残される者 ◆imaTwclStk
己の生き様を貫いた者が居た。
信念に従い、理想に殉ずる覚悟で生きていた筈の男は
最後には己の命を賭して数多の人命を救う為の
一助を担ってこの世を去った。
……筈だった。
信念に従い、理想に殉ずる覚悟で生きていた筈の男は
最後には己の命を賭して数多の人命を救う為の
一助を担ってこの世を去った。
……筈だった。
「ぬぅおおおおおおおおおおっ!?」
一人の金髪の筋肉質の男が叫び声を上げている。
それもその筈である。
この男がいきなり放り出された場所は空中。
意味も分からぬまま、
碌に体勢を整える事すら出来ずに男は落下していく。
それもその筈である。
この男がいきなり放り出された場所は空中。
意味も分からぬまま、
碌に体勢を整える事すら出来ずに男は落下していく。
「ウゲッ! グホォッ! ゲハッ! ウグハァッ!?」
生い茂る樹木の幹や枝に激しく身体をぶつけながら地面に落下していく。
「ビタァン!!」っと気持ちの良い程の激しい音を立てて
地面に到達したその男の姿を他の人物が見ていたのなら
間違い無く、この男は死んだものと思うだろう。
だが、
「ビタァン!!」っと気持ちの良い程の激しい音を立てて
地面に到達したその男の姿を他の人物が見ていたのなら
間違い無く、この男は死んだものと思うだろう。
だが、
「あいたたたた……ク、クソゥ、いきなりこの様な仕打ちを受けるとは…
私でなければ死んでいたに違いないぞ……」
私でなければ死んでいたに違いないぞ……」
そういって頭に手を当てつつ、頭を振って男は平然と立ち上がる。
男の名はボー・ブランシェ。
ネオ・ナチスに所属し、ナチス再興という理想の為に
自らの身体を鍛え上げてきた男。
だが、それも一人の少年によって組織を壊滅状態にまで
追い込まれるまでであり、今は傭兵で資金を調達していた状態である。
彼の身体は初めは薬物による強化によって作られていたが
様々な挫折を味わった事から薬物を断ち、
純粋な肉体改造のみで磨き上げられたその肉体は
薬物に頼っていた頃を遥かに凌駕し、
常人では理解が及ばぬ高みにまで押し上げられている。
故にあのようなダメージ程度は彼にとって差ほど問題ではないのである。
男の名はボー・ブランシェ。
ネオ・ナチスに所属し、ナチス再興という理想の為に
自らの身体を鍛え上げてきた男。
だが、それも一人の少年によって組織を壊滅状態にまで
追い込まれるまでであり、今は傭兵で資金を調達していた状態である。
彼の身体は初めは薬物による強化によって作られていたが
様々な挫折を味わった事から薬物を断ち、
純粋な肉体改造のみで磨き上げられたその肉体は
薬物に頼っていた頃を遥かに凌駕し、
常人では理解が及ばぬ高みにまで押し上げられている。
故にあのようなダメージ程度は彼にとって差ほど問題ではないのである。
「ここは、何処だ? 山の中の様だが?
ハッ!? そうだ、COSMOSの連中はどうなったのだ!」
ハッ!? そうだ、COSMOSの連中はどうなったのだ!」
彼は知らない。
自身が既に“死んだ身である”という事を。
彼の最後の記憶はCOSMOSと呼ばれる殺人部隊と
日本の存亡を賭けた一戦で彼が相棒と呼ぶ男の
作業を助ける為に自ら壁となり、
捨て身で敵を退けた所までである。
その戦闘の後、彼は力尽き死亡したのであるが
それを彼は認識していないのである。
自身が既に“死んだ身である”という事を。
彼の最後の記憶はCOSMOSと呼ばれる殺人部隊と
日本の存亡を賭けた一戦で彼が相棒と呼ぶ男の
作業を助ける為に自ら壁となり、
捨て身で敵を退けた所までである。
その戦闘の後、彼は力尽き死亡したのであるが
それを彼は認識していないのである。
「それになんだったのだ、あの男は?
あの力……転移能力者<テレポーター>だとでもいうのか?
だが、それではあの傷から再生した理由が見当がつかん」
あの力……転移能力者<テレポーター>だとでもいうのか?
