902 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/09(日) 23:05:25 ID:PB9Y65i9P [4/5]
俺はあいつが大嫌いだ あたしはあいつが大嫌いだ
あいつはいつも自信満々に前を向いて あいつはいつもどうでもいいように下を向いて
俺の前を走っていく あたしの前を歩いてる
俺はそんなあいつの背中が眩しくて あたしはそんなあいつの背中が憎らしくて
いつからか追うことを諦めてたんだ 絶対に追いついてやるんだともがいてた
後ろを振り向かずに前を向いて 後ろの存在を気にも留めずに下を向いて
ひたすら走り続けるその背中は ただただ歩くだけのはずのその背中は
諦めてる俺には追いつけない どれだけ走っても追いつけない
そう思っていた
いつだって前だけを向いているのだと 何があっても後ろを気にすることはないのだと
その足が止まるはずがないのだと その瞳には何も映すことはないのだと
けれど本当は
時には下を向いて 手を伸ばせば
足を止めて 声をかければ
動けなくなることがあるのだと知った 後ろを見てくれるのだと気付いた
903 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/09(日) 23:07:23 ID:PB9Y65i9P [5/5]
大嫌いなあいつ
あいつにもそんな一面があるのだと知った
手の届くところにその背中があるのだと知った
少しだけあいつが嫌いでなくなった
でも、 だからこそ
俺はらしくないと罵った あたしはこっちを見るなと突っぱねた
お前には前を向いているのがお似合いだと あんたは後ろを気にする必要なんてないんだと
なぜかって?
俺は決めたんだ あたしはずっと決めているのだ
今でも走り続けるその足が 時折後ろを気にするように速度を緩めるようになったその足が
お前が立ち止まることがあるのなら あんたが立ち止まる必要もないほどに
この出来損ねた足でその背中に追いついて 自慢のこの足でその背中を追い越して
その手を引いてやろうと その間抜け面を覗き込んでやろうと
そのときお前はどんな顔をするのだろう そのときあんたはどんな顔をするのだろう
いつか来る未来
それを目指して
俺は あたしは
これからも走り続けていく
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最終更新:2011年01月10日 21:07