高鳴り ◆hqLsjDR84w
◇ ◇ ◇
魔神・アシュタロスは瞳を閉じ、自身の回復具合を読み取っていた。
回復自体は間違いなく進んでいるのだが、その速度は納得がいくものではない。
アシュタロスにとって『目で見える速度で傷が治る』ようでは、遅すぎるのだ
本来ならば、多少能力を犠牲にすることで一瞬のうちに全快することとて可能である。
犠牲にした能力だって、一時間足らずのうちに平常時にまで戻せる。
回復自体は間違いなく進んでいるのだが、その速度は納得がいくものではない。
アシュタロスにとって『目で見える速度で傷が治る』ようでは、遅すぎるのだ
本来ならば、多少能力を犠牲にすることで一瞬のうちに全快することとて可能である。
犠牲にした能力だって、一時間足らずのうちに平常時にまで戻せる。
だが――できない。
どうやら、アシュタロスにとってはあまりに緩慢な速度での治癒を続けるしかないようだ。
これは、明らかにおかしい。
最上位魔族であるアシュタロスは、自ら命を絶つどころか力を制御することさえできない。
にもかかわらず、この場ではたしかに治癒力が下がってしまっている。
理由や方法は分からないが、間違いなくアシュタロスの能力が引き下げられているのだ。
最上位魔族として生まれ、最上位魔族として生きていくしかなかったというのに。
この場では、なぜか最上位魔族としての力が緩まっている。
ありえぬ事態である。
世界の法則が乱れていると言わざるを得ない。
アシュタロスが自ら命を絶てぬのは、その能力の強大さゆえ。
あまりに膨大なエネルギーが前触れもなく消え失せたのでは、世界に及ぼす影響があまりに大きい。
だから、許されない。
誰かではなく、世界がアシュタロスの死を許してくれないのだ。
だからそれだけのエネルギーが消失するに相応しい『成果』を上げねば、死ぬことができない。
そのはず――なのだ。
だというのに、能力が落ちている。
すなわち、その分だけエネルギーが消え失せている。
アシュタロスからすれば『少し回復が遅い』程度だが、世間から見たらそのエネルギー量は凄まじい。
街くらいならば、十分破壊できるだろう。
これは、明らかにおかしい。
最上位魔族であるアシュタロスは、自ら命を絶つどころか力を制御することさえできない。
にもかかわらず、この場ではたしかに治癒力が下がってしまっている。
理由や方法は分からないが、間違いなくアシュタロスの能力が引き下げられているのだ。
最上位魔族として生まれ、最上位魔族として生きていくしかなかったというのに。
この場では、なぜか最上位魔族としての力が緩まっている。
ありえぬ事態である。
世界の法則が乱れていると言わざるを得ない。
アシュタロスが自ら命を絶てぬのは、その能力の強大さゆえ。
あまりに膨大なエネルギーが前触れもなく消え失せたのでは、世界に及ぼす影響があまりに大きい。
だから、許されない。
誰かではなく、世界がアシュタロスの死を許してくれないのだ。
だからそれだけのエネルギーが消失するに相応しい『成果』を上げねば、死ぬことができない。
そのはず――なのだ。
だというのに、能力が落ちている。
すなわち、その分だけエネルギーが消え失せている。
アシュタロスからすれば『少し回復が遅い』程度だが、世間から見たらそのエネルギー量は凄まじい。
街くらいならば、十分破壊できるだろう。
そのエネルギーが――忽然と消え失せた。
「キース・ブラック……いや」
先刻の放送より前。
プログラムが始まる直前に、アシュタロスは勘付いていた。
この会場に辿り着いた時点では『目的』が達成できなかった怒りから、すっかり忘れていたが。
冷静になったいまならば、どこかでプログラムの経過を眺めているであろう男を『こう』呼べるのだ。
プログラムが始まる直前に、アシュタロスは勘付いていた。
この会場に辿り着いた時点では『目的』が達成できなかった怒りから、すっかり忘れていたが。
冷静になったいまならば、どこかでプログラムの経過を眺めているであろう男を『こう』呼べるのだ。
「キース・ブラックの内側に潜んでおり、ブラックが死すと同時に肉体を乗っ取った『何者か』よ」
