どじふんじゃった!(後編)
◆ ◆ ◆
ゼオンは空中に滞空している。
マントを回し、浮力を生んでいるのだ。
マントの使い方の一つだった。
マントを回し、浮力を生んでいるのだ。
マントの使い方の一つだった。
「ぐっ……!」
ゼオンの腹部に血の染みが広がる。
とらに体を抉られた場所だ。
それほど深い傷ではないが、万全に動ける程軽いものでもない。
見下ろせば、四つに分かれたとらの体が海に浮いている。
切り刻んでも、分断した体すら意のままに操る魔物であったが、その体が動きだす気配はない。
首輪が爆発したせいだろう。
とらに体を抉られた場所だ。
それほど深い傷ではないが、万全に動ける程軽いものでもない。
見下ろせば、四つに分かれたとらの体が海に浮いている。
切り刻んでも、分断した体すら意のままに操る魔物であったが、その体が動きだす気配はない。
首輪が爆発したせいだろう。
首輪に何か細工が施されているのか、それとも首を切られれば流石のとらでも絶命するのか。
それをゼオンには判断することはできない。
だが、一つだけわかることはある。
それをゼオンには判断することはできない。
だが、一つだけわかることはある。
ゼオンは自身に嵌められている首輪を擦る(さする)。
ここを狙われれば、この首輪そのものに攻撃を受ければ、それは首輪の爆発に繋がり、それは自身の死に繋がる。
腹立たしい。
自分の命が、このようなちっぽけな首輪に握られていることが腹立たしい。
ここを狙われれば、この首輪そのものに攻撃を受ければ、それは首輪の爆発に繋がり、それは自身の死に繋がる。
腹立たしい。
自分の命が、このようなちっぽけな首輪に握られていることが腹立たしい。
このようなもの今すぐにでも外してしまいたいが、無理に壊せば爆発するのは先程目撃している。
ゼオンは視線を動かし、海に浮かぶそれを見つめる。
それには首輪が付いている。
この首輪と同じものだ。
いや、もしかしたら参加者に応じて何か差異があるかもしれない。
それでも、首輪を外すための足がかりにはなるだろう。
ゼオンは高度を落としそれに近づく。
首輪を嵌めた、右腕と両足を失った染井芳野に近づいて行く。
ゼオンは視線を動かし、海に浮かぶそれを見つめる。
それには首輪が付いている。
この首輪と同じものだ。
いや、もしかしたら参加者に応じて何か差異があるかもしれない。
それでも、首輪を外すための足がかりにはなるだろう。
ゼオンは高度を落としそれに近づく。
首輪を嵌めた、右腕と両足を失った染井芳野に近づいて行く。
◆ ◆ ◆
モチノキ港にある倉庫群。
近くには豪華客船が停泊し、周囲に人の気配はない。
そのコンクリートで出来た港の地面に、ゼオンは芳野を仰向けに転がした。
近くには豪華客船が停泊し、周囲に人の気配はない。
そのコンクリートで出来た港の地面に、ゼオンは芳野を仰向けに転がした。
魔本ととらのリュック、そして芳野のリュックは回収した後、マントを使って空を飛び、
芳野を抱えて一番近い陸地であるここまで運んで来たのだ。
海水で濡れていたゼオンの服は、マントの回転により乾いてしまっていた。
芳野を抱えて一番近い陸地であるここまで運んで来たのだ。
海水で濡れていたゼオンの服は、マントの回転により乾いてしまっていた。
地面に仰向けになっている芳野の胸は、小さく上下している。
息は浅いが、まだ生きていた。
当初は首を切り落とし首輪を回収するつもりであったが、生きているのなら他に使い道がある。
ゼオンの右腕には、宝玉の付いた装身具が三つ付けられていた。
手には獣の槍が握られている。
ゼオンは、海水で濡れ芳野の体に張り付いてしまっている制服を、胸部が見えるまで捲り上げた(まくりあげた)。
そして、その小さく上下を繰り返す胸部。心臓に近い部分に向けて、獣の槍をゆっくりと突き刺す。
槍の穂先はゆっくりと芳野の体に沈んで行く。