だが、それではあの傷から再生した理由が見当がつかん」
先程、目の前で見た歪な光景。
巧妙なまでに人体に偽装していた機械らしき腕を持った少年に
貫かれてなお平然としていた長髪の男。
そして、その男が語ったこの騒ぎの目的。
巧妙なまでに人体に偽装していた機械らしき腕を持った少年に
貫かれてなお平然としていた長髪の男。
そして、その男が語ったこの騒ぎの目的。
『殺し合い』
その言葉を思い出してわなわなとボーは身体を震わせる。
「ふざけた事をぬかす奴め!
殺し合いだと、馬鹿馬鹿しい!
力を持った人間が弱者を守らずに切り捨てるような
真似等はして良い訳が無いだろうがっ!!」
殺し合いだと、馬鹿馬鹿しい!
力を持った人間が弱者を守らずに切り捨てるような
真似等はして良い訳が無いだろうがっ!!」
怒りで身を震わせながら声のあらん限りに吼える。
彼の信念とは
彼の信念とは
『人間はより優れた人間によって正しき道を選ぶ、そこに幸福があるのだ。
そして優秀な者は、より弱き者達を守る義務がある。
そのかわり支配する者は誰よりも優れていなければならない』
そして優秀な者は、より弱き者達を守る義務がある。
そのかわり支配する者は誰よりも優れていなければならない』
多少は問題の孕んだ思想では有るが、純粋に他を思い遣り、
同時に助ける事こそが彼の根本であり、
だからこそ、彼は母国でもない日本の数多の命の為に
自らの力を振るう事を厭わなかったのである。
故に彼はこのバトルロワイアルという行為そのものが許せなかった。
強者が弱者を踏みにじるような悪質な事を見過ごせるほど、彼は甘くは無い。
例え、相手が未知でどんなに強大な相手であってもである。
同時に助ける事こそが彼の根本であり、
だからこそ、彼は母国でもない日本の数多の命の為に
自らの力を振るう事を厭わなかったのである。
故に彼はこのバトルロワイアルという行為そのものが許せなかった。
強者が弱者を踏みにじるような悪質な事を見過ごせるほど、彼は甘くは無い。
例え、相手が未知でどんなに強大な相手であってもである。
「……お静かに、あまり騒げば人が寄ります」
一人滾るボーを鎮めるかのように静かな声が
その背後から聞こえてきた。
その背後から聞こえてきた。
「ムッ! 何者だ!?」
背後からの声にボーは慌てて振り返る。
声をかけられた事に驚いたのではない。
こうも容易く背後を取られた事に彼は驚いたのである。
声をかけられた事に驚いたのではない。
こうも容易く背後を取られた事に彼は驚いたのである。
「背後から失礼な真似をしました。
私は桐雨刀也。 号は居合い番長」
私は桐雨刀也。 号は居合い番長」
樹木の間をぬって静かに現れた青年が厳かに名乗る。
その姿は和装に女性と見紛うほどの顔。
凛とした姿勢でボーと向かい合い、
居合い番長と名乗った青年は足を止める。
その姿は和装に女性と見紛うほどの顔。
凛とした姿勢でボーと向かい合い、
居合い番長と名乗った青年は足を止める。
「…貴方の先程の言葉が信用できるか如何か分からぬ為、
この距離で失礼します」
この距離で失礼します」
ボーとの距離を一定に保ったまま、
桐雨は静かに口を開く。
桐雨は静かに口を開く。
「それは私がこの殺し合いに“乗って”いるのか
如何かという事か?」
「エェ、言葉では何とでも言える事」
如何かという事か?」
「エェ、言葉では何とでも言える事」
互いの言葉の間に緊張が走る。
確かにそう簡単に信用が置ける状況ではないこの場では
先程のボーの言葉も『ブラフ』と取られても仕方が無い事なのかも知れない。
確かにそう簡単に信用が置ける状況ではないこの場では
先程のボーの言葉も『ブラフ』と取られても仕方が無い事なのかも知れない。
「……下らんな。 私はこんな悪趣味な行為は嫌いだ。
第一、人を如何こう言うのなら貴様も袖口に隠した物は何なのだ?」
第一、人を如何こう言うのなら貴様も袖口に隠した物は何なのだ?」
距離を取ったまま、ボーは桐雨の袖口を指差す。
ボーに気取られぬ様に死角に隠していた筈のそれを見破られて
桐雨も少し目を伏せた後、ボーに見えるように隠していた物を取り出した。
トンファーのような形をした奇妙な剣、神慮伸刀である。
