269 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:18:10 ID:HPj4513u0 [1/7]


あたしは、ものすっっっっごく兄貴が好きだった。
兄貴は小さかったあたしには優しかった。
いっぱい、いっぱい遊んでくれた。

だけど、今は。

『人生相談』という名目でないと話もできない。
その状況はあたしが作りだしたんだけど、なんだか悲しくて。

せめて、昔みたいに
恋愛感情抜きに素直になれたなら。
きっと、今の状況はできなかったんじゃないのかな

「…戻りたいなぁ…」

ぽつりと呟いて、深夜電気の消えた部屋で目を閉じた。

―次の日―

ピピピピ…
電子音で目が覚める。
いつもどおりの朝。
いつもどおり階段を降ようとして、気付いた。

…足が小さい。
手も、ついでに服がぶかぶか。

急いで部屋に戻って鏡に自分をうつす。

桐「え…えぇっ!?」

鏡に映ったのは、数年前のあたし…
小学一年生ごろの、まだ兄貴と仲が良かったころのあたしでした――――

続く



270 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/11(火) 15:43:22 ID:HPj4513u0 [2/7]
≫269続き

桐「な…っ何これ!?
いいい、意味わかんない!!
え!?えぇっ!?CG!?CGなの!?」

混乱したままに身体中を触ってみる。
…本物だ。CGじゃない。
こんな非現実的なことがあっていいわけ!?
…いや、でもなっちゃってるし…っ

カレンダーに目をうつす。
今日は土曜日だ、陸上の朝練がある。
でもこんな姿で参加するわけにもいかない。

桐「う…ぅぅうう…うううぅうっ…!」

そのとき、あたしは相当混乱していて、とてもじゃないけどコーチに電話なりメールなりするという選択肢に行き着くことが出来なかった。
それより先に行き着いたのは、誰に相談するかという事。
いくらなんでも今日から小学生です、なんて事にはなってほしくない。
とにかく、元に戻れる方法を一緒に考えてくれる人を思い浮かべた。

お父さん?…ううん、お父さんは信じないに決まってる。
お母さん?……近所に言いふらされるかもしれない。
あやせ?…に、会いに行く手段がないや
黒猫、沙織だってそうだ。
…と、なれば消去法で。

桐「兄貴…だよねぇ」

非現実(?)っぽいことに慣れてて、なおかつこの状況を把握してくれるとすれば兄貴くらいしかいない。
思い立てば即行動。
自室のドアを開き、次いで兄貴の部屋のドアをゆっくり開けた。

京「すー…」

…寝てた。
朝練に間に合うようにおきたんだからあたりまえだけど、兄貴はまだ寝ていた。

桐「ちょっ…人が大変なときに何寝てんのよ…っ!!」

なれない足の長さで四苦八苦しながらもベッドまでたどり着く。
そして、力いっぱい平手打ち。



271 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/11(火) 15:46:28 ID:HPj4513u0 [3/7]
ぺちっ

桐「…ッ」

ああああああぁああああ!もうっ!?
何でこんな力弱いのよ!?うううううぅぅっ!!!
少ない力で兄貴の頬を連打していると、1分たったあたりでようやく目を覚ました。

京「…ん…ッッ∑うおゎっ!?」

がばっと起き上がり、あたしをガン見する兄貴。
ちょ、ちょっと…そんなに見ないでよっ…!

桐「きもっ!!ガン見すんなシスコン!!」
京「あ、おま…っ桐乃か!?」
桐「そーよ!あんたのせいだからね!どうしてくれんの!」
京「な、何で俺のせいなんだよ!?」
桐「うっさい!とにかく何とかしなさいよ!!」
京「いや、意味わかんねぇよ!!ととととととりあえず現状を把握しろ俺…っ!!」

ぐぬぬ、という効果音がしっくりしそうな顔で考えこむ兄貴。

京「と、とりあえずだっこでもしてみるのがいいのかこれは…」
桐「なっ…!馬鹿じゃん!?何考えてんの!?キモイ!キモッロリコン!!」
京「そ、そうかそうだな…そうだ俺はロリコンだ…!?」
桐「落ち着きなさいよ!?今アンタ超変態なんだけど!?」

これが
小さくなったあたしと兄貴の初対面だった

287 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/11(火) 17:41:15 ID:HPj4513u0 [7/7]
>>271 続き

桐「とりあえずアンタ、お母さんとお父さんにうまく言っといて。
友達の家に泊まるとかでもいいから。」
京「へいへいっと」
適当に返事をされたけど、兄貴ならやってくれると思う。
そのあと、部屋に戻ってきた兄貴は、何故か朝ごはんを持ってきてくれた。
京「ほら、取って来たやった。元に戻るまでは部屋に居ていいぞ」
桐「…キモ。何妹監禁しようとしてるわけぇ~?」
京「なっそんなんじゃねーよ!?」
桐「はっどーだか!」
一応ご飯は食べておこうと、箸を手に取る。…が、ぽろりとおかずが落ちてしまった。なれない手では食べにくい。
京「…仕方ねぇな。ほら、箸かせ」
桐「命令すんなっ!」
半ば強制的に箸を奪われる。次いで兄貴は、あろうことか「あーん」といってきた。
桐「な…なっ…!」
京「お前食えねぇだろうが。口あけろって」
桐「むっ…し、しょうがないから食べてあげる!」
ぱく。兄貴に食べさせてもらうなんて馬鹿みたいで、顔が熱くなる。顔が赤く茹で上がったあたしをみて、兄貴はくすくすと笑った。
桐「あ…」
京「昔と同じだな。お前昔も箸使えなかったろ」
桐「う…うっさい!」
からかわれたり罵倒したりしながらの朝食はいつもより楽しかった。けど、そのあと幼児特有の睡魔があたしを襲った。
桐「…眠い」
京「ちょ、おい…?」
すーっと意識が遠くなる。あたしはその場で寝てしまった。

―数時間後―
身体がだるいような感覚になって目を覚ました。すぅっと横に目を向けると、そこには…兄貴の寝顔があった
桐「~~~っ!?////」
ごんっ!!!兄貴の頭を殴りつけて、ベッドから落とす。……あれ?力戻って…?
京「いってぇ~な!?このやろ…っ…あれ…戻ったのか?」
桐「え?う、うんそうみたいだけど」
京「良かったじゃねーか」
ちょっと残念だけどな。と兄貴が付け加える。キモイと罵倒してやったけど、そのあと頬が暑くなる。
ちょっとだけ仲良くなれたのかな…?なんて。
ちょっとだけ、幸せな体験だった

えんど



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最終更新:2011年01月14日 22:28