息は浅いが、まだ生きていた。
当初は首を切り落とし首輪を回収するつもりであったが、生きているのなら他に使い道がある。
ゼオンの右腕には、宝玉の付いた装身具が三つ付けられていた。
手には獣の槍が握られている。
ゼオンは、海水で濡れ芳野の体に張り付いてしまっている制服を、胸部が見えるまで捲り上げた(まくりあげた)。
そして、その小さく上下を繰り返す胸部。心臓に近い部分に向けて、獣の槍をゆっくりと突き刺す。
槍の穂先はゆっくりと芳野の体に沈んで行く。
しかし、手応えがない。
槍を引き抜いてみれば、芳野の体には傷一つ付いてはいなかった。
槍を引き抜いてみれば、芳野の体には傷一つ付いてはいなかった。
「使えんな」
妖怪に対して絶大な力を発揮すると説明書にあったが、人間には効果がないどころか傷一つ付けられない。
妖怪とは空想の産物だろうに、いや、あの『とら』が妖怪だったのだろうか。
雷撃を発する時も、火炎を吐く時も、とらという魔物は呪文を唱える事はなかった。
魔物ならばあり得ないことだ。
妖怪とは空想の産物だろうに、いや、あの『とら』が妖怪だったのだろうか。
雷撃を発する時も、火炎を吐く時も、とらという魔物は呪文を唱える事はなかった。
魔物ならばあり得ないことだ。
この槍が妖怪に対して作られた武器だとして、では魔物に対してはどうなのだろうか。
今この場には自分しか魔物は居ない。
そんな自分に傷を付けるような実験をする気はない。
たとえ魔物との交戦中だとしても、こんな不確かな武器を使うことはないだろう。
人間や無機物に対するように、武器としての本分を果たせない可能性がある物を使うつもりはないからだ。
ゼオンは獣の槍を蔵王に仕舞うと、代わりに金糸雀という剣を取り出した。
残る刃物はこれしかない。
ソルド・ザケルガを遣うのは心の力の無駄遣いだ。
今この場には自分しか魔物は居ない。
そんな自分に傷を付けるような実験をする気はない。
たとえ魔物との交戦中だとしても、こんな不確かな武器を使うことはないだろう。
人間や無機物に対するように、武器としての本分を果たせない可能性がある物を使うつもりはないからだ。
ゼオンは獣の槍を蔵王に仕舞うと、代わりに金糸雀という剣を取り出した。
残る刃物はこれしかない。
ソルド・ザケルガを遣うのは心の力の無駄遣いだ。
ゼオンは金糸雀で芳野の胸部を切り裂いた。
内臓を傷つけていないとはいえ、体内にまで達する深い傷だ。
傷口からは止めどない血液が流れ落ちている。
右腕や脚部から大量の血液が流れ出ていたこともあって、芳野の体からは血の気が引き、肌の色が白くなった。
内臓を傷つけていないとはいえ、体内にまで達する深い傷だ。
傷口からは止めどない血液が流れ落ちている。
右腕や脚部から大量の血液が流れ出ていたこともあって、芳野の体からは血の気が引き、肌の色が白くなった。
ゼオンは素早い手つきで芳野の傷口を開くと、その中に何かを押し込める。
そして傷口から手を引くと、芳野の首の血管へナノマシンを注入した。
手にはべっとりと芳野の血がついてしまっているが、後で海水で洗い落とせば良いだろう。
芳野にナノマシンを注入すると、心臓に近い位置に付けられた傷口が見る見る内に塞がって行く。
それだけではない。
突然右腕や両足の傷口から金属とも有機物とも取れない物質が飛び出し、失われた手足を形作り始めたのだ。
その硬質の右腕と両足は自身の形を落ち付かせると、罅割れた(ひびわれた)表面が次第に有機的な質感になって行き、
最後には肌色に変わってしまった。
本物の手足と寸分違わぬ(たがわぬ)、罅割れも傷もない綺麗な手足がそこにあった。
芳野の顔色も、血の気が戻ったように健康的な色を取り戻している。
呼吸も、ゆっくりではあるが深いものへとなっていた。
そして傷口から手を引くと、芳野の首の血管へナノマシンを注入した。
手にはべっとりと芳野の血がついてしまっているが、後で海水で洗い落とせば良いだろう。
