記憶~リメンブランス~ ◆imaTwclStk
「……姉ちゃんは、俺の事を知ってるって事は
あのブラックとかいう“悪もん”の兄妹なのか?」
あのブラックとかいう“悪もん”の兄妹なのか?」
蒼月潮の私に対しての質問の第一声はそれだった。
“悪い”、か……定義としては正に間違ってはいないと思う。
そう、兄…キース・ブラックが始めたこのプログラムは彼らからすれば
一方的かつ、唐突に始められた事なのだからこれは仕方が無い事だ。
私達や高槻達オリジナルARMSのように最初から
運命の内側に閉じ込められていた人間とは違うのだから……
“悪い”、か……定義としては正に間違ってはいないと思う。
そう、兄…キース・ブラックが始めたこのプログラムは彼らからすれば
一方的かつ、唐突に始められた事なのだからこれは仕方が無い事だ。
私達や高槻達オリジナルARMSのように最初から
運命の内側に閉じ込められていた人間とは違うのだから……
「その質問の答えは『YES』よ、蒼月潮。
それを知ったらあなたはどうするの?」
それを知ったらあなたはどうするの?」
兄の真意を知らずに“悪い”と認める事に逡巡はあったけれど、
敢えて包み隠さずに真実を述べる。
敢えて包み隠さずに真実を述べる。
「……だとしたら、俺は姉ちゃんを許せない」
……やはり、そうだろうな。
私達の道は既に許されざる道なのは分かっていた。
私達の道は既に許されざる道なのは分かっていた。
「さっきまでは、そう思ってた!」
えっ?
「俺には姉ちゃんを憎めそうには無いよ。
……だって、姉ちゃん哀しそうだから」
……だって、姉ちゃん哀しそうだから」
『私の盲いた目に写るのは、傷ついて泣いている小さな女の子だけ…』
ママ・マリアの言葉。
何故、今になって思い出してしまうのか。
意思の込められた力強い眼差しで私を見つめる少年に
先程まで話をしていた新宮隼人の、
オリジナルARMSである少年達の姿が重なる。
何故、今になって思い出してしまうのか。
意思の込められた力強い眼差しで私を見つめる少年に
先程まで話をしていた新宮隼人の、
オリジナルARMSである少年達の姿が重なる。
「……おかけなさい、蒼月潮。
今、お茶を淹れるわ」
今、お茶を淹れるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最初はさ、あのブラックとかいう奴と同じ顔した姉ちゃんだから、
思わず警戒しちゃってたけど。
俺がこのバイオレットっていう姉ちゃんに
あのブラックと『家族』なのかどうか聞いた時に
本当に一瞬だけ見せた哀しそうな表情に
そういう疑問は吹っ飛んじまった。
悪い人だったら、あんな哀しそうな顔はしない。
それに女の人を哀しませるのは俺の主義に反するからよ!
思わず警戒しちゃってたけど。
俺がこのバイオレットっていう姉ちゃんに
あのブラックと『家族』なのかどうか聞いた時に
本当に一瞬だけ見せた哀しそうな表情に
そういう疑問は吹っ飛んじまった。
悪い人だったら、あんな哀しそうな顔はしない。
それに女の人を哀しませるのは俺の主義に反するからよ!
でもさ……
「如何したの、蒼月潮。
ダージリンは苦手?」
ダージリンは苦手?」
こういうのは苦手なんだってばよぉ~~!!
「…い、頂きます」
このバイオレットっていう姉ちゃんは
顔はあのブラックにそっくりなのに
何ていうか大人っぽいっていうか落ち着いてるっていうのか、
それに近くで見ると綺麗な人だったから
何か無闇に緊張しちまうよぉ~!
俺の周りだと麻子とか真由子みたいに
落ち着かない奴らばっかりだったから、
この手の人は苦手なんだよなぁ……
小夜さんとかとも雰囲気違うくて、
本当に大人の女って感じの人だよな。
顔はあのブラックにそっくりなのに
何ていうか大人っぽいっていうか落ち着いてるっていうのか、
それに近くで見ると綺麗な人だったから
何か無闇に緊張しちまうよぉ~!
