933 名前:1/3[sage] 投稿日:2011/01/16(日) 00:00:44 ID:/kDECuMY0 [1/4]
「ねぇ」
「ん? なんだ?」
「あんた、今週末か来週末、空いてる?」
「そうだな…今週末はちょっと無理だが、来週末なら空いてるぞ?」
「じゃ、その週末空けといて。か、買い物付き合ってもらうから」
「買い物? 秋葉か?」
「違う。渋谷だから、それなりのカッコしてよね」
「渋谷って…なんでまた? でかいもんでも買うのか?」
「違うっての。ほら、これ」
「これって…ああ、お前の載ってる雑誌か。これがどうしたんだ?」
「付箋が貼ってあるページ、読んで」
「ここか…? おぉ、お前のプロフィールが載ってるな。
 なになに…『高坂桐乃 休日は大好きなお兄ちゃんと買い物して―』ってオィィ!?」
「きゃっ!? な、なによいきなり…び、びっくりするじゃない!」
「あっ… す、すまん、驚かせちまったか」
「女の子にいきなり怒鳴り付けるなんて最ッ低ぇー」
「すまん、悪かったよ。ついうっかり―って、それはそうと、何これ?」
「ハァ? 見ればわかるでしょ。あたしのプロフィールじゃん」
「そ、それはわかるけどな? このだっ…大好きなお兄ちゃんと云々ってのは一体…?」
「ああソレ? あたし、仕事じゃ妹キャラってことで通してんの」
「そ、そうなのか? でもよ、それにしたってこれは…」
「それは…お父さんのアイデアなの。
 妹キャラで、かつお兄ちゃん大好きってことにすれば、変なヤツが寄って来辛いだろうって」
「な、なるほど…いや、考えてみれば確かに良いアイデアだ。
 恋人と違って、兄妹は一生別れることはないからな」
「っ! …そ、そうでしょ? 虫除けならこれが最適だろうって」
「さすが親父、こういうのは鋭いな。
 でもよ、それはわかったんだが、これと渋谷がどう関係してるんだ?」
「その…今度、読モのオフ生活を語るって感じの企画が予定されてて、
 それでどこでなにしたなんてのを書くことになりそうなの。
 だからあたしの場合、あんたと一緒に何かしてたってことにしないといけなくて…
 その…だ、ダメ?」
「…いいぜ」
「!! ほ…ホント? ほんとにホント?」
「ああ、本当だ。しかし桐乃、やっぱお前すげぇな」
「えっ…? な、なによいきなり」
「いやさ、プロだなって思ってよ。
 俺なんか、手伝いもどきのバイトくらいしかやったことないからさ。
 お前の仕事きっちりこなす姿勢、すげぇなって思うよ」
「べっ…別にたいしたことじゃないし。仕事なんだから当たり前でしょ」
「それが十分すげぇんだって。まあとにかく、そんなわけだからよ。
 及ばずながら、手伝わせてもらうぜ」
「あ…う、うん…そうしてくれると、助かる…かな」
「よし、来週末だな。服は以前お前が選んでくれた―――」

「―――じゃ、じゃあ…今日はよろしくね…?」
「おう、こっちこそよろしく頼む」
「う、うん…じゃ、行こ…?」
「ああ、まずはどこから回るんだ?」
「えっとね―――」

「―――結構買ったな。まさか両手が塞がるとは思ってなかった」
「ご。ごめん… その、あたしもいくつか持つから…」
「いいって。確かにがさばりはするが、別に持てない量じゃない。
 それにこれだけの量、お前一人じゃ無理だったろうから、二人で来て正解だったよ」
「うん…ご、ごめんね」
「どうしたんだよ。今日はやけにしおらしいな」
「べっ、別に? 何時も通りですケド?」
「そうか? ならいいけどな。さて、次はどこだ?」
「あともう一件、最後に―――」

934 名前:2/3[sage] 投稿日:2011/01/16(日) 00:01:31 ID:/kDECuMY0 [2/4]
「―――ここ、例の取材の時の…」
「うん。イブの時の…」
「あん時きゃ金足んなくて…あのアクセ、今も欲しいのか?」
「あれはクリスマス限定だからもう無いし。そもそもあんた、今だってそんなお金無いでしょ」
「さて、どうだろうな」
「なっ…へ、へぇ? じゃあ、こ、これ買ってよ」
「このリング? これが欲しいのか?」
「そ、そう」
「適当にこの場で見繕った…ってわけじゃなく、本当に欲しかったんだな?」
「だからそうだっつってんでしょ。ま、甲斐性無しのあんたに買えるわけが―――」
「いいぜ、買ってやるよ」
「―――え? 今、何て…?」
「だから買ってやるって。それ、本当に欲しかったんだろ?」
「う、うん。そうだけど…え? な、なんで?」
「適当に選んだんじゃないってなら問題ないだろ。店員さーん」
「ちょ、ちょっとあんた!? 5万だよ? あの時のアクセより高いんだよ!?」
「大丈夫だ。同じ轍は踏まない。あ、これお願いします」
「ちょ…え? え?」
「ほらこれ、欲しかったんだろ?」
「う、うん…」
「なら良かった。さてと、これで最後でよかったか?」
「うん、そうだけど…」
「なら、そろそろ帰るとするか―――」