芳野にナノマシンを注入すると、心臓に近い位置に付けられた傷口が見る見る内に塞がって行く。
それだけではない。
突然右腕や両足の傷口から金属とも有機物とも取れない物質が飛び出し、失われた手足を形作り始めたのだ。
その硬質の右腕と両足は自身の形を落ち付かせると、罅割れた(ひびわれた)表面が次第に有機的な質感になって行き、
最後には肌色に変わってしまった。
本物の手足と寸分違わぬ(たがわぬ)、罅割れも傷もない綺麗な手足がそこにあった。
芳野の顔色も、血の気が戻ったように健康的な色を取り戻している。
呼吸も、ゆっくりではあるが深いものへとなっていた。
それを確認したゼオンは、装身具を身に付けた右手を芳野の頭部に当てる。
魔導具『神慮思考(しんりょしこう)』。
ゼオンの右腕に装着されているのは記憶を操作する魔導具である。
この魔導具で操作できる記憶は、神慮思考の使用者も知っている記憶でなくてはならないが、問題はない。
何故ならば、ゼオンは相手の記憶を奪う技を会得しているからだ。
魔導具『神慮思考(しんりょしこう)』。
ゼオンの右腕に装着されているのは記憶を操作する魔導具である。
この魔導具で操作できる記憶は、神慮思考の使用者も知っている記憶でなくてはならないが、問題はない。
何故ならば、ゼオンは相手の記憶を奪う技を会得しているからだ。
(……記憶を奪うのに時間がかかるな)
制限のせいか、ガッシュから記憶を奪った時よりも時間がかかっている。
記憶を完全に奪い終えるまでに意識を取り戻した場合、何か術を打つべきか。
ゼオンの左手には魔本が握られている。
対応は即座にできるだろう。
だが、そんな考えは杞憂に終わった。
記憶の奪取は無事完了し、この女は自分の名前以外何も覚えていない状態になっている。
この後は簡単だ。
神慮思考を使い、主従関係にあるという偽りの記憶を植え付ければ良い。
そうすれば、この女は便利な手駒と化し、心の力を使える道具となるのだ。
ゼオンは神慮思考を芳野に翳し(かざし)、真っ白なノートに文字を書き加えるように新たな記憶を植え付けて行く。
絶対に裏切らず絶対に逆らわない。
便利な傀儡となるように。
記憶を完全に奪い終えるまでに意識を取り戻した場合、何か術を打つべきか。
ゼオンの左手には魔本が握られている。
対応は即座にできるだろう。
だが、そんな考えは杞憂に終わった。
記憶の奪取は無事完了し、この女は自分の名前以外何も覚えていない状態になっている。
この後は簡単だ。
神慮思考を使い、主従関係にあるという偽りの記憶を植え付ければ良い。
そうすれば、この女は便利な手駒と化し、心の力を使える道具となるのだ。
ゼオンは神慮思考を芳野に翳し(かざし)、真っ白なノートに文字を書き加えるように新たな記憶を植え付けて行く。
絶対に裏切らず絶対に逆らわない。
便利な傀儡となるように。
◆ ◆ ◆
「お前の名は?」
「私の名前は染井芳野です」
「お前は俺の何だ?」
「私はゼオン様の忠実な僕です」
「お前の役目はわかっているな?」
「はい、ゼオン様が優勝するように全力でサポートするのが私の役目です」
「それで良い」
ゼオンは神慮思考を使い、芳野に記憶を植え付けた。
自分はゼオンの忠実な僕であり、ゼオンに逆らわずゼオンを裏切らない。
ここは殺し合いの場であり、自分の役目はゼオンを優勝させることにある。
他にも、自分の命よりもゼオンを優先する等、ゼオンに都合の良い記憶を挿入したのだ。
自分はゼオンの忠実な僕であり、ゼオンに逆らわずゼオンを裏切らない。
ここは殺し合いの場であり、自分の役目はゼオンを優勝させることにある。
他にも、自分の命よりもゼオンを優先する等、ゼオンに都合の良い記憶を挿入したのだ。
本来、ゼオンの技にて記憶を奪われようと元の性格が変わることはないが、
