654 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/02/14(月) 17:21:52 ID:NPFUat67P [2/5]

 2月14日。
 この日が何の日かと問われれば、バレンタインだと答えるだろう。
 日本というこの国の風習からすれば、この日は好きな人に想いを込めてチョコを渡す日だと相場が決まっている。
 それはただの仲のいい友達同士だったり、恋人だったり、夫婦だったり。
 小さい子供からいい年をした大人まで、時にはお年寄りすら行う微笑ましいものだ。
 それは勿論自分達にも当てはまるわけで。
 紆余曲折の末に家庭に入ることとなった自分もそれの用意をしているわけである。

「なにつくってるの?」

 ボールに入った解けたチョコを娘、京(みやこ)が不思議そうにみている。
 まだまだ小さい娘にはこの日の意味がよくわかっていないのだろう。
 だから一言チョコを作ってるとだけ答えておく。

「あ、しってる!きょうはばれんたいんっていうんでしょ?
 すきなひとにチョコレートあげるひだっておともだちがいってたよ!」

 なんとまあ、最近の子供はマセてるというかなんと言うか。

「あれ?でも……」

 なんとなく、娘が何を言いたいのかはわかるので、苦笑しながら頭をなでることでその先を言わせないようにする。
 もうすぐ終わるから少しだけリビングで待っているように言うと

「うん」

 と、素直な返事が返ってくる。
 娘が可愛く育ってくれていることに頬が緩んでしまうのはやはり親バカだろうか。
 気を取り直して作業を進めるとする。とはいえ既にチョコは溶けているのから、型に流し込んで固めてデコレーションをして出来上がりだ。
 ふと時間を見てみればもうすぐあいつが帰ってくると言っていた時間だ。急がないと。
 手早く作業を終わらせて簡単にラッピングする。
 すると丁度

「ただいま」

 玄関からあいつの声が聞こえた。予定より少しだけ早い。娘と一緒に急いで玄関まで出迎えに行く。

「おかえり」
「ただいま」

 そう言いつつお互いの頬にキス。
 隣の娘が「あたしもあたしも!」というから娘も交えて皆で頬におかえりのキス。
 一度この場を黒猫や沙織にみられてしまい

『バカップル乙』
『いやはや、京介氏にきりりん氏はいつまでたってもお熱いですなー!』

 とからかわれたこともあった。
 でもやめるつもりは毛頭無いとだけ言っておく。

「そうだ。京介、はい、チョコレート」
「お、ありがとな桐乃。嬉しいよ」

 数年前ならいざ知らず、今となってはこういったことには大して抵抗が無くなった。
 ま、夫婦になってもう何年もたつんだから当たり前といえばあたり前なんだけど。

「それじゃ、俺からも。ほら」
「は?なんでアンタがそんなもの用意してんのよ?」
「いや、なんとなく。『逆チョコ』ってのがあるって聞いたからさ。俺も作ってみた」
「ふーん。わざわざラッピングまで……開けていい?」
「おう」

 カサカサと音を立てて桐乃がラッピングを開いていく。そして中を見て固まった。

「ちょっと…」
「なんだ?もしかして気に食わなかったか?自分としては会心の出来だったんだが」
「そうじゃない!あんたなんでこんなに上手く作れるのよ!これじゃあたしの立場ないじゃん!」
「いや、俺にそんなことを言われてもだな……」

 何で俺は怒られてるんだろうか?俺何か悪いことしたか?
 確かに家事の暇にかまけて無駄に凝った作りにしてしまったことは認めるが。

「う〜……っ!」

 文句を言った姿勢のまま唸っていたかと思うと、バシッ!とさっき受け取ったチョコをひったくられる。

「おい、何すんだ!」

 せっかくお前からもらえたチョコだって言うのに!

「うっさい!こんなもの渡されて黙ってられるかっての!今から作り直す!」

 おいおいおい、今から作り直すってそれ今日中に終わるのかよ

「いや、考え直せって!俺はそれでも十分嬉しいから!仕事から帰ったばっかで疲れてるだろ?だから無理すんなって!」
「うっさいって言ってんでしょ!?それとアンタも手伝いなさいよ!」

 えー、なにそれ。自分で貰うチョコ作るの手伝うとか意味わからんのだが。俺に拒否権なしっすか。
 あーもう。この妹嫁様はいつまでもかわりゃしねえ。こうなったら意地でもつくるんだろうなぁ。
 そんなことを思いつつ仕事着のままリビングに入っていく桐乃を追っていく。
 今日もまだまだくつろげそうもないなこりゃ。


 そんなこんなで騒がしい日々は続いているのである。



 あ、勿論二人で作ったチョコは大変おいしゅうございました。



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最終更新:2011年02月18日 01:50