少女さとり ◆xrS1C1q/DM
暗闇に包まれた山中、一人の少女がキョロキョロと辺りを見渡しながら歩く。
セーラー服を着た中学生くらいのごくごく平凡な少女。
しかし、彼女は普通の人間がこのような殺し合いに巻き込まれれば起こすであろうパニックを一切起こしていない。
恐怖を感じ、落ち着かない様子ではいるものの、足取りはしっかりとしている。
セーラー服を着た中学生くらいのごくごく平凡な少女。
しかし、彼女は普通の人間がこのような殺し合いに巻き込まれれば起こすであろうパニックを一切起こしていない。
恐怖を感じ、落ち着かない様子ではいるものの、足取りはしっかりとしている。
「刃ー、武蔵ー、小次郎ー、聞こえたら返事してー」
不安からか、普段の快活さが嘘のように弱々しい声で仲間を呼びかける彼女の名は峰さやか。
殺し合いに乗った人間に聞かれてしまうリスクがあるのは承知ではあったが、一人でいるのにはこの場は恐ろしすぎた。
殺し合いに乗った人間に聞かれてしまうリスクがあるのは承知ではあったが、一人でいるのにはこの場は恐ろしすぎた。
「はぁ、このさい殺し合いに積極的な人じゃないなら誰でもいいから出てきてくれないかなぁ」
弱々しくため息を吐く。
そして弱気な考えを吹き飛ばすかのよう、右手に握られた彼女の身長ほどもある巨大なブーメラン型の刃を力強く握りしめた。
そのサイズから持ち運びに不便ではあるものの、突然の攻撃に備えて蔵王にはしまわずに出しっ放しにしているのだ。
武器は見た目の割には軽いので、少女であるさやかも持ち運び程度なら問題なく片手で行えている。
そして弱気な考えを吹き飛ばすかのよう、右手に握られた彼女の身長ほどもある巨大なブーメラン型の刃を力強く握りしめた。
そのサイズから持ち運びに不便ではあるものの、突然の攻撃に備えて蔵王にはしまわずに出しっ放しにしているのだ。
武器は見た目の割には軽いので、少女であるさやかも持ち運び程度なら問題なく片手で行えている。
「イザとなったら……時間稼ぎして逃げるくらいならできるよね?」
これまでに幾度も面倒事に巻き込まれ、その中で命を落としかけた経験もあった。
だからこそ彼女はこの殺し合いに置いても、我を忘れずに自分を保つことが出来ている。
しかし、あくまでも彼女自身は剣道をやっている程度の女子中学生。
いくら修羅場をくぐり抜けたとはいえ、さやかの戦闘力は一般人に毛が生えた程度。
その事を自覚しているからこそ、彼女は強い恐怖を感じているのだ。
だが、彼女は命を諦めたり、絶望をしているわけではない。
だからこそ彼女はこの殺し合いに置いても、我を忘れずに自分を保つことが出来ている。
しかし、あくまでも彼女自身は剣道をやっている程度の女子中学生。
いくら修羅場をくぐり抜けたとはいえ、さやかの戦闘力は一般人に毛が生えた程度。
その事を自覚しているからこそ、彼女は強い恐怖を感じているのだ。
だが、彼女は命を諦めたり、絶望をしているわけではない。
「ううん、弱気になっちゃダメよ! 刃達がいるんだからこの殺し合いもきっと何とかしてくれるわ!」
彼女は信じているのだ。ずっと一緒にいたサムライ、鉄刃のことを。
鬼丸城での、玉探しの旅での、かぐやと戦った時の、彼の勇敢さ、そして強さを峰さやかは信じている。
刃なら、彼とその仲間たちが力を合わせれば、ブラックを倒してこの殺し合いから脱出することができる。
今までも圧倒的な逆境の中で戦い、勝利してきたのだ。
それならば、今回の戦いだってきっと勝てる。
さやかの表情に笑みが戻ってきた。
鬼丸城での、玉探しの旅での、かぐやと戦った時の、彼の勇敢さ、そして強さを峰さやかは信じている。
刃なら、彼とその仲間たちが力を合わせれば、ブラックを倒してこの殺し合いから脱出することができる。
今までも圧倒的な逆境の中で戦い、勝利してきたのだ。
それならば、今回の戦いだってきっと勝てる。
さやかの表情に笑みが戻ってきた。
「そうよ! みんなで戦えば怖くない! それに、キース・ブラックを倒そうって考えてるのは私たちだけじゃないはずよ」