俺の周りだと麻子とか真由子みたいに
落ち着かない奴らばっかりだったから、
この手の人は苦手なんだよなぁ……
小夜さんとかとも雰囲気違うくて、
本当に大人の女って感じの人だよな。
「…そのように繁々と見つめられても
お茶以外は何も出す事は出来ないぞ?」
お茶以外は何も出す事は出来ないぞ?」
微かに微笑むその顔に思わずどきんとしちまった。
やりずらいなぁ~。
とらの奴だけには絶対に見られたくないな、今の俺を。
やりずらいなぁ~。
とらの奴だけには絶対に見られたくないな、今の俺を。
『ひひひひひ!! 潮の餓鬼がいっちょまえに色気づいて緊張してやがる!』
うん、絶対見られたくない。
「……そ、そのよ、バイオレットの姉ちゃんは
この『プログラム・バトルロワイアル』って言ったよな、
これの目的を知らないってのは本当なんだよな?」
この『プログラム・バトルロワイアル』って言ったよな、
これの目的を知らないってのは本当なんだよな?」
お茶を淹れてくれている間に
この姉ちゃんが俺に教えてくれた事。
ブラック以外の他の兄弟。
姉ちゃんの良く知ってる高槻っていう、
俺より少し年上の人物達の事。
それとこの『プログラム・バトルロワイアル』……
色々と気になる事は他にもいっぱいあったけど
俺じゃ、いまいち理解できそうに無いから
分かる範囲で教えて貰った事。
この姉ちゃんが俺に教えてくれた事。
ブラック以外の他の兄弟。
姉ちゃんの良く知ってる高槻っていう、
俺より少し年上の人物達の事。
それとこの『プログラム・バトルロワイアル』……
色々と気になる事は他にもいっぱいあったけど
俺じゃ、いまいち理解できそうに無いから
分かる範囲で教えて貰った事。
「……えぇ、私もこのプログラムに於いては、
あなた達と同じくこのプログラムを進める駒の一つでしかないわ」
あなた達と同じくこのプログラムを進める駒の一つでしかないわ」
「それって姉ちゃんも他の兄弟も家族なのにみんな殺しあえって事だろ?
そんなの……そんなの俺は嫌だ!」
そんなの……そんなの俺は嫌だ!」
目的も知らない。
知った事じゃない!
知った事じゃない!
「……決めた!」
姉ちゃんに淹れて貰ったお茶を一気に飲み干す。
ちょっと熱かったけど、そんなの関係無い!
ちょっと熱かったけど、そんなの関係無い!
「このお茶のお礼。
俺はこのプログラムをぶっ潰す!
それであのブラックを一発殴った後に
姉ちゃんと姉ちゃんの兄弟に謝らせる!」
俺はこのプログラムをぶっ潰す!
それであのブラックを一発殴った後に
姉ちゃんと姉ちゃんの兄弟に謝らせる!」
元々、このプログラムが気に食わなかった事もあったけど、
女を泣かせるようなのは更に駄目だ。
この姉ちゃんはそんな態度は俺には全然見せようとしないけど
話す表情はとても苦しそうだった。
それだけで俺には充分!
このプログラムをぶっ潰す明確な理由が一つ増えただけさ。
女を泣かせるようなのは更に駄目だ。
この姉ちゃんはそんな態度は俺には全然見せようとしないけど
話す表情はとても苦しそうだった。
それだけで俺には充分!
このプログラムをぶっ潰す明確な理由が一つ増えただけさ。
「……初対面のそれも黒幕の兄妹に対して君が命を張る必要はあるのか?
私が嘘をついている可能性もあるのだぞ?」
私が嘘をついている可能性もあるのだぞ?」
「ある!」
もう心に決めた。
「それに嘘をつく人はそんな哀しそうにしないよ」
俺が言い切るのと同時に目の前の机にごとりと何かが置かれる。
それは一つのベルトに収められた複数のナイフ。
それは一つのベルトに収められた複数のナイフ。
「お茶に付き合ってもらったお礼よ。
それだけでは身を守りきれないでしょう?
構わずに持っていきなさい」
それだけでは身を守りきれないでしょう?
構わずに持っていきなさい」
俺の持ってる即席の槍を眺めながら、
バイオレットの姉ちゃんは静かにそう言った。
バイオレットの姉ちゃんは静かにそう言った。
「えっ、じゃあ姉ちゃんは如何するのさ!
もし悪い奴に襲われたら……」
もし悪い奴に襲われたら……」
「あなたには一つ隠し事をさせて貰っているけれど、私なら平気よ。
自分の身を守るには余り余る程の力を持っているわ」
自分の身を守るには余り余る程の力を持っているわ」
顔色を変えずに真剣に俺を見つめる姉ちゃんに俺も覚悟を決める。
「分かった、じゃあこれは貰っていくよ。
……姉ちゃんはこれから如何するつもりなんだい?」
……姉ちゃんはこれから如何するつもりなんだい?」
「暫くはこのままここに居るつもりよ。
こうして、来訪者にお茶を振舞うだけ」
こうして、来訪者にお茶を振舞うだけ」
「そうか……じゃあ、俺もう行くよ!