神慮思考に植え付けられた偽の記憶によって、ゼオンに対しては絶対に服従するようになってしまっている。
神慮思考による記憶の改竄も時間のかかるものなのだが、記憶を全て失くしているという特殊な条件のため、
神慮思考はすんなりとその役目を全うしたのだ。
今の芳野は白紙のノートである。
そのノートにどれだけ都合の良いことを書き込もうと、矛盾する事柄はどこにも記載されていないのだ。
ゼオンだからこそできた荒業であった。
神慮思考に植え付けられた偽の記憶によって、ゼオンに対しては絶対に服従するようになってしまっている。
神慮思考による記憶の改竄も時間のかかるものなのだが、記憶を全て失くしているという特殊な条件のため、
神慮思考はすんなりとその役目を全うしたのだ。
今の芳野は白紙のノートである。
そのノートにどれだけ都合の良いことを書き込もうと、矛盾する事柄はどこにも記載されていないのだ。
ゼオンだからこそできた荒業であった。
「芳野、お前はどの程度の力が出せる?」
「やってみます」
言うと、芳野の右腕と両脚が変質した。
皮膚が金属のように硬くなり、禍禍しい姿に変わってゆく。
ARMSと呼ばれる力だ。
芳野がその右腕を港の先へ向けると、右腕が急速に伸び十メートルは離れていたテトラポットの一部を破壊した。
脚に力を込めれば、二階建ての建物程の高さまで飛び上がることができた。
走力も常人より速い。
皮膚が金属のように硬くなり、禍禍しい姿に変わってゆく。
ARMSと呼ばれる力だ。
芳野がその右腕を港の先へ向けると、右腕が急速に伸び十メートルは離れていたテトラポットの一部を破壊した。
脚に力を込めれば、二階建ての建物程の高さまで飛び上がることができた。
走力も常人より速い。
普通の人間よりは動き回れる分使えるな、と芳野の動きを見てゼオンは思った。
ゼオンが芳野の体に埋め込んだ物はモデュレイテッドARMSと呼ばれる量産型ARMSの核である。
説明書には、これを心臓付近の体内に入れればARMSの力を得ることができるとあったのだ。
だがゼオンはこれを自身に使うつもりはなかった。
己の力のみで勝ち上がってこそ、これまでの血の滲むような日々が報われるというもの。
ARMS等というわけのわからぬものを自分に使うなどもっての外であった。
ゼオンが芳野の体に埋め込んだ物はモデュレイテッドARMSと呼ばれる量産型ARMSの核である。
説明書には、これを心臓付近の体内に入れればARMSの力を得ることができるとあったのだ。
だがゼオンはこれを自身に使うつもりはなかった。
己の力のみで勝ち上がってこそ、これまでの血の滲むような日々が報われるというもの。
ARMS等というわけのわからぬものを自分に使うなどもっての外であった。
だが、他人を利用するのは別である。
虫の息であった芳野を実験台に使ってみれば、ある程度は使える駒が手に入った。
それだけの事だった。
虫の息であった芳野を実験台に使ってみれば、ある程度は使える駒が手に入った。
それだけの事だった。
「そういえばARMSは電気に弱いらしいな」
ARMSはナノマシンの集合体で、電気的な攻撃によって機能が一時的に麻痺してしまう。
両脚がARMSの芳野が電撃を受ければ、しばらくの間脚がまともに動かず行動がかなり制限されてしまうだろう。
それでは同じ雷撃の術を遣うガッシュと戦う際、致命的な弱点となってしまう。
ゼオンの許へと戻ってきた芳野を見やると、ゼオンは右手を翳しザケルを唱えた。
放たれた雷撃は空気を走り、芳野に直撃する。
両脚がARMSの芳野が電撃を受ければ、しばらくの間脚がまともに動かず行動がかなり制限されてしまうだろう。
それでは同じ雷撃の術を遣うガッシュと戦う際、致命的な弱点となってしまう。
ゼオンの許へと戻ってきた芳野を見やると、ゼオンは右手を翳しザケルを唱えた。
放たれた雷撃は空気を走り、芳野に直撃する。
「きゃっ……あっ……!」