ボーに気取られぬ様に死角に隠していた筈のそれを見破られて
桐雨も少し目を伏せた後、ボーに見えるように隠していた物を取り出した。
トンファーのような形をした奇妙な剣、神慮伸刀である。
「気を許せる相手か分からなかった為、
この様な無礼をしました。
騙まし討ちに用いる気はありません」
この様な無礼をしました。
騙まし討ちに用いる気はありません」
そういって、2対有る内の一振りを地面に降ろし、
もう一振りだけをその手に持つ。
自らアドバンテージを捨てるその行為にボーは素直に感心する。
もう一振りだけをその手に持つ。
自らアドバンテージを捨てるその行為にボーは素直に感心する。
「成程、私の知っている日本人達よりよほど好意が持てる。
……だが、貴様の方こそこの殺し合いを如何思っているというのだ?」
……だが、貴様の方こそこの殺し合いを如何思っているというのだ?」
先程から桐雨はボーに探りを入れているが
まだ、己の本心は明かしてはいない。
疑われてばかりで腹が立っていたというのも質問の意図にはあるのだが。
まだ、己の本心は明かしてはいない。
疑われてばかりで腹が立っていたというのも質問の意図にはあるのだが。
「……私は金剛番長の刃です。
彼があの男に逆らうと決めたのなら、
私はその言葉に殉ずるのみ」
彼があの男に逆らうと決めたのなら、
私はその言葉に殉ずるのみ」
まるで、待ちわびてきた者がやっと来たかのような
それまでとは違う穏やかな雰囲気で桐雨は
その場には居ない者の事を語る。
対峙してから初めて見せた桐雨の
その表情にボーは首を捻る。
それまでとは違う穏やかな雰囲気で桐雨は
その場には居ない者の事を語る。
対峙してから初めて見せた桐雨の
その表情にボーは首を捻る。
「……あの男に逆らう?
貴様はあの場に居た誰かの知り合いか?
……ん? あぁ、あの筋肉達磨か!?」
「貴方も対して人の事を言えた容姿ではないと思いますが……」
貴様はあの場に居た誰かの知り合いか?
……ん? あぁ、あの筋肉達磨か!?」
「貴方も対して人の事を言えた容姿ではないと思いますが……」
ポンっと相槌を打ったボーをジト目で眺めつつ、
桐雨は神慮伸刀を懐に収める。
それをボーは意外そうに見つめていた。
桐雨は神慮伸刀を懐に収める。
それをボーは意外そうに見つめていた。
「良いのか? いきなり私が襲い掛かってこないとも限らんのに」
「人となり程度なら判別が付きます。
隙は何度か見せていた筈ですが、
それに乗じる心算も無いようですし」
「人となり程度なら判別が付きます。
隙は何度か見せていた筈ですが、
それに乗じる心算も無いようですし」
先程まで発していた静かな殺気も成りを潜め、
ボーに対して警戒するのを止めた桐雨は
静かに歩み寄っていく。
ボーに対して警戒するのを止めた桐雨は
静かに歩み寄っていく。
「しかし、あなたも相当な変わり者だと思います。
相手がどれ程の力量かも今だ分からぬのに」
「相手の力量などは関係は無い、
大事なのはそれを許せるかどうかと言う事だ」
相手がどれ程の力量かも今だ分からぬのに」
「相手の力量などは関係は無い、
大事なのはそれを許せるかどうかと言う事だ」
腕を組んで胸を張るボーの脇を桐雨はそのまま通り過ぎていく。
「ムッ!? お、おい、何処へ行く?」
一瞬、協力する流れになっていたのかと思った
ボーは桐雨のその動きに拍子抜けする。
ボーは桐雨のその動きに拍子抜けする。
「先程も言いましたが、
私のこの身は刃として余計な露を払うべき身。
申し訳無いですが、貴方に敵意が無いのであれば
これ以上の関わりは不要」
私のこの身は刃として余計な露を払うべき身。
申し訳無いですが、貴方に敵意が無いのであれば
これ以上の関わりは不要」
それだけを告げて、桐雨はさっさとその場を去っていく。
一人、取り残されたボーはポツンと佇んでいた。
一人、取り残されたボーはポツンと佇んでいた。
「……何だったのだ、一体?」
如何したら良いのか分からずに先程までの威勢は何処へやら、
所在無げに頭を掻きながら如何したものかと思案する。
所在無げに頭を掻きながら如何したものかと思案する。
「おぉ、そういえばここが何処なのかわからんではないか!