仲間を集めてブラックを何とかする。
意気込みを込めて小さくガッツポーズをし、さやかは再び歩き出す。
……木の影に隠れながらゆっくりとだが。
強気な発言をしたところでやはり一人は怖いらしい。
意気込みを込めて小さくガッツポーズをし、さやかは再び歩き出す。
……木の影に隠れながらゆっくりとだが。
強気な発言をしたところでやはり一人は怖いらしい。
「刃が何とかしてくれるって言ったけど、私がなにもしない訳にはいかないもんね。
せめて仲間を集めるくらいはやっておかないと」
せめて仲間を集めるくらいはやっておかないと」
自分に役割を作ることで竦みそうになる足を必死に動かす。
そしてしばらく歩いたところで、背後から人の気配。そして声が聞こえた。
そしてしばらく歩いたところで、背後から人の気配。そして声が聞こえた。
「後ろから気配がする。そう思っただろう。へへへ、当たりだァ」
咄嗟に振り向いたさやかが手にした武器で攻撃を防ぐ。
相手が持っていたのは太い木の枝らしく、振り下ろされ、刃に当たった勢いでスッパリと半分くらいの長さに切れてしまっていた。
奇襲に驚いたものの、すぐに平常心を取り戻し武器を構えるさやか。
目の前に立っているのは限りなく人に近く、しかしどう見ても人間ではない異形。
数々の化物を見てきたさやかであったが、目の前の相手には恐怖心がふつふつと湧きでてくるた。
彼はあまりにも人間に近すぎたのだ。
ガマ男やクモ男、彼らに比べてより人間らしいことが化物を更なる異形に見せる。
だが、それに呑まれること無くさやかは武器を強く握りしめた。
相手が持っていたのは太い木の枝らしく、振り下ろされ、刃に当たった勢いでスッパリと半分くらいの長さに切れてしまっていた。
奇襲に驚いたものの、すぐに平常心を取り戻し武器を構えるさやか。
目の前に立っているのは限りなく人に近く、しかしどう見ても人間ではない異形。
数々の化物を見てきたさやかであったが、目の前の相手には恐怖心がふつふつと湧きでてくるた。
彼はあまりにも人間に近すぎたのだ。
ガマ男やクモ男、彼らに比べてより人間らしいことが化物を更なる異形に見せる。
だが、それに呑まれること無くさやかは武器を強く握りしめた。
「く、来るなら来なさいよ!」
「隙さえ見つければ逃げ切れる、刃ならきっとこいつも倒してくれる。と思っただろう」
「隙さえ見つければ逃げ切れる、刃ならきっとこいつも倒してくれる。と思っただろう」
さやかの額にうっすらと汗が滲みでる。
最初の時は、奇襲の対応でいっぱいいっぱいで気がつかなかった。
目の前に立っている化物は心が読める。その事実に気が付き、さやかの心臓が鼓動を早める。
最初の時は、奇襲の対応でいっぱいいっぱいで気がつかなかった。
目の前に立っている化物は心が読める。その事実に気が付き、さやかの心臓が鼓動を早める。
「えへへ、怖いかァ? すぐに楽にしてやるからなァ」
そう言って化物は地面を蹴った。
一瞬にして視界から消えた相手に戸惑いながらも、音と気配のする方向へ武器を向ける。
武器の腹と化物の拳がぶつかり合い、その反動でさやかは少々押された。
力は明らかに人間以上。しかし、幸いなことに武器をもってかれるほどではない。
次の一撃に備えたさやかの耳にあの不気味な声が響き渡る。
一瞬にして視界から消えた相手に戸惑いながらも、音と気配のする方向へ武器を向ける。
武器の腹と化物の拳がぶつかり合い、その反動でさやかは少々押された。
力は明らかに人間以上。しかし、幸いなことに武器をもってかれるほどではない。
次の一撃に備えたさやかの耳にあの不気味な声が響き渡る。
「縦に構えれば胴体と頭を同時に防御できる。そう思っただろう」
そう言って怪物はさやかの細い足を蹴り飛ばす。
膝の辺りに当たった怪物の蹴りはさやかの骨をいとも簡単に砕く。
膝の辺りに当たった怪物の蹴りはさやかの骨をいとも簡単に砕く。
「っ、ああああああああああ」
闇夜に少女の叫び声が響き渡った。
立ち上がることも敵わぬ彼女はその瞳にいっぱいの涙を溜め、必死に痛みをこらえようとする。
