472 名前:スレ住民きりりん【SS】[sage] 投稿日:2011/02/01(火) 18:01:04 ID:Bk8opI9O0 [8/16]
「こンの、あたしの話を聞けっての!!!!!」
深夜、突然隣の部屋から聞こえてきた怒号と物音に、俺は慌てて部屋を出る。
そのまま隣、桐乃の部屋のドアを開けると、怒髪に眉を反らせ真っ赤な顔の妹様が、阿修羅の如く暴れまわっていた。
こ、こえーっ。
「きいいいいいーっ! むかつくムカツクむかつくーッ!!」
「お、おい落ち着け桐乃! 一体どうしたってnプゴハアッ!!?」
顔面に投げつけられた緑色のタコが、俺の台詞をさえぎる。
痛ってえ。マジギレモードじゃねーか。だが、ここで引くわけにはいかない。阿修羅の瞳が涙で潤んでいるのを見ちまった以上は。
「何しやがる! おmペフォッ!? い痛いから!投げるのやめ!投げるの無し! 痛ッ、話を聞けええぇぇぇぇえぇぇえっ!」

はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ
ほとんど取っ組み合いの喧嘩に近いことをしながら、ようやく桐乃を座らせることに成功。
怒り心頭の桐乃から何とかその理由を聞き出し、ただ今絶賛説得中だ。

「そうやって、ムカついたからってそのままスレに書き込んだら、余計に油注ぐだけだろ。またお前を悪く言うコメントがついてイライラするだけだ。
 それに、ここを見てる他の人まで気分悪くなるんじゃないのか? お前と同じ気持ちになっちまうんじゃないのか!?」
「ぐっ……じゃあ、じゃあ!この気持ちをどうしろってのよ?」
「ええと……枕とかを叩いて発散?」
「それをやってたらアンタが止めに入ったんでしょーがあッ!!!」
ばふんっ。緑タコを顔面で受け止めながら、俺は自分でも今の発言はねーわぁと後悔していた。
桐乃は先程よりも激しく、部屋のぬいぐるみたちを痛め付け始めている。
まったく、しょーがねぇなぁ!

「桐乃!」
「ひぇあっ!?」
暴れまわる桐乃の後ろから、腕を回し、その動きを封じ込める。
「あああああああんた何何何しっ――」
「俺にぶつけろ」
「きゅうッ!? み、耳元はっ」
「俺が受け止めてやる! だから、桐乃の気持ちは、全部俺にぶつけろ! 他のどこにも、誰にもやるんじゃねえ! 俺にだけぶつけろ!!」

「…………」
我ながら、勢いだけに任せた言動だった。だが意外にも、桐乃は動きを止めてくれている。
しかし、怒りは全く収まっていないようで、頬や耳だけでなく、うなじまで湯気が出そうなほど真っ赤に染めている。
この角度からではその表情は見えないが、親父譲りの眼光で煮えくり返っているに違いない。目の合わない体勢でよかったぜ。
「……っは……ぁ」
もぞ、と、俺の腕の中で桐乃が身じろぎしたのが分かる。
またいつ怒りが爆発してもおかしくない、一触即発の状態だ。また暴れだしたら今度こそ手に負えない。
俺は腕にさらに力を込めて、つとめて落ち着いた、優しい声を出して言った。
「な……? 俺にだけにしてくれ。頼むよ」
「………………うん」
ふぅ。……しかし実際は一件落着どころじゃない。俺は自分で、桐乃の怒りを全部もれなく被弾する選択肢を選んじまった。本当の大馬鹿だぜ。
これからの自分の惨状を諦観しつつ想像していると、桐乃は消え入りそうなくらい小さな声を出した。
「さ、最初から……あんた以外にあげるつもり、ないし……」

……なんて妹様だよコイツは!最初から全部俺に八つ当たりするつもりだったのかよ!
「お前……」
「だ、だから……もうちょっと……このまま…………してなさいよ……」
最後のほうはさらに小さな声。震えている気もする。そんなにデカい怒りなのかよ?俺がまだプロテクトしとかないと抑えられないくらい?
……まったく。しゃーねーな。
俺はさっきから鼻腔をくすぐる桐乃のシャンプーの匂いに惑わされないよう、必死に顔を背けつつ、強く妹を抱きしめ続けたのだった。

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最終更新:2011年02月02日 18:24