「それ程強くはしていない。それで電撃への耐性を付けておけ。ついでに服も乾いただろう」
「あ……りがとう、ございます」
芳野の制服からは、アイロン掛けが終わったように湯気が立ち上っている。
海水でずぶ濡れだった制服が、ゼオンのザケルを浴びて蒸発したのだ。
芳野は電撃を浴びたことにより、蹲って(うずくまって)しまっている。
回復するまでにはしばらく時間が必要だろう。
これから倉庫に向かうつもりなのだがな、と倉庫の方へ振り向いた時だった。
夜空に巨大な花が咲き、間を置いて爆発音が届いた。
花火である。
一体どこの馬鹿があんなものを打ち上げたのか。
仲間を募るためか、それとも敵を誘き寄せる(おびきよせる)ためか。
どちらにしろ、参加者を集める目的で上げられたものだろう。
まさか無意味に打ち上げたわけでもあるまい。
誘いに乗ってやっても良いが……。
海水でずぶ濡れだった制服が、ゼオンのザケルを浴びて蒸発したのだ。
芳野は電撃を浴びたことにより、蹲って(うずくまって)しまっている。
回復するまでにはしばらく時間が必要だろう。
これから倉庫に向かうつもりなのだがな、と倉庫の方へ振り向いた時だった。
夜空に巨大な花が咲き、間を置いて爆発音が届いた。
花火である。
一体どこの馬鹿があんなものを打ち上げたのか。
仲間を募るためか、それとも敵を誘き寄せる(おびきよせる)ためか。
どちらにしろ、参加者を集める目的で上げられたものだろう。
まさか無意味に打ち上げたわけでもあるまい。
誘いに乗ってやっても良いが……。
「……………」
ゼオンは腹部を抑える。
血は止まっているが、今激しい動きをすれば傷口はまた開くだろう。
右腕も表面が焼かれてしまっていた。
あの花火に集まる参加者が一人や二人である可能性は低い。
大勢を相手取るならば、やはり万全の状態が望ましい。
血は止まっているが、今激しい動きをすれば傷口はまた開くだろう。
右腕も表面が焼かれてしまっていた。
あの花火に集まる参加者が一人や二人である可能性は低い。
大勢を相手取るならば、やはり万全の状態が望ましい。
「……もう良いだろう。早くこちらへ来い」
芳野にそう告げると、ゼオンは倉庫に向かって歩き出した。
その後ろを、芳野はふらついた足取りで付いて行く。
まだ回復などできてはいないが、ゼオンが命じた事には従わなければならない。
電撃により機能が麻痺してしまっている両脚を無理矢理引き摺りながら、芳野はゼオンの後を付いて行った。
その後ろを、芳野はふらついた足取りで付いて行く。
まだ回復などできてはいないが、ゼオンが命じた事には従わなければならない。
電撃により機能が麻痺してしまっている両脚を無理矢理引き摺りながら、芳野はゼオンの後を付いて行った。
倉庫群に着いたゼオンは、倉庫の一つへと入っていく。
中に何者の気配も無いのを確認すると、倉庫内の一角にゼオンは座り込んだ。
数分遅れて、ランタンを灯した芳野が倉庫に入ってくる。
電気が付いていないため、頼りになる明りは高窓から入る月明かりと、手持ちのランタンだけだ。
中に何者の気配も無いのを確認すると、倉庫内の一角にゼオンは座り込んだ。
数分遅れて、ランタンを灯した芳野が倉庫に入ってくる。
電気が付いていないため、頼りになる明りは高窓から入る月明かりと、手持ちのランタンだけだ。
「ゼオン様……どこに……」
「ここだ。ランタンは消せ。照明は点けるでないぞ」
「は、はい」
芳野はランタンの灯りを消すと、高窓から差し込む月明かりだけを頼りにゼオンへと近づいて行った。
ここはモチノキ港から降ろされる積み荷を置くための倉庫だろうか。
倉庫内にはコンテナやフォークリフト、積み上げられた段ボールがあった。
ここはモチノキ港から降ろされる積み荷を置くための倉庫だろうか。
倉庫内にはコンテナやフォークリフト、積み上げられた段ボールがあった。