だが、折れた骨が与えてくる痛みは彼女の体を苛み続けた。
悲鳴は上げぬようにするも、うめき声が口より勝手に漏れ出す。
涙を止めようと目に力を入れるも、涙腺から次から次へと湧いてくるそれを止めることはできない。
そして、傍に立っているのは殺し合いに乗ったであろう怪物。
まさに絶体絶命の中、彼女が必死に思い出すのは一人の少年。
バカでスケベなところがあれども、正義漢が人一倍強く真の侍を目指して走っていた少年。
立ち上がることも敵わぬ彼女はその瞳にいっぱいの涙を溜め、必死に痛みをこらえようとする。
だが、折れた骨が与えてくる痛みは彼女の体を苛み続けた。
悲鳴は上げぬようにするも、うめき声が口より勝手に漏れ出す。
涙を止めようと目に力を入れるも、涙腺から次から次へと湧いてくるそれを止めることはできない。
そして、傍に立っているのは殺し合いに乗ったであろう怪物。
まさに絶体絶命の中、彼女が必死に思い出すのは一人の少年。
バカでスケベなところがあれども、正義漢が人一倍強く真の侍を目指して走っていた少年。
「刃……」
「ミノルのためだァ。死ねぇ!!」
「ミノルのためだァ。死ねぇ!!」
トドメの一撃に咄嗟に武器を構えた。
ほぼ無意識の行動にはさしもの心を読む怪物も対応ができない。
再び二つの硬い物体がぶつかり合った音が鳴る。
その音と共に、さやかの折れかかっていた心も再び熱を取り戻す。
ほぼ無意識の行動にはさしもの心を読む怪物も対応ができない。
再び二つの硬い物体がぶつかり合った音が鳴る。
その音と共に、さやかの折れかかっていた心も再び熱を取り戻す。
「ミノルって参加者はいなかったよね。もしかして貴方の大切な人なの?」
「あァ、俺はミノルの父ちゃんだァ」
「あァ、俺はミノルの父ちゃんだァ」
さやかが取った手段は説得。
怪物の言った、『ミノル』という人名が引っかかったのだ。
怪物の言った、『ミノル』という人名が引っかかったのだ。
「ミノル君のために帰りたいなら、キース・ブラックの言う事なんか聞かなくてもいいの!
きっと……きっと、刃達がこんな殺し合いどうにかしてくれるんだから!」
きっと……きっと、刃達がこんな殺し合いどうにかしてくれるんだから!」
怪物はさやかの言葉に押し黙る。
眼前の少女が本気でそう思っていることは彼にも分かった。
それを察したさやかも更に言葉を紡ぐ。
眼前の少女が本気でそう思っていることは彼にも分かった。
それを察したさやかも更に言葉を紡ぐ。
「それに、人を殺してまで帰ってきたお父さんをミノル君は喜ぶの?
血まみれになった手で子供を抱き上げるの?
立派に戦って帰ってきたって自慢するの? 違うでしょ!」
血まみれになった手で子供を抱き上げるの?
立派に戦って帰ってきたって自慢するの? 違うでしょ!」
骨折の痛みも忘れ、半ば喚くかのように感情をぶつける。
そこには一切の嘘はない。
不要な殺し合いで手を汚して欲しくない、彼女は心の底から叫ぶ。
そこには一切の嘘はない。
不要な殺し合いで手を汚して欲しくない、彼女は心の底から叫ぶ。
「お父さんなんだから、子供が悲しむようなことはやめなさいよ!」
全てを吐き出すような勢いで言い切った後、さやかは頬を伝う涙を腕で拭った。
そして、興奮で忘れていた痛みが徐々に足を傷つける中で精一杯の笑顔を浮かべる。
そして、興奮で忘れていた痛みが徐々に足を傷つける中で精一杯の笑顔を浮かべる。
「私の知り合いに鉄刃って男の子がいるんだけど、そいつがすっごく強いんだ。
かぐやっていたじゃない? アイツを倒したのも刃なんだから。
だから強さは折り紙付きでしょ。キース・ブラックなんて目じゃないわ」
かぐやっていたじゃない? アイツを倒したのも刃なんだから。
だから強さは折り紙付きでしょ。キース・ブラックなんて目じゃないわ」
どこか嬉しそうな声で刃のことを語った。
込められたのは若きサムライへの絶対の信頼。
込められたのは若きサムライへの絶対の信頼。
「足のことは気にしてないからさ、私たちと一緒にブラックを倒しましょ?
