檻のなかの獣 ◆hqLsjDR84w



 ◇ ◇ ◇


 動物園の入場口は閉ざされていた。
 本来は受付で購入したチケットを係員に見せることで入園を許されるようだが、どうやらこの場に係員はいないらしい。
 顎に手を当てて考え込むジョージ・ラローシュの前で、コウ・カルナギは入場口に大振りな蹴りを放つ。
 ARMS適正者の意識をも奪う蹴りに耐え切れるはずもなく、やかましい音を立てて入場口が吹き飛んでいく。

「道が開いたぜ」

 不敵な笑みを浮かべてふんぞり返るカルナギに、ジョージは肩をすくめる。

「やれやれ。いい加減に私の話を聞いてくれてもいいと思うがな、カルナギ。
 さっきの自動ドアのときも言ったが、そういうゲートには通る手順というものがあるのだ。
 その手順を踏まないにしても、お前の身体能力ならばわざわざ破壊せずとも容易に跳び越え――」

 言い聞かせるようなジョージの言葉は、半ばまでしか告げられない。
 まだ話の途中だというのに、カルナギの拳が腹に叩き付けられたのだ。
 その衝撃で五メートルほど後ずさってから、ジョージはゆっくりと歩み寄っていく。

「手加減をしてくれるのは嬉しいが、いっそ殴らないでくれるともっと嬉しいのだが」
「手加減? この俺が? テメェに? はッ、なに言ってやがる」

 眉をひそめるカルナギに、ジョージもまた眉をひそめる。

「何度も殴られたのだから、さすがに分かる。
 最初に出会ったときのような威力で殴られれば、私は後ずさりする程度で済んでいない」

 意図せず、カルナギはジョージから目を逸らす。
 彼の全体が銀色をした奇妙な瞳が、すべてを見透かしているようだった。
 そんな意図を察するでもなく、ジョージは怪訝そうに首を傾げる。
 その素振りが、カルナギにはとても苛立たしく感じられた。

「知らねえよ、この銀目野郎」

 なのでもう一発蹴りを見舞って、ずかずかと動物園へと入っていく。

「殴らないでくれると嬉しいというのは、蹴りならば構わないという意味ではないのだがな……」

 背後でなにやら聞こえていたが、カルナギは聞き流すことにした。

 しばらくして追いついたジョージとともに、動物園を歩いて回る。
 他の参加者を探しているのはジョージだけで、カルナギのほうはどうでもよかった。
 このプログラムを破壊するのが目的ではあるが、面倒なことをするつもりはない。
 それは、同行者の役割だ。
 カルナギは、ただ活きがいい相手がいれば暴れるだけである。
 そのように思っていたからこそ、すぐに反応することができた。

 いきなり襲いかかってきた――巨大な虎に。

 咆哮を上げて飛びかかってきた虎に対し、カルナギが放ったのは蹴りだ。
 鋭い牙を見せびらかすように大きく開けた口の、その下をピンポイントに掬い上げた。
 下顎が上顎に激突する衝撃は、脳にまで及ぶ。
 ましてやコウ・カルナギの一撃である。
 人間はもちろんサイボーグ兵士や強化人間すら、その衝撃には耐え切れない。
 脳を揺らされて倒れるのではない。
 骨と筋肉が耐え切れずに、『首ごと千切れ飛んでいく』のだ。
 秘密結社・エグリゴリの技術の結晶が、肉食獣ごときに及ばぬはずがない。
 にもかかわらず――

「はッ、なんだテメェはッ!?」

 虎は首が千切れ飛ぶでも、脳震盪で意識を失うでもなく。
 痙攣すらしていない両脚で立ち上がり、カルナギを睨み付けていた。

「ふむ、『ビースト』というらしい。
 そこの看板に書いてあるのが正しければな」

 見当違いの返答をしたのはジョージだ。
 カルナギは一発ブン殴ってやろうかとも思ったが、ビーストが低く屈んだので取りやめる。
 強靭な後ろ足でもって跳び上がる際の事前動作だ。
 その予想通りに、ビーストは勢いよく跳び上がった。