「―――ね、ねぇ…まだ、起きてる…?」
「おお、起きてるぞ。どうかしたか?」
「きょ、今日のことなんだけど…い、色々ありがと… でも、なんで…?」 
「なんでって…何がだよ」
「その…付き合ってくれただけじゃなく、アクセまで買ってくれたり…」
「ああそれか… うーん、言わないとダメか?」
「だっ、ダメってことはないけど、教えて欲しい…かも…」
「あー… ちょっと恥ずかしいから、言わないつもりだったんだが…
 あのさ、例のイブの時、お前が最初に欲しがったアクセ、買ってやれなかったろ?」
「あ…うん…」
「あれ、実はすげぇ引っ掛かっててさ。後悔してたと言ってもいい。
 だからよ、もし次に機会があればと、ずっと思ってたんだ」
「え…で、でもあんた、あの時は…」
「そうだな。とてもじゃないが、そんな雰囲気じゃなかったよな。
 正直、面倒で仕方ねぇって思ってたしよ」
「っ…!」
「でもな、しばらくしてから思ったんだ。あんときゃもっと上手く振る舞えたんじゃねぇかって」
「え…」
「そりゃ取材だったかもしれねーし、轢かれろなんて無茶振りもされたさ。
 でもよ、仮にもイブに一緒に出かけて、あれはなかったんじゃねぇかってな。
 で、もし次に機会があればって思って、それに備えてたわけ」
「だから『同じ轍は踏まない』って…?」
「そういうことだ。アクセ買えるだけの持ち合わせがあったのも、それに備えて貯めてたからさ」
「そ、そうだったんだ…」
「ああ。だから今回お前の仕事を手伝えたのは、まさに渡りに船だったよ」
「っ!? あ…そ、それは…その…」
「ん? どうした?」
「なっ、なんでもないっ! なんでもないからっ!」
「そうか? ならいいが」
「う、うん…でも、なんで…?」
「なんでって…今説明したじゃねーか。聞いてなかったのかよ?」
「そ、そうじゃなくてっ!
 イブのことをどう思ってたのはわかったけど…なんで、そこまでしてくれんの…?」

935 名前:3/3[sage] 投稿日:2011/01/16(日) 00:02:18 ID:/kDECuMY0 [3/4]
「そ、そりゃお前…そこまで言わなきゃダメか…?」
「だっ、ダメっ! こっ、ここまできたら、最後まで話しなさいよ…!」
「さ、察してくんねぇかな…わかるだろ…?」
「そ、そりゃ… でっ、でも違うかもしれないし! ちゃ、ちゃんとあんたの口から説明して!」
「ぐ…し、仕方ねぇな…い、一回しか言わないぞ?」
「う…うん…っ」
「妹が大事だから…じゃね?」
「っ!!!? あ、あ、あんたっ、あんた…っ!! なな、なに言って…!?」
「う、うるせえな… 理由なんて、じ、自分でも、そんくらいしか思い付かねぇよ…」
「い、いくらシスコンだからって…お、おおおかしいんじゃないの…!?」
「く…だ、だから言いたくなかったんだ…!」
「きっ、キモっ! 超キモッ! キモすぎ!」
「キモキモ言いまくりやがって…! お前は御堂筋か! どうせ俺はシスコン、妹道だよ!」
「もはや妹道すら超越したんじゃない? 妹皇って呼んであげようか?」
「なにその『この妹の兄貴は誰だあっ!』とか言いそうなの!?」
「それは至高の人でしょ。あーキモいキモい、ほんっとーにキモかった」
「クソッ…やっぱ言うんじゃなかった…!」
「でもさ妹皇」
「妹皇じゃねぇ! …なんだよ?」
「その…感謝は、してるから…ホントに」
「えっ…?」
「きょ、今日はホントに、あありがとう…プレゼントも…凄い嬉しかった…よ?」
「っ!? あ、ああ…そうか、なら、良かった…」
「う、うん…」
「………」
「………」
「じゃ、じゃあもう寝るね?」
「お、おう。お休み」
「お、お休み………
 ―――ね、ねぇ?」
「ん? どうした?」
「あの…さ… まっ、またっ、またででっ…でぇー…」
「?? マタデー?」
「で、デパート! デパートに買い物行くから!」
「デパート? お前にしちゃ渋い選択だな。親父かお袋に贈り物でもするのか?」
「そっ、そうなの! うん、そういうことなの! だ、だからあんたも付き合いなさいよ!?」
「お…ああ、そういうことなら。日時とか決まってるのか?」
「ま、まだだから…仕事のこともあるし、これから調整するから…
 だからあんたも週末の予定、ち、逐一教えてよね?」
「了解した。できるだけ連携取れるようにしとく」
「う、うん…お、お願い………じゃ、じゃあ、お休み…」
「おう、お休み―――」

「―――デパート…デパートって何ソレ!? 何言ってんのあたしは…!
 別にお父さんやお母さんに贈り物するのが嫌なわけじゃないけど、そうじゃないでしょ…っ!
 しかも、今日はせっかくその気になって付き合ってくれたのに、
 仕事なんて嘘ついた後ろめたさで、素直に楽しめなかったし…!
 あたしのばかばかばか…っ!!

 ………はぁ。
 でも、またあたしのこと、大事…って…えへへ、嬉しい…な………
 見てなさいよ…次はきっと言ってみせるから…『京介、デートしよう』って―――」



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最終更新:2011年01月16日 19:25