あ、でも無事に帰れたらその時は一発くらいビンタさせてよね」
あ、でも無事に帰れたらその時は一発くらいビンタさせてよね」
化物の無言を肯定と捉えたさやかは、右腕を差し出す。
そして化物もその差し出された腕へと手を伸ばし――――
そして化物もその差し出された腕へと手を伸ばし――――
視界が180度回転したのに驚く間もなく、そのまま彼女の意識は永遠の闇の中へと沈む。
少し遅れて力を失った彼女の体がアスファルトの上に崩れ落ちた。
少女、峰さやかはもう動くことがない。
大好きだった剣道をすることも、ほのかに恋心を抱いていた少年と喋ることも。
キース・ブラックにより、目の前の怪物により、彼女は全てを奪われた。
少し遅れて力を失った彼女の体がアスファルトの上に崩れ落ちた。
少女、峰さやかはもう動くことがない。
大好きだった剣道をすることも、ほのかに恋心を抱いていた少年と喋ることも。
キース・ブラックにより、目の前の怪物により、彼女は全てを奪われた。
【峰さやか 死亡】
【残り75名】
【残り75名】
「えへへ、武器いただいたァ。目ん玉は……もう集めねぇでいいんだよなァ」
妖怪――さとり――は峰さやかの持っていた武器とディバッグを手に取った。
そしていつもの癖で目玉を回収しようとするも、それが不要なことを思い出し、掴んでいた彼女のポニーテールを離す。
再び力なく地面に横たわった死体になんの罪悪感を抱くこともなく、彼は彼女の元を去った。
彼の目的はただ一つ。
『優勝してブラックにミノルの目を治してもらう』
この目的のためならば彼は何人、何十人、何百人であろうと殺すことができる。
ここへ連れてこられる前も、『いい目と悪い目を取り替えればミノルは治る』という考えに基づき、眼球を奪うために二桁を優に超える人間を殺してきたのだ。
今更79人ポッチを殺すのに躊躇いがあるはずがない。
そしていつもの癖で目玉を回収しようとするも、それが不要なことを思い出し、掴んでいた彼女のポニーテールを離す。
再び力なく地面に横たわった死体になんの罪悪感を抱くこともなく、彼は彼女の元を去った。
彼の目的はただ一つ。
『優勝してブラックにミノルの目を治してもらう』
この目的のためならば彼は何人、何十人、何百人であろうと殺すことができる。
ここへ連れてこられる前も、『いい目と悪い目を取り替えればミノルは治る』という考えに基づき、眼球を奪うために二桁を優に超える人間を殺してきたのだ。
今更79人ポッチを殺すのに躊躇いがあるはずがない。
「ミノルが喜ばねぇなんて嘘だよなァ」
そう言って三日月型の口を更に広げる。
峰さやかの説得には致命的に欠けていることがあった。
彼女が"柏木実”を知らなかった事。それが最大の綻び。
さとりに、悲しんだミノルのヴィジョンを正確に見せることができなかった。
だからさとりはさやかが言ってることにピンと来なかったのだ。
峰さやかの説得には致命的に欠けていることがあった。
彼女が"柏木実”を知らなかった事。それが最大の綻び。
さとりに、悲しんだミノルのヴィジョンを正確に見せることができなかった。
だからさとりはさやかが言ってることにピンと来なかったのだ。
「待ってろよぉ、父ちゃんがオメェの目を治してやるからなァ。
そしたらまたミノルと一緒に暮らすんだァ、えへへ。楽しみだなァ」
そしたらまたミノルと一緒に暮らすんだァ、えへへ。楽しみだなァ」
そして月明かりの下、さとり妖怪が歩き出す。
三日月型の武器、三日月型の口。そして三日月型の瞳。
人を狂わせる月を身に纏い、笑みを浮かべた妖が歩く。
どこまでも純粋で、残酷な妖が――――。
三日月型の武器、三日月型の口。そして三日月型の瞳。
人を狂わせる月を身に纏い、笑みを浮かべた妖が歩く。
どこまでも純粋で、残酷な妖が――――。
【A-1 山中/一日目 深夜】
【さとり】
[時間軸]:紫暮&うしお戦直後
[状態]:万全
[装備]: 海月@烈火の炎
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品1~5
[基本方針]:優勝し、ミノルの目を治して一緒に暮らす
[時間軸]:紫暮&うしお戦直後
[状態]:万全
[装備]: 海月@烈火の炎
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品1~5
[基本方針]:優勝し、ミノルの目を治して一緒に暮らす
【支給品説明】
【海月】
峰さやかに支給
大きな三日月型の刃でブーメランとしても使用可能。
あくまでも三日月型の刃であり、ブーメランとして使うのはおまけである。
……『くらげ』って読んだ人は大人しく手をあげなさい。
峰さやかに支給
大きな三日月型の刃でブーメランとしても使用可能。
あくまでも三日月型の刃であり、ブーメランとして使うのはおまけである。
……『くらげ』って読んだ人は大人しく手をあげなさい。
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