 カルナギではなく――ジョージ・ラローシュのほうへと。

 獰猛な笑みを浮かべて、カルナギもまた跳び上がる。
 空中で身体を捻って、飛び蹴りの体勢となった。

「させねえよ」

 言い終えるよりも早く、赤黒い液体が辺りに撒き散らされる。
 カルナギの飛び蹴りが突き刺さったのは、ビーストの眼球であった。
 眼孔に足を突っ込んで眼球を砕き、そのまま脳を抉り込む。
 虎の強固な骨などでは、カルナギの肉体を遮る障害物にはなり得ない。
 先ほどまでの低い咆哮とは似ても似つかぬ甲高い悲鳴を上げて、ビーストは動かなくなった。

「どうやらこの動物園には、いろいろと仕掛けがあるらしいな。
 キース・ブラックも、ただ殺し合わせるだけではない……ということか」

 一人頷くジョージをよそに、動物園のいたるところからかしゃんかしゃんと奇妙な音が響く。
 ビーストが現れる直前にも聞こえた檻の施錠が解除される音だ。


 檻のなかで閉じ込められていた腹を空かせた猛獣たちが、いま一斉に解き放たれる――!




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 ※黒炎です。AAが見つからなかったので、黒くて雷を使ってかつサンデーの作品であるキャラで代用しました。




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     /シ、  ヽ⌒⌒ /   リ \
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    |   `ー――----┴ ⌒´ )
    (ヽ  ______ ,, _´)
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 ※ライオンです。まっとうなライオンのAAがなかったので、ラジオ実況スレでよく張られていたもので代用しました。




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 }  出 死  {       ミ,;:;:;:;:。...。:;:;:;ヒヾ      }  逃 み  {
 }  る 人  {     )、-┌┐;:;:.゙,..,゙:;:;:nゝ  ,    }  げ ん  {   ←これは、動物園にある動物の説明が書いてある看板です。
 」  ぞ が  {   ノ、/;:;:;:;:l・ ,,l;:;:;:´;:;`:;:;l ̄l`';:'-ノ_,. 」  ろ な  {
 }  ぉ     { }ヽソ;:;:;:;:;:;ノt-n';:;:;:;:;:;:;:;ノ,::,_l;:;:;:;:;:;;:;7 }_  ! !  `  {
 }_  ! !    {/;:;:;:;;:;:,、;:;,:l LLLlヽ;、;:;:ノEEEl;:;:;:;:;:;:;:}_ /__   _「
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              ,、ノ'´;:;:;:;:;:;:;:`ヽl, ,、`ヾ\:ミ、゙
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           ノ!ノl´;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;;:;:;:;;`^!''´ヽ 'ヾ\
           f´;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;;ヽ、fヽ\
          、ノ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;;--;;::;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;y ¨ヽヽ\、
         r';:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;-''´   ' ' '' `-、;:;:;:;:;:;::;:;;{  `´`'''´

 ※ニホンザルです。ニホンザルです(大事なことなので二回言いました)。




「…………なんだありゃ」
「見慣れぬ獣もいるが、品種を組み会わせでもしたのだろうな。
 まあいい。のちのち襲われる参加者が出ないよう、いまのうちに仕留めておくとしよう」

 唖然とするカルナギの横で、ジョージ・ラローシュは『神秘の球』を展開した。



【E-3 動物園/一日目 午前】

【コウ・カルナギ】
[時間軸]:第五部開始時
[状態]:軽い疲労、両掌に軽い怪我
[装備]:なし
[道具]:なし
[基本方針]:サーチアンドデストロイ。ARMS、鬼丸を特に優先。刃も見つけ次第ブン殴る。ジョージに面倒な事は全部やらせる。とりあえず猛獣ボコる。


【ジョージ・ラローシュ】
[時間軸]:本編死亡後
[状態]:殴られすぎて通常行動は可能な程度にガタが来ている、疲労(小)
[装備]:無し
[道具]:ジードのタバコ@金色のガッシュ、ピアニカ@金色のガッシュ、基本支給品一式
[基本方針]:脱出して子供たちにピアノを聞かせる。乗る気はない。コウと共に脱出を画策する。猛獣退治。


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キャラを追って読む

095:明け方の演奏会 コウ・カルナギ 118:檻の外のヒト
ジョージ・ラローシュ






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