912 名前:予行演習【SS】[sage] 投稿日:2011/01/30(日) 02:10:03 ID:JRQqzuj/O
兄貴が車の免許を取って半年、ようやく運転も様になってきたようだ。
「ねえ、相談があるんだけど」
「ん、なんだ?」
「今度のお父さんとお母さんの結婚記念日なんだけど、旅行をプレゼントしたいと思ってるんだ」
「おお、いいんじゃねえの」
「それでね、せっかくのプレゼントだから、失敗がないように『予行演習』をしときたいんだけど・・・」

てわけで、スポンサーはあたし、運転手は兄貴という内容の『予行演習』をすることになった。


『宇宙にきらめ~く流れ星☆』
西に向かう高速道路、早速の渋滞に突入して兄貴はうんざりし始めたようだが
あたしは「めてお☆いんぱくと」を始めとするアニソンを熱唱して兄貴のテンションが下がらないように気を配った。

ようやく沼津で高速を降りる。そのまま港に向かい、調べてあったお店で
新鮮な海の幸のお昼ご飯。
「うん。すげえウマいな。しかし桐乃、よく調べてあるじゃん」
「『予行演習』なんだから当然でしょ。ヘマがあったら大変じゃん」

お腹いっぱいになって兄貴の身も心もリフレッシュしたところで車は伊豆半島を南下する。
イルカのショーで水しぶきがかかったり、金山の砂金取り体験に目の色を変えたりしながら
『予行演習』の一日はあっという間に過ぎていく。

「今日のラストは、夕日の綺麗な岬だから、そこへ行くわよ」
「へえ、ロマンチックじゃん。て、なんだ?『恋人岬』って書いてあるぞ」
「お父さんとお母さんに恋人気分になってもらいたいの。それにここは年齢問わず
愛する人たちの聖地になってるんだから。
これも『予行演習』だからね」

車を降りて暫く歩くと、岬の先端の展望台についた。
夕焼けの中、海の向こうに富士山が見える。綺麗な景色にあたしと兄貴はしばし見とれていた。

「じゃあ兄貴、記念に鐘を鳴らすわよ」
「まさか、この『ラブコールベル』とか言うののことか?」
「3回ならすと幸せになれるって鐘なんだから、鳴らさなきゃ損じゃん」
「はいはい、これも『予行演習』なんだろ」


帰路の車中
「まあ、なんだ。結構いい旅行プランじゃないのか。
これなら親父とお袋も満足すると思うぜ。俺自身的にも、楽しかったよ」
「そう言って貰えると、あたしも満足、かな」


・・・ちゃんと兄貴と鐘も鳴らせたし、記念品の「恋人証明書」も発行して貰った。
勿論『予行演習』で両親の名前を勝手に書いたらまずいってことで
名前はあたしと兄貴の名前になってる。

今日は『予行演習』って名目を借りちゃったけど、
またいつか、本当のカップルとして、ここで兄貴と愛を誓える日が来るといいな・・・



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最終更新:2011年01月31日 00:41