677 名前:そのままの君が好き【SS】1/2[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 00:15:45 ID:zWFPZC/70 [1/2]

「ね、ねぇ」
「ん? どうし―――………」
「な、なによ。いきなり黙り込んで」
「桐乃…だよな…?」
「ハァ? そうに決まってるでしょ。他の誰に見えるワケ?」
「いやその…髪…なんで…?」
「ああこれ? 新しいスプレー出たから試してみたの」
「試すってお前…茶髪、止めるのか?」
「違うって。これは洗えば落ちるやつ。でも、仕上がり自然な感じでしょ?」
「あ、ああ…確かに。でもよ…その、眼鏡は…?」
「これは今度の撮影で使う小道具。ぶっつけ本番で不自然だと困るから、慣れておこうと思って」
「な、なるほど…相変わらずプロだな。さすがだよ」
「べ、別に… で、どう?」
「どうって…その髪と眼鏡か? まあ、良いんじゃないか?」
「何ソレ。適当すぎ。ぜんっぜん心がこもってないんですケド!」
「んなこと言ってもよ…お前、どんな格好しても様になっちまうからなあ」
「っ!? そ、そう…?」
「ああ。服だってどんなのでも着こなしちまう感じだし、さすがモデルだけのことはあるって思うぜ」
「あ、あたしくらいになれば、そんくらいは当たり前だし? 別に大したことじゃないケド?」
「ただな…」
「? なによ?」
「俺は素人だから、難しいことはわからないが…何か、違和感のようなものはある」
「え…それって、どんな…?」
「何て言ったらいいのかな…確かに服から何から様にはなってる。
 でも、似合ってはいないというか…」
「…!」
「前に、沙織の家でクイーンのコスプレしたことがあっただろ?
 あの時もそうだったんだが、着こなしちゃいるが、別物って感じだったんだよな」
「ッ! あ、あっそう!
 別にあたしも、黒いのみたいにクイーンになりきるつもりなんてなかったし?
 これだって、たまたま仕事だからやってみただけだしっ!」
「なっ…い、いきなりなに怒ってんだよ!?」
「うっさいバカ! あやせはマイエンジェルなんて呼んだり、ベッドの下は眼鏡ものばっかのくせにさぁ!」
「ちょ!? そ、それは関係無いだろ!?」
「あるでしょ! あんたの審美眼に関わることなんだから! あーキモいキモい!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ桐乃―――って、行っちまった…ったく…」

「―――おーい、桐乃ー」
「………」
「いるんだろー? 入っていいかー?」
「…何?」
「いやさ、さっきの話、途中までしかできなかったからよ」
「ハァ? どうせ似合ってないで終わりでしょ」
「だから違うんだって! 話は最後まで聞けっての!」
「ウザ…っ なに必死になっちゃってんの? キモいんですケド」
「そりゃ必死にもなるわ。お前に勘違いされたままは嫌だからな」
「! …キモっ…」
「なあ、頼むから話を聞いてくれよ」
「…勝手にすれば。廊下に突っ立ってられても迷惑だし」
「! おお、そうだな。じゃ、入らせて貰うぜ―――」

678 名前:そのままの君が好き【SS】2/2[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 00:16:39 ID:zWFPZC/70 [2/2]
「―――で、話って?」
「ああ、さっきの続きなんだけどな…
 様にはなってるけど、似合ってるとは感じない、そこまでは話したよな?」
「どうせあたしはあやせや黒いのみたいに綺麗な黒髪じゃないし、眼鏡も不慣れで不格好だってんでしょ」
「だから最後まで聞けって。
 確かに似合わないとは感じるが、別に綺麗じゃ無いとか、不格好って思うわけじゃねぇんだって。
 そもそもそんなふうに思ってたら、様になるなんて言うわけないだろ?」
「じゃあなんだってのよ」
「その…なんつーかなぁ…いつも通りのお前が一番じゃね? って思ってよ」
「…何ソレ?」
「だからな…黒髪も眼鏡も、別に悪いわけじゃない。ただ、蛇足じゃねーかとも感じるんだよ。
 お前、素のままが一番可愛いんだし」
「っ!!!! なな、なによそれ!?」
「いやだから、何も付けてないのが一番だってこと」
「なっ…なにっ…なにっ…何も付けてないっ!? あ、あんた…妹ひん剥いて素っ裸にするってのっ!?」
「ちげぇーよ!? どうしてそうなるんだよ!?」
「だっ、だってあんた…何も付けてないって…っ!」
「なんでそれがひん剥くに直結するんだよ!? エロゲ脳すぎんぞ!?
 とにかく! そういうことじゃなくてだな?
 俺が言いたいのは、いつものままのお前が、お前らしいお前が一番だってことだ!」
「なッ…!?」
「確かにお前の言う通り、あやせや黒猫の黒髪は奇麗かもしんねぇよ?
 でもお前の髪だって十分奇麗だし、そもそも地毛の時点で栗毛だろ?
 染めるの止めて地毛に戻すってならともかく、茶髪から黒髪じゃ、
 『らしくない』感じがしちまうんだよ、眼鏡も同様にな」
「で、でもあんた、黒髪巨乳眼鏡フェチなんでしょ? そうじゃないとその…し、しないんでしょ…?」
「女の子がなんてこと言ってんの!? 人前では絶対言うなよ!?
 とにかくだ! 俺は『らしくないお前』じゃなく、『いつものお前』が一番好きなんだよ!」
「!!!!!!! …っ! …っ! …っ! ~~~~っ!!!!」
「…はっ!? 俺、とんでもないこと言わなかったか?」
「こっ、このっ! このっ! このッ! このバカッ! 変態っ! シスコンッ!」
「す、すまん! 俺が、俺が悪かったから! 殴るな! 殴るなって痛てぇ!?」
「変態! 変態! この変態っ!」
「悪かった! 悪かったって! すまん! この通りだから許してくれ! な?」
「ハァ…ハァ… あー、ほんっっっとキモかった!」
「す、すまん…俺の言い方が悪かった…」
「ま…まあでも? いつものあたしが一番可愛いのは、あたし自身がわかってることだし?
 あんたに言われるまでもないけどね?」
「自意識過じょ…なんでもないですごめんなさい」
「ふん…でもあんた、良い機会だから、自分のことも見直した方がいいんじゃないの?」
「お、俺の…?」
「そう。いっつもダッサいカッコしてさ、一緒にいて恥ずかしいんですケド?」
「ダサくて悪かったな。別にいいだろ、俺のことは」
「ダメ。あんたが良くてもあたしが良くない。
 よし決めた。今度の週末、あんたの服買いに行くから」
「ちょ…!? 服ってお前、前に選んだ貰ったので十分だろ?」
「毎回一張羅なんて恥ずかしいでしょ。いいから、週末空けときなさいよ」
「はぁ…わかったよ、妹様の仰せのままに」
「ふっふーん。最ッ高ぉーのヤツ、選んでやるんだから。覚悟しときなさいよね!」



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最終更新:2011年01月22日 23:16