……あれに何か入っているのか?」
……あれに何か入っているのか?」
先程の落下で少し離れていた場所に落ちていたデイバックを
拾おうとボーが歩き出した途端、
その側の脇道から誰かが草木を分けて進む音が聞こえてきた。
拾おうとボーが歩き出した途端、
その側の脇道から誰かが草木を分けて進む音が聞こえてきた。
「……次は何が出るか。
それにしても何故こうも人が集まる?」
それにしても何故こうも人が集まる?」
先程、居合い番長にされた注意もあまり意に介さずに
頭を過ぎった疑問に首を捻りつつ、
速やかにデイバックを拾い上げてボーは
向かって来る者に対して構えを取る。
物音の主はまず草を分けた手から、
順を追ってリーゼントに固めた髪の毛がひょっこりと
突き出て、最後にその全容を現した。
頭を過ぎった疑問に首を捻りつつ、
速やかにデイバックを拾い上げてボーは
向かって来る者に対して構えを取る。
物音の主はまず草を分けた手から、
順を追ってリーゼントに固めた髪の毛がひょっこりと
突き出て、最後にその全容を現した。
「おっ? 何だ五月蝿い声が聞こえてたから来たのに
居るのはおっさん一人かよ」
居るのはおっさん一人かよ」
そう良いながらリーゼントの少年は
身体に付いた木の葉を払いつつ、服装を整えていく。
身体に付いた木の葉を払いつつ、服装を整えていく。
「子供……だと? 何故このような所に?」
予想とは違う意外な人物の登場にボーは顔を引き攣らせる。
「なんという事だ、あの卑劣漢め!!
この様な子供まで無理やり連れてくるとは
尚更、許せん!!」
この様な子供まで無理やり連れてくるとは
尚更、許せん!!」
一人憤るボーの側でリーゼントの少年は動きを止めていた。
その身体は微かに震えている。
その身体は微かに震えている。
「如何した少年? やはり、怖いか?
だが、安心しろ。 君はこの私が守ってやろう!」
「誰がガキだ、コラー!!
さっきから喧嘩売ってんのかおっさん!」
だが、安心しろ。 君はこの私が守ってやろう!」
「誰がガキだ、コラー!!
さっきから喧嘩売ってんのかおっさん!」
ボーとしては優しげに肩に置いた手を
思いっきり跳ね除けられた上、
予想とは全く違う反応にボーは驚く。
思いっきり跳ね除けられた上、
予想とは全く違う反応にボーは驚く。
「俺は誰かのお守りになんて成る気はないんだよ、
すっこんでろ、おっさん!」
すっこんでろ、おっさん!」
リーゼントの少年は怒りに身を震わせながら、
ボーに対して凄む。
それをやれやれといった感じで受けながら、
ボーは少年へと向かい合う。
ボーに対して凄む。
それをやれやれといった感じで受けながら、
ボーは少年へと向かい合う。
「これだから子供はいかんのだ。
少し身の程を知るが良い」
少し身の程を知るが良い」
その言葉を言い切るか否かという瞬間に
ボーの姿が掻き消える。
ボーの姿が掻き消える。
「……なっ!?」
目の前で起きた事に瞬時に理解出来ずに動揺する
少年の肩を背後から誰かが叩く。
慌てて振り向いた少年に対して、
少年の肩を背後から誰かが叩く。
慌てて振り向いた少年に対して、
「喰らえ、デコピンッ!」
その額をピシッと指で弾く。
「如何だ? これで分かっただろう。
分かったら大人しく――」
「……上等だ、コラ」
分かったら大人しく――」
「……上等だ、コラ」
額を押さえていた少年の雰囲気が変わる。
拳を握り締めて、ボクシングのような構えを取り
ステップを踏み始める。
拳を握り締めて、ボクシングのような構えを取り
ステップを踏み始める。
「おっさんにも俺の力を分からせてやるよ。
ギアを入れるぜ、ドラグナー・ナグル!!」
ギアを入れるぜ、ドラグナー・ナグル!!」
少年が奇怪な言葉を叫ぶのと同時にその動きが急加速する。
それは余裕で受け流す心算であった筈のボーですら
慌てて体勢を整えるほどに。
それは余裕で受け流す心算であった筈のボーですら
慌てて体勢を整えるほどに。
「殺すつもりはねぇが少し痛い目にはあってもらうぜ。
ブロォォォォッ!!」
ブロォォォォッ!!」
少年が繰り出す高速のジャブを身を捻りながら避けつつ、
ボーも少年の動きに素直に感心する。
ボーも少年の動きに素直に感心する。
「その歳で大した速さだ。
だが、この程度では私に拳を当てる事など出来んな」
だが、この程度では私に拳を当てる事など出来んな」
少年の動きにも慣れ、余裕を取り戻したボーが不敵に笑う。
「まだだ、ギアを上げるぜ!