「俺はしばらく休む。他の参加者が襲って来た等、何か異常があれば俺を起こせ。それまでは物音一つ立てることないようにしろ」
「わかりました」
芳野に命令を伝え終えると、ゼオンは壁に凭れ掛り(もたれかかり)、座った姿勢のまま眠りに落ちた。
起きる頃には傷も体力も回復していることだろう。
芳野はゼオンの寝顔をしばらく眺めてから、足音を立てないよう注意しながら移動し、『毛布』と書かれた段ボールを静かに開けた。
中から毛布を一枚取り出すと、再び注意深く移動しながら元の場所へと戻り、ゼオンに毛布をそっと掛ける。
起きる頃には傷も体力も回復していることだろう。
芳野はゼオンの寝顔をしばらく眺めてから、足音を立てないよう注意しながら移動し、『毛布』と書かれた段ボールを静かに開けた。
中から毛布を一枚取り出すと、再び注意深く移動しながら元の場所へと戻り、ゼオンに毛布をそっと掛ける。
その後、ゼオンの命令を実行すべく外へと移動した。
倉庫への入り口はドアが一つに、大きなシャッターが一つだ。
シャッターは開ければ大きな音がするはずなので、芳野は倉庫の側面にあるドアの前に立ち周囲を警戒している。
倉庫への入り口はドアが一つに、大きなシャッターが一つだ。
シャッターは開ければ大きな音がするはずなので、芳野は倉庫の側面にあるドアの前に立ち周囲を警戒している。
倉庫の屋根に上ればもっと広く周りを見渡せるだろうが、電撃の痺れがまだ抜けきってはいない。
これでは、ARMSの力を使ったとしても屋根に飛び上がることは無理そうだ。
これでは、ARMSの力を使ったとしても屋根に飛び上がることは無理そうだ。
裾の短くなったスカートが海風ではためく。
波の音と風の音を聞きながら、芳野は空を見上げた。
空には綺麗な三日月が浮かんでいた。
波の音と風の音を聞きながら、芳野は空を見上げた。
空には綺麗な三日月が浮かんでいた。
【染井芳野@スプリガン 生存確認】
【残り70名】
【残り70名】
【F-5 倉庫内/一日目 黎明】
【ゼオン・ベル】
[時間軸]:リオウ戦後、ガッシュの記憶を垣間見るより前
[状態]:疲労(大)、右腕に火傷、腹部に傷、睡眠中。
[装備]:ゼオンのマント、ゼオンの魔本@金色のガッシュ!!、神慮思考@烈火の炎
[道具]:基本支給品一式、獣の槍@うしおととら、金糸雀@金剛番長、携帯電話(とらの写真&動画)@出典不明 、
モデュレイテッドARMSのリミッター解除装置@ARMS
[基本方針]:殺し合いに優勝し、バオウをこの手に。
1:回復が終わったら倉庫を調べる。
[時間軸]:リオウ戦後、ガッシュの記憶を垣間見るより前
[状態]:疲労(大)、右腕に火傷、腹部に傷、睡眠中。
[装備]:ゼオンのマント、ゼオンの魔本@金色のガッシュ!!、神慮思考@烈火の炎
[道具]:基本支給品一式、獣の槍@うしおととら、金糸雀@金剛番長、携帯電話(とらの写真&動画)@出典不明 、
モデュレイテッドARMSのリミッター解除装置@ARMS
[基本方針]:殺し合いに優勝し、バオウをこの手に。
1:回復が終わったら倉庫を調べる。
※魔物の治癒力で回復中です。
※芳野ととらの使えそうなランダム支給品を全て奪いました。
※芳野ととらの使えそうなランダム支給品を全て奪いました。
【F-5 倉庫周辺/一日目 黎明】
【染井芳乃】
[時間軸]:9巻2話『獣人伝承2』以降、保存版文庫版収録の『GOLD RUSH』より前(=高校在学中)。
[状態]:疲労(小)、ザケル(弱)によるダメージ、モデュレイテッドARMS化、名前以外の記憶の喪失及び神慮思考による記憶の上書き
[装備]:制服(右腕の裾が無くなっている。スカートがミニスカ状態)、モデュレイテッドARMSの核(体内)@ARMS
[道具]:基本支給品一式×2、とらの毛数本@現地調達品、ジップロック×5@現地調達品、牛丼×2@うえきの法則
[基本方針]:ゼオン様の優勝を全力でサポート!