しかし――ここから先は、激昂していた頃と変わらない。
口調が穏やかになっているだけだ。
口調が穏やかになっているだけだ。
「やってくれたな」
あまりにもいまさらだった。
最上位魔族として散るために何世紀もかけて準備をしてきたところなのだ。
いまさら力を下げられたところで、どうしろというのか。
アシュタロスにとって僅かだが、たしかになんの代償もなく力を消失させられる。
そう教えられたところで、他の道を選ぶなど――できようはずもない。
最上位魔族として散るために何世紀もかけて準備をしてきたところなのだ。
いまさら力を下げられたところで、どうしろというのか。
アシュタロスにとって僅かだが、たしかになんの代償もなく力を消失させられる。
そう教えられたところで、他の道を選ぶなど――できようはずもない。
変わらないのだ。
なにも。
なにひとつとして。
なにも。
なにひとつとして。
変えられるはずがない。
そう――決まっている。
決められてしまっているのだ。
この世界に敷かれているルールによって。
この世界に敷かれているルールによって。
「やはり――全員殺害し、貴様も殺す。
そうしてからさらに『成果』を出した上で消滅する」
そうしてからさらに『成果』を出した上で消滅する」
どこかで聞いている男に宣言し、アシュタロスは回復に専念する。
とうに外見上は平時と変わらない。
残るは内側だけだ。
力を下げられているとはいえ、これほど自身が傷つけられたことに、アシュタロスは驚いていた。
だから、期待してしまう。
もうしないと決めていたはずなのに、余計な命を踏みにじることなく死ねる――そんな、ありえぬ可能性を夢見てしまう。
だから、アシュタロスはまたしても同じことを言うのだった。
とうに外見上は平時と変わらない。
残るは内側だけだ。
力を下げられているとはいえ、これほど自身が傷つけられたことに、アシュタロスは驚いていた。
だから、期待してしまう。
もうしないと決めていたはずなのに、余計な命を踏みにじることなく死ねる――そんな、ありえぬ可能性を夢見てしまう。
だから、アシュタロスはまたしても同じことを言うのだった。
「…………やってくれたな」
これは、キース・ホワイトだけに向けられたものではない。
アシュタロスが回復に専念せねばならぬほどの傷を負わせた花菱烈火と、彼が操っていた八体の火竜――そして。
アシュタロスが回復に専念せねばならぬほどの傷を負わせた花菱烈火と、彼が操っていた八体の火竜――そして。
(あの名が呼ばれなかったことにどこか安堵している……私らしくもない)
烈火が死に際に言い残した――魔神をも殺せていたという炎術師。
出会ったこともないのに、その影がアシュタロスの脳裏から離れなかった。
出会ったこともないのに、その影がアシュタロスの脳裏から離れなかった。
また、彼らだけでなく――
魔神に喰らいついてくる輩が、この場には他にもいるのではないか。
そんな意図しておらぬ高鳴りが、アシュタロスにはひどくやかましかった。
魔神に喰らいついてくる輩が、この場には他にもいるのではないか。
そんな意図しておらぬ高鳴りが、アシュタロスにはひどくやかましかった。
【C-3 東部路上/一日目 朝】
【アシュタロス】
[時間軸]:横島がエネルギー結晶体を破壊する直前
[状態]:外見上はダメージなし、内面ダメージ極大、回復中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3
[基本方針]:優勝し、ブラックも殺す。滅びたい。紅麗に興味。
※バサラとビカラが所持していたメモを読みました。
[時間軸]:横島がエネルギー結晶体を破壊する直前
[状態]:外見上はダメージなし、内面ダメージ極大、回復中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3
[基本方針]:優勝し、ブラックも殺す。滅びたい。紅麗に興味。
※バサラとビカラが所持していたメモを読みました。
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