放っとくと危ない奴とか居るからさ。
俺、お茶とかは良くわかんねぇけど、
姉ちゃんのお茶、美味しかったよ!」
放っとくと危ない奴とか居るからさ。
俺、お茶とかは良くわかんねぇけど、
姉ちゃんのお茶、美味しかったよ!」
姉ちゃんから貰ったベルトを
しっかりと巻きつけて席を立つ。
しっかりと巻きつけて席を立つ。
「新宮隼人を探しなさい。
まだ近くに居る筈、彼はあなたの力になるわ」
まだ近くに居る筈、彼はあなたの力になるわ」
バイオレットの姉ちゃんはそれだけを教えてくれると微かに笑って俺を見送る。
そうして出口へと向かう途中で大事な事を思い出した。
バイオレットの姉ちゃんに振り返り、
俺は言っておきたかった事を言う。
そうして出口へと向かう途中で大事な事を思い出した。
バイオレットの姉ちゃんに振り返り、
俺は言っておきたかった事を言う。
「バイオレットの姉ちゃん、死んじゃ嫌だからな!」
【E-5 喫茶店/一日目 黎明】
【蒼月潮】
[時間軸]:26巻第42章『三日月の夜』直後。
[状態]:健康
[装備]:制服、即席槍(ジャバウォックの爪@ARMS+操り糸@からくりサーカス+神通棍@GS美神)、
ヴィルマのナイフ(6本)@からくりサーカス
[道具]:基本支給品一式、操り糸(3/4)@からくりサーカス
[基本方針]:仲間を集めて殺し合いを止める。とら? 勝手にしろィ!
※バイオレットからプログラムについて他のキースシリーズ、
オリジナルARMS勢の情報を貰いました。
但し、ARMSについては教えて貰っていません。
[時間軸]:26巻第42章『三日月の夜』直後。
[状態]:健康
[装備]:制服、即席槍(ジャバウォックの爪@ARMS+操り糸@からくりサーカス+神通棍@GS美神)、
ヴィルマのナイフ(6本)@からくりサーカス
[道具]:基本支給品一式、操り糸(3/4)@からくりサーカス
[基本方針]:仲間を集めて殺し合いを止める。とら? 勝手にしろィ!
※バイオレットからプログラムについて他のキースシリーズ、
オリジナルARMS勢の情報を貰いました。
但し、ARMSについては教えて貰っていません。
「死んじゃ嫌……か。
変わった子だな……」
変わった子だな……」
蒼月潮には最後まで言えなかった事。
この身が人なのか兵器なのかすらも曖昧な
造られたものに過ぎないという事。
その迷いゆえに最後までARMSについて教える事は出来なかった。
これは致命的な間違いだったのかもしれない。
だが、蒼月潮は私達の事を最後まで『家族』と表現した。
私は確かに兄弟達のことを愛している。
だが、『家族』と表現するには余りにも歪なその関係を
蒼月潮はついぞ疑ってはいなかったのだ。
私達を“ヒト”だと思っているのだ。
この身が人なのか兵器なのかすらも曖昧な
造られたものに過ぎないという事。
その迷いゆえに最後までARMSについて教える事は出来なかった。
これは致命的な間違いだったのかもしれない。
だが、蒼月潮は私達の事を最後まで『家族』と表現した。
私は確かに兄弟達のことを愛している。
だが、『家族』と表現するには余りにも歪なその関係を
蒼月潮はついぞ疑ってはいなかったのだ。
私達を“ヒト”だと思っているのだ。
「……この身の真実を告げたら、
如何捉えられていたのだろうな?」
如何捉えられていたのだろうな?」
恐怖される事しか無かった。
殺す事しか教わらなかった。
父も母も無く、試験管の中で産まれた私は……
プログラムに組み込まれただけの存在でしかないのではないのか?
殺す事しか教わらなかった。
父も母も無く、試験管の中で産まれた私は……
プログラムに組み込まれただけの存在でしかないのではないのか?
『ヒトは、生まれつきヒトなんじゃない……』
ママ・マリア。
私は……
私は……
『自分で“ヒト”になってゆくものだよ……』
私はどうすればいいのだ……
【E-5 喫茶店/一日目 黎明】
【キース・バイオレット】
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にてオリジナルARMSたちがカリヨンタワーに乗り込む直前。
[状態]:健康、共振波を放出中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~2(未確認)
[基本方針]:キース・バイオレットとして行動する……? ひとまず喫茶店に留まり、入ってきた参加者に対応。
※参加者の情報をブラックから聞かされています。
※ある程度近づかなければ、ARMSの共振を感知できないようです。完全体となった場合は不明。
[時間軸]:15巻NO.8『要塞~フォートレス~』にてオリジナルARMSたちがカリヨンタワーに乗り込む直前。
[状態]:健康、共振波を放出中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~2(未確認)
[基本方針]:キース・バイオレットとして行動する……? ひとまず喫茶店に留まり、入ってきた参加者に対応。
※参加者の情報をブラックから聞かされています。
※ある程度近づかなければ、ARMSの共振を感知できないようです。完全体となった場合は不明。
【ヴィルマのナイフ@からくりサーカス】
ホルスター付のベルトに収められた左右3本ずつの計6本のナイフ。
エレオノールの血が微量に付着しており、
自動人形に対して自壊作用を起こさせる事が出来る以外は普通の投げナイフ。
ホルスター付のベルトに収められた左右3本ずつの計6本のナイフ。
エレオノールの血が微量に付着しており、
自動人形に対して自壊作用を起こさせる事が出来る以外は普通の投げナイフ。
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019-b:うしおと――/――ととら | 蒼月潮 | 069:モーニングティーを飲みに行こう |
キース・バイオレット |