1:異常が無いか周囲を警戒する。何か異常があればゼオン様を起こす。
[時間軸]:9巻2話『獣人伝承2』以降、保存版文庫版収録の『GOLD RUSH』より前(=高校在学中)。
[状態]:疲労(小)、ザケル(弱)によるダメージ、モデュレイテッドARMS化、名前以外の記憶の喪失及び神慮思考による記憶の上書き
[装備]:制服(右腕の裾が無くなっている。スカートがミニスカ状態)、モデュレイテッドARMSの核(体内)@ARMS
[道具]:基本支給品一式×2、とらの毛数本@現地調達品、ジップロック×5@現地調達品、牛丼×2@うえきの法則
[基本方針]:ゼオン様の優勝を全力でサポート!
1:異常が無いか周囲を警戒する。何か異常があればゼオン様を起こす。
※ゼオン・ベルに名前以外の全ての記憶を奪われました。
※神慮思考によりゼオンの僕としての記憶を植え付けられました。
神慮思考の使用が止まればこの記憶が偽物であると気付くかもしれません。
※ナノマシンにより回復中です。
※神慮思考によりゼオンの僕としての記憶を植え付けられました。
神慮思考の使用が止まればこの記憶が偽物であると気付くかもしれません。
※ナノマシンにより回復中です。
※F-6の海上に染井芳野の右腕、右足、左足、とらの死体が浮かんでいます。
※F-6のテトラポットの一部が破壊されました。
※F-6の港のコンクリートの上には芳野の血痕が残されています。
※F-6のテトラポットの一部が破壊されました。
※F-6の港のコンクリートの上には芳野の血痕が残されています。
【神慮思考@烈火の炎】
ゼオン・ベルに支給された。
葵の持つ魔導具。
袖に装着する三つの宝玉で、対象の記憶を操作することができる。
但し
「その記憶を術者も知っていなければならない」
「操作許容に限界値が存在する」
「距離的な能力範囲限定」
等の制限がある。
集中的に操作を行えば、一人の人間の思考を根本から歪曲することも可能である。
神慮思考の使用をやめれば、強い記憶操作で無い限り記憶は元に戻る。
複数人を対象にすることもできるが、人数が増えると改竄の効力は弱くなる。
制限により「操作許容に限界値」と「距離的な能力範囲」が更に限定されている。
操作に要する時間も長くなっている。
制限により、強い記憶操作であっても神慮思考の使用が止まれば記憶が戻るかもしれません。
ゼオン・ベルに支給された。
葵の持つ魔導具。
袖に装着する三つの宝玉で、対象の記憶を操作することができる。
但し
「その記憶を術者も知っていなければならない」
「操作許容に限界値が存在する」
「距離的な能力範囲限定」
等の制限がある。
集中的に操作を行えば、一人の人間の思考を根本から歪曲することも可能である。
神慮思考の使用をやめれば、強い記憶操作で無い限り記憶は元に戻る。
複数人を対象にすることもできるが、人数が増えると改竄の効力は弱くなる。
制限により「操作許容に限界値」と「距離的な能力範囲」が更に限定されている。
操作に要する時間も長くなっている。
制限により、強い記憶操作であっても神慮思考の使用が止まれば記憶が戻るかもしれません。
【モデュレイテッドARMSの核@ARMS】
ゼオン・ベルに支給された。
ARMSへの適正が無くともARMSになることができる、量産を前提に調整(モデュレイテッド)されたARMSの核。
量産を前提に作られているため形態は第一形態止まりであるが、リミッターを外せば完全体になる事も可能。
但し、完全体から人間に戻る事はできなくなる。
ARMS化するためのナノマシンとリミッターを外すため装置も付属。
ゼオン・ベルに支給された。
ARMSへの適正が無くともARMSになることができる、量産を前提に調整(モデュレイテッド)されたARMSの核。
量産を前提に作られているため形態は第一形態止まりであるが、リミッターを外せば完全体になる事も可能。
但し、完全体から人間に戻る事はできなくなる。
ARMS化するためのナノマシンとリミッターを外すため装置も付属。
投下順で読む
時系列順で読む
キャラを追って読む
060-a:どじふんじゃった!(前編) | ゼオン・ベル | 081:ノイズキャンセリング |
染井芳野 | ||
とら | GAME OVER |