二百年も待ったのだ ◆hqLsjDR84w
◇ ◇ ◇
蒼月紫暮とルシール・ベルヌイユの二人は、小学校に向かう道中で放送を聞くことになった。
両者ともによく知る名が読み上げられたのだが、彼らは決して歩みを止めない。
それどころか僅かに速度を緩めることすらせず、放送前と変わらぬ速度で進み続ける。
両者ともによく知る名が読み上げられたのだが、彼らは決して歩みを止めない。
それどころか僅かに速度を緩めることすらせず、放送前と変わらぬ速度で進み続ける。
「多い、ですね」
「そうだね」
「殺し合いに乗り気なものが多い、ということでしょうか」
「だろうね」
「そうだね」
「殺し合いに乗り気なものが多い、ということでしょうか」
「だろうね」
会話はこれで切り上げられ、二人の間を静寂が広がる。
自分の知る名が呼ばれたことは、相手に悟られないようにしよう。
そんな両者の思惑は、しかし失敗に終わっていた。
そして、その事実にはどちらも気付いていなかった。
自分の知る名が呼ばれたことは、相手に悟られないようにしよう。
そんな両者の思惑は、しかし失敗に終わっていた。
そして、その事実にはどちらも気付いていなかった。
◇ ◇ ◇
目的地である小学校のすぐ近くまで到着し、二人は足を止める。
紫暮は法力僧の突出した視力で、ルシールは人形破壊者(しろがね)の優れた視力で、小学校の内部を覗き込む。
そんな行為に及んでいるのには、きちんと理由がある。
遠目にも分かるほど明らかに、小学校が見る見る崩壊しているのだ。
強大な力を持つなにものかが、暴れ狂っているとしか思えない。
紫暮は妖(バケモノ)を、ルシールは自動人形(オートマータ)を、それぞれ想定して目を凝らす。
紫暮は法力僧の突出した視力で、ルシールは人形破壊者(しろがね)の優れた視力で、小学校の内部を覗き込む。
そんな行為に及んでいるのには、きちんと理由がある。
遠目にも分かるほど明らかに、小学校が見る見る崩壊しているのだ。
強大な力を持つなにものかが、暴れ狂っているとしか思えない。
紫暮は妖(バケモノ)を、ルシールは自動人形(オートマータ)を、それぞれ想定して目を凝らす。
はたして、予想が的中したのはルシールのほうであった。
ふくよかな身体を覆うのは、道化の衣服。
黒いハットに、同じく黒いマスク。
長く伸びた顎ひげと口ひげ。
黒いハットに、同じく黒いマスク。
長く伸びた顎ひげと口ひげ。
――破壊を巻き起こしていたのは、ルシールの息子の仇・ドットーレであった。
その姿を捉えた瞬間、ルシールの脳内に二百年前の惨劇がフラッシュバックする。
過去の記憶が憎悪に転じ、さらに怒りが入り混じり、最終的に殺意へと至る。
過去の記憶が憎悪に転じ、さらに怒りが入り混じり、最終的に殺意へと至る。
「ドットーレ……ッ!」
意図せず零れた自身の声により、ルシールは平静を取り戻す。
この殺し合いに呼び出される直前ならばともかく、現時点では打つ手がない。
殺しようがないし――絶望させることだってできない。
自分にその事実を認識させ、少しずつ頭を冷やしていく。
憎悪はかけらも霧散させることなく、すべて抱え込んだままで。
この殺し合いに呼び出される直前ならばともかく、現時点では打つ手がない。
殺しようがないし――絶望させることだってできない。
自分にその事実を認識させ、少しずつ頭を冷やしていく。
憎悪はかけらも霧散させることなく、すべて抱え込んだままで。
「知った相手ですかな?」
「ああ、そうだね」
「ああ、そうだね」
尋ねてくる紫暮に返す声は、平時と変わらぬ落ち着いたものだった。
「とてもいまの状態で勝てる相手じゃないよ。
もっと道具を揃えて準備した上でないと、ね。
なにがあったのか知らないが、運がよかったよ。
アイツが逆上して暴れている間に、距離を取ってしまうよ」
もっと道具を揃えて準備した上でないと、ね。
なにがあったのか知らないが、運がよかったよ。
アイツが逆上して暴れている間に、距離を取ってしまうよ」
自分自身に言い聞かすように、ルシールは言い切った。
いま焦っては仕方がない。
確実に、仇を取るのだ。
二百年も待ったのだから――
いま焦っては仕方がない。
確実に、仇を取るのだ。
二百年も待ったのだから――
身体を疾風としたルシールを追いつつ、紫暮は思考を巡らす。
妖に匹敵する死臭の持ち主を前に、逃亡以外の選択肢がない。
そんな現状が、とても口惜しかった。
せめて法具があれば――と、手元にない道具に期待をせずにはいられない。
ルシールの抱いた殺意に勘付いていながら、いまは素知らぬ顔をするしかないのだ。
妖に匹敵する死臭の持ち主を前に、逃亡以外の選択肢がない。
そんな現状が、とても口惜しかった。
せめて法具があれば――と、手元にない道具に期待をせずにはいられない。
ルシールの抱いた殺意に勘付いていながら、いまは素知らぬ顔をするしかないのだ。
【B-2 小学校/一日目 朝】
【ドットーレ@からくりサーカス】
[時間軸]:本編死亡直前
[状態]:健康
[装備]:バルカン@金色のガッシュ!!
[道具]:基本支給品一式、声玉@烈火の炎
[基本方針]:優勝し、柔らかい石を手に入れフランシーヌの元へ帰る。清磨の知り合いを全員殺して清磨に『笑顔』を届ける。あの人間(横島)を八つ裂きにする。
[時間軸]:本編死亡直前
[状態]:健康
[装備]:バルカン@金色のガッシュ!!
[道具]:基本支給品一式、声玉@烈火の炎
[基本方針]:優勝し、柔らかい石を手に入れフランシーヌの元へ帰る。清磨の知り合いを全員殺して清磨に『笑顔』を届ける。あの人間(横島)を八つ裂きにする。
【B-2 小学校付近/一日目 朝】
【ルシール・ベルヌイユ@からくりサーカス】
[時間軸]:真夜中のサーカス襲撃直前
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM84
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(確認済み)
[基本方針]:ドットーレを『確実に』殺す。そのためなら、多少遅れてもいい。
[時間軸]:真夜中のサーカス襲撃直前
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM84
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(確認済み)
[基本方針]:ドットーレを『確実に』殺す。そのためなら、多少遅れてもいい。
【蒼月紫暮@うしおととら】
[時間軸]:詳しくは不明だが、とらとは面識がある状態、かつ白面を倒す前からの参加
[状態]:健康
[装備]:鍋の蓋
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(未確認)
[基本方針]:潮を探す。ドットーレからは離れる。慣れた法具が欲しい。
[備考]:ルシールを少しだけ警戒しています。ドットーレへの殺意に勘付きました。
[時間軸]:詳しくは不明だが、とらとは面識がある状態、かつ白面を倒す前からの参加
[状態]:健康
[装備]:鍋の蓋
[道具]:基本支給品一式、支給品0~2(未確認)
[基本方針]:潮を探す。ドットーレからは離れる。慣れた法具が欲しい。
[備考]:ルシールを少しだけ警戒しています。ドットーレへの殺意に勘付きました。
投下順で読む
時系列順で読む
キャラを追って読む
086:オヤジよりさらに年上のばーさん | ルシール・ベルヌイユ | 117:殺したらおわり(前編) |
蒼月紫暮 | ||
076:横島忠夫、清麿と出会う(前編) | ドットーレ | 088:問答 |