セカン・ナグル!」
セカン・ナグル!」
再び少年が叫ぶのと同時にその動きが更に加速する。
「な、なんと! この私についてきはじめているだと?」
ボーの表情からも徐々に余裕は無くなり、
真剣に少年の動きに対応し始める。
だが、余裕を捨てたボーの動きにはまだ今の少年では
追いつく事は出来ずにいる。
真剣に少年の動きに対応し始める。
だが、余裕を捨てたボーの動きにはまだ今の少年では
追いつく事は出来ずにいる。
「……嘘だろ? ただの人間の動きじゃねぇ。
いいぜ、なら更にギアを上げる!
サーズ・ナグル!」
いいぜ、なら更にギアを上げる!
サーズ・ナグル!」
最初は怒りでのみ動いていた少年もボーとの
意地と意地とぶつかり合いを徐々に楽しみ始めていた。
ボーにしてみても、ここに来て更に動きを早める少年に
満更ではない楽しみを覚え始める。
意地と意地とぶつかり合いを徐々に楽しみ始めていた。
ボーにしてみても、ここに来て更に動きを早める少年に
満更ではない楽しみを覚え始める。
「ブロォォォォッ!!」
「何の分身の術!」
「何の分身の術!」
お互いがお互いの強さを認め、
真剣に対峙する中で二人の表情はむしろ嬉々としている。
それまでの経緯や何故こうなったのかという理由も忘れ、
ただただ互いにぶつかり合う。
少年の繰り出す無数のジャブやストレートを
ボーは様々な技を駆使して避ける。
真剣に対峙する中で二人の表情はむしろ嬉々としている。
それまでの経緯や何故こうなったのかという理由も忘れ、
ただただ互いにぶつかり合う。
少年の繰り出す無数のジャブやストレートを
ボーは様々な技を駆使して避ける。
「ハァ…ハァ…な、中々やるではないか。
だ、だがまだまだだな」
「フゥ…クッ…ぬかしやばれ、おっさん。
息が上がってきてるじゃねーか?」
だ、だがまだまだだな」
「フゥ…クッ…ぬかしやばれ、おっさん。
息が上がってきてるじゃねーか?」
いつの間にか二人の間に「当てたら勝ち、当てられたら負け」という
ルールまで出来上がり、止める者も無く続くかに思えた。
ルールまで出来上がり、止める者も無く続くかに思えた。
だが、
「それまで!!」
二人の間に割って入るように一人の人物が躍り出る。
「ウッ、君は…」
「誰だよ、あんた!」
「誰だよ、あんた!」
その人物の姿にボーは動きを止めるが、
少年は勝負を止められた事に腹を立てて
その人物に食って掛かろうとする。
その首筋に冷たい感触が当たる。
少年は勝負を止められた事に腹を立てて
その人物に食って掛かろうとする。
その首筋に冷たい感触が当たる。
「……ウッ!?」
いつ当てられたのかすら分らぬ程に
気づいた時には既にその首筋に剣を当てられている。
気づいた時には既にその首筋に剣を当てられている。
「落ち着きなさい。
これ以上は互いに怪我では済まなくなりそうでしたので
止めさせて頂いた」
これ以上は互いに怪我では済まなくなりそうでしたので
止めさせて頂いた」
そう言って少年の首から剣を離し、
桐雨は剣を収める。
桐雨は剣を収める。
「君は去ったのではなかったのか?」
「あのように騒いで居れば否応でもなく気づきます。
先程、警告した筈ですが」
「あのように騒いで居れば否応でもなく気づきます。
先程、警告した筈ですが」
眉を顰めつつ、ボーの質問に答えた上で
更に桐雨はボーを詰問する。
更に桐雨はボーを詰問する。
「あ、えぇと、それはだな…」
目を泳がせつつ、言葉に詰まるボーを尻目に
やる気を削がれたのか少年も息をつくと
その場を去ろうとする。
だが、ふと思い出したように二人へと向き直り、
少年は口を開いた。
やる気を削がれたのか少年も息をつくと
その場を去ろうとする。
だが、ふと思い出したように二人へと向き直り、
少年は口を開いた。
「なぁ、あんたら。
髪はこんくらいの長さでいい匂いがして、
帽子を被った女を見なかったか?」
髪はこんくらいの長さでいい匂いがして、
帽子を被った女を見なかったか?」
ジェスチャーを交えつつ、
出来る限り分りやすく二人に容姿を伝えるが
二人にはその女性の面識は無い。
出来る限り分りやすく二人に容姿を伝えるが
二人にはその女性の面識は無い。
「すまないが、知らんな」
「私も見てはいない」
「私も見てはいない」
その答えに若干の落胆は見せつつも
少年はボーへと向き直る。
