化が舞台で踊る。


【C-3 西部/一日目 深夜】
【アシュタロス】
[時間軸]:横島がエネルギー結晶体を破壊する直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3
[基本方針]:優勝し、ブラックも殺す。滅びたい。


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GAME START アシュタロス 050:歯車が噛み合わない






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