少年はボーへと向き直る。
「…勝負はお預けだ、おっさん。
俺はテッド。
まぁ、お互いに生き残ってたら
いつか決着をつけようぜ」
俺はテッド。
まぁ、お互いに生き残ってたら
いつか決着をつけようぜ」
テッドなりの言葉を残して、
その場を去ろうとするのをボーが止める。
その場を去ろうとするのをボーが止める。
「待て、テッドとやら。
探し人がいるのなら、
この私が手伝ってやるのもやぶさかではない」
探し人がいるのなら、
この私が手伝ってやるのもやぶさかではない」
先程とは違い。
テッドの力を認め、軽んじる事を止めたボーが
真剣な表情でテッドに提案する。
その言葉をテッドは少し迷った上で
やんわりと断った。
テッドの力を認め、軽んじる事を止めたボーが
真剣な表情でテッドに提案する。
その言葉をテッドは少し迷った上で
やんわりと断った。
「悪いが、あいつを探すのは俺の目的なんだ。
生憎とそれ以外の事に構ってる余裕も無いし、
それに巻き込んじまう訳にもいかねぇしな」
生憎とそれ以外の事に構ってる余裕も無いし、
それに巻き込んじまう訳にもいかねぇしな」
あとはそれ以上はボーの答えも聞かずに
「じゃあな」と一言だけ告げて、
テッドはその場を後にする。
「じゃあな」と一言だけ告げて、
テッドはその場を後にする。
「……では、私ももう行きます。
今のような手助けは今後はするつもりは無いので、
慎んでください」
今のような手助けは今後はするつもりは無いので、
慎んでください」
場が収まった事を確認して、
桐雨もボーに警告だけはしっかりとし、
早々とその場を去っていく。
桐雨もボーに警告だけはしっかりとし、
早々とその場を去っていく。
再び取り残された形になったボーは
取り敢えず荷物を確認することから入る事にした。
取り敢えず荷物を確認することから入る事にした。
【D-1 裏山/一日目 黎明】
【ボー・ブランシェ】
[時間軸]:COSMOS戦にて死亡後
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:弱者を助けつつ、主催者を倒す
[時間軸]:COSMOS戦にて死亡後
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[基本方針]:弱者を助けつつ、主催者を倒す
【桐雨刀也(居合番長)】
[時間軸]:日本番長戦決着後
[状態]:健康
[装備]:神慮伸刀@烈火の炎
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:金剛番長の刃として、彼に敵対する者を倒す
[時間軸]:日本番長戦決着後
[状態]:健康
[装備]:神慮伸刀@烈火の炎
[道具]:ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:金剛番長の刃として、彼に敵対する者を倒す
【テッド】
[時間軸]:ファウード戦合流前
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:魔本、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:チェリッシュの捜索
[時間軸]:ファウード戦合流前
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:魔本、ランダム支給品0~2、基本支給品一式
[基本方針]:チェリッシュの捜索
【支給品紹介】
【神慮伸刀@烈火の炎】
桐雨刀也(居合番長)に支給された。
使用者の意志のままに刀身が伸縮する二本で一組の魔導具(トンファー型の刀)。
桐雨刀也(居合番長)に支給された。
使用者の意志のままに刀身が伸縮する二本で一組の魔導具(トンファー型の刀)。
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000:OP『胎動~インディケイション~』 | ボー・ブランシェ | 040:振り放けて三日月見れば一目見し |
GAME START | 桐雨刀也(居合番長) | 040:振り放けて三日月見れば一目見し |
GAME START | テッド | 040:振り放けて三日